骨盤底筋について知っておくべきすべてのこと
腰の筋肉をしっかり動かそう。
骨盤の底部を支えるように張り巡らされている骨盤底筋はあまりフォーカスされることはなく、妊婦向けのレッスンや大人用オムツの広告など以外では、あまり言及されることがない。でも実は、骨盤底筋はもっとも重要な筋肉群の1つにも関わらず、きちんとトレーニングされていないという事実に目を向けたい。知っておくべきすべてのことについてオーストラリア版ウィメンズヘルスより詳しくご紹介。
骨盤底筋って?
骨盤底筋はハンモック型をした筋肉の複合体で、トランポリンのように、かかる圧によって形を変えることができる。「骨盤底筋は脊椎の底部にある尾骨から、前方の恥骨までに及び、骨盤底部を覆っています」と話すのは、骨盤底筋理学療法士のケイティ・マン氏。
骨盤底筋には3つの重要な役割があるそう。
「まず初めにサポートすることです」とマン氏。「歩く時に、骨盤の臓器をホールドしなくてはいけません。例えば子宮や膀胱、腸などです。2つ目に、括約筋(かつやくきん)効果で、トイレに行くまでの間、膀胱や腸を閉じたままにしておく役割があります。3つ目はセックス。もし骨盤底筋が衰えすぎると、感度の低下やオーガズム反応の鈍化につながります」
骨盤底筋が衰えるとどうなるの?
ウィーン医科大学の研究では、骨盤底筋の問題(失禁など)は、羞恥心やきまり悪さがより生じやすいことが判明した。メンタルヘルスに深刻なダメージを与えるのも無理はないだろう。調査では、失禁を経験する女性の30%が精神的に落ちこむことが判明し、それは産後うつのリスクを倍にするという。
けれども、#pelvicroarや、World Continence Week(世界的な排泄に関する啓発週間)などのキャンペーンがその沈黙を打ち破ったという。
「人々が直面している骨盤底筋に関わる問題は多くあります。われわれは長きに渡り、その話題をうやむやにしてきました」と話すのは、インスタグラム(@thepelvicexpert)でアドバイスを投稿している、骨盤と女性の健康専門家であるヘバ・シャヒード氏。「皆さん孤独を感じていますが、その孤独から離れることです」
話をすればするほど、早期のサポートが見つけられると、シャヒード氏。
「明白な問題を抱えていることを認識していない人もいます。そしてブログの記事を読み、“人生が変わりました。ずっと失禁があったけれど、おかげでこれまでのようなエクササイズが毎日できるようになりました”とメッセージをくれます」要は、シェアすることがためになるということ。
骨盤底筋は何で衰えるの?
・無理のある運動
アメリカのロヨラ大学医療センターによる2016年の研究では、女性トライアスロン選手に緊張性尿失禁率が高く、調査対象者の37.4%が影響を受けていることが判明。一方、2014年の調査においては、女性ランナーも同様に悩んでいることがわかった。地面を走ることによるインパクトは、腹腔(ふくくう)内にかかる圧を高めることにもなり、骨盤底筋へ負荷をかけることで、徐々に骨盤底の筋力を弱めるという。
「ランニング中に漏れてしまったと言う女性は、まず全体を見るようにします」とシャヒード氏。「足の動きに関係があって、それが骨盤底筋に影響しているかもしれません。細部までくまなく観察する必要があります。最良なのは何が起こっているかを判断し、正しい治療を施してくれる理学療法士による検査を早く受けることです」
また、フィットネスのプロに正しいトレーニングフォームかどうかも確認してもらおう。
・慢性的な咳
横隔膜や肋間(ろっかん)の筋肉が収縮する力は胸の内部の圧を高め、骨盤底筋を押し下げる。筋力が強く、ピンと張っている状態でないと、尿が膀胱から逃げ出す事態に。
「咳やくしゃみは骨盤底や膀胱に大きな力を加える2大要因です」とシャヒード氏。「骨盤底筋の改善に取り組んでいるなら、咳やくしゃみが出る時に護身することができるかもしれません。何より予防がすべてです」
・妊娠や出産
体内で赤ちゃんがいる位置は、骨盤底の上になる。胎盤や羊水同様に、この重さは圧力が増すことを意味する。
「帝王切開は骨盤底筋を守ると認識されていますが、それは部分的な保護にとどまります」と話すのは、泌尿婦人科コンサルタント医のダドリー・ロビンソン医師。鉗子(かんし)分娩などの分娩中に起こる介入は、骨盤底筋を弱めるリスクとなるそう。
