休んだのに、しかも、しっかり休んだはずなのに……全然休んだ感じがしないってこと、あなたにはない? 

理論的に「休息」は簡単なように聞こえるかもしれないけれど、”本当の意味”での「深い休息」は、実は最も難しい習慣のひとつなのかもしれない。特にこの忙しい現代社会を生きる中では。仕事の休憩中に、ほっと一息つこうと思えば、スマホを片手にSNSをスクロースすることは珍しいことでもないし、ソファーに座った途端に、床の汚れが気になったり。そこで登場するのが『ノン・スリープ・ディープ・レスト』だ。休んでいるのに、疲れているあなたは試してみる価値あるかも!?

究極の休息法「ノン・スリープ・ディープ・レスト」とは?

これはtiktokの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

ノン・スリープ・ディープ・レスト』(以下、NSDR)とは、横になって呼吸を整え、"深い休息 "の状態に入る練習法。(そう、もはや休むことも、練習が必要なのだ)

これは、眠りに落ちる直前に経験するような、ぼんやりとした半集中状態のこと。つまり、目覚めてはいないけれど、まだ居眠りもしていない状態で、まどろんでいる時のことを指す。

勘の鋭いヨギーなら、もうお気づきかもしれないけれど、このNSDRの元となっているのはヨガの練習で行われる「ヨガニードラ(ヨガの眠り)」と呼ばれるリラクゼーション法。NSDRは、ヨガニードラの練習に加えて、自己誘導催眠などの分析方法を包括する造語として、神経科学者でスタンフォード大学医学部教授のアンドリュー・D・ヒューバーマン博士によって2022年に作られた。アンドリュー博士は、ポッドキャストのエピソードで、「ヨガ・コミュニティーに関連したもの、あるいはニューエイジ的なテクニックに特化したものと受け止める人がいるかもしれない」ため、用語を変えたかったのだと説明。また、「複雑な言葉は取り組む意欲を失わせる可能性がある」と加えている。

集中力を必要とする瞑想とは異なり、NSDRのゴールは、努力しなくてもリラックスした状態になること。つまり、ただただ休めばいいのだ。

アンドリュー博士によると、NSDRは睡眠不足からの回復にも役立つので、疲労を感じている日や、十分な睡眠をとれなかったり、あまりよく眠れなかったために集中できない日には、非常に有益だとのこと。加えて、睡眠の質の改善にも役立つ可能性があるとのことで、入眠をスムーズにしたい人や、夜中に目覚める回数を減らしたいという人は、試してみると良いことあるかも。

1日10分から30分NSDR状態に入ることで脳を休ませリセットしエネルギッシュな1日を過ごせるようになると言う。30分は難しくても、10分ならSNSを見る時間を置き換えるだけで、できそうじゃない?

ちなみに、シリコンバレーではすでにNSDRがマインドフルネス・ツールとして受け入れられているんだとか。グーグルCEOのスンダル・ピチャイが『 ウォール・ストリート・ジャーナル』紙のインタビューで「NSDR(ノン・スリープ・ディープ・レスト)と呼ばれるポッドキャストを見つけた。だから、瞑想するのが難しくても、YouTubeでNSDRのビデオを見つけることができるんだ」と答えている。

NSDR中に起こることとは?

human brain regions anatomy paper cut craft
MirageC//Getty Images

深い休息が起こるとき、脳ではユニークなことが起こるんだとか。

感覚は高まり身体はリラックスし、脳波はシータ波(眠気があるときや深い瞑想状態にあるときに出力される脳波)とデルタ波(徐波睡眠時に出