シャヒード氏いわく、「すべての妊婦さんには妊娠20週と32週時点で事前準備として、骨盤底の理学療法士に見てもらうことをおすすめします。そして産後8週も同様に。そうすることで産後のトラブルもすぐに発見できるでしょう」
マタニティピラティスやマタニティヨガもまた、体を強化するのに良いそう。
・筋力トレーニング
スクワットを辞めるべきという意味ではない。ただ、フォームに集中して骨盤底筋に注意を向けてほしい。事実、大抵のエクササイズは腹腔(ふくくう)内の圧力を上昇させるという研究結果がある。上昇の程度は人それぞれだが、どうやってリフトを持ち上げるかによって大きな違いが生じるそう。理学療法士は機能的なエクササイズの手助けをし、ランジやスクワットなどを正しく行えるようアドバイスしてくれると、シャヒード氏は説明する。基本的なルールとしては、圧が高まるため呼吸は止めず、動きの間骨盤底筋を動かし、それを維持することだそう。
・便秘
マン氏いわく、張りつめた状態は骨盤底筋に多くの圧を掛けるため、便秘は骨盤底筋を弱めるリスク要素となるそう。腸の封鎖を解くため、たくさん水を飲み、食物繊維が豊富なフルーツや野菜を食べると効果的。シャヒード氏は何か腸に問題があればその解決を優先すべきと勧める。
・加齢
他の筋肉同様、骨盤底筋も加齢と共に衰える。その上、更年期前後はエストロゲンが減少し、失禁がより一般的なものとなるそう。
「30代や40代に丈夫でいることは、基盤を整えるために重要なことですが、遅すぎることはありません。(骨盤底筋の問題がある)80代の人もいますし、専門的なプログラムで大抵の人が大きな改善を見込めます]
・不健康な体重
過剰な重さは骨盤底の内部圧を上昇させる。
「健康的な体重は失禁リスクを減少させるだけでなく、骨盤底筋の負荷を軽くするため、現状の衰えを改善できるという証拠もあります」とロビンソン医師。
痩せたら漏れなくなるというわけではない。筋力に負荷がかかればそれだけ機能しなくなる。それと同じで、少なすぎる体脂肪もまた問題を引き起こすのだ。
骨盤底筋強化に向けたケーゲルエクササイズ法
骨盤底筋理学療法士のケイティ・マン氏による6ステップで正しくケーゲル体操を行おう。
1.風を止めるようなイメージで肛門に続く直腸を収縮させる。同時に尿を止めるように前方を絞る。
2.正しい筋肉を働かせる。臀部を収縮させがちだけど、それはNG。収縮させるのはお尻ではなく、肛門や膣の周囲部分。
3.自然に呼吸し、脚はリラックスさせ、すべての動きが体の内部で起きるように。
4.おなかと股間の間を持ち上げるような感覚で。おなかの下部分が収縮しても心配しないでOK。骨盤底筋の動きをサポートしてくれている。
5.10秒かけて絞って、10秒ホールド。そして、短く10秒絞る。理想は毎日3回エクササイズすること。その後筋肉はリラックスさせよう。
6.自分のいつものルーティンに合ったやり方を見つけよう。バスの中やデスクにいる時も試してみて。やる時間にアラームをセットしておくのもいい。試してメリットを享受しよう!
それもまだ改善しなかったら?
18~40歳の女性の1/5以上が、尿失禁を報告していることが、『International Journal of Sports Medicine』の研究によって判明している。専門の理学療法士がその実情を解明し、そこから効果的な治療が受けられるようになったのはいいニュース。その方法は骨盤底筋エクササイズから、膣のペッサリーまで多岐に渡るそう。
「ペッサリーは臓器を持ち上げ、あるべき場所に戻すのに効果的です」とシャヒード氏。
もしそれでも効果がないなら?
シャヒード氏はこの種の手術は他と比べて成功率が高いと付け加えつつも、「推奨したいのは外科的処置を検討する前に、骨盤の理学療法を試してみることです」と話す。また、問題は骨盤底筋だけが原因ではないこともある。筋肉がリラックスできなかったり、過度の緊張状態においても、セックス中の痛みやタンポンにまつわる問題などが起きるそう。正確な原因はわからないけれど、ストレスもその一因と考えられている。専門の理学療法士に相談してみよう。
※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Alex Davies Translation: Asami Akiyama
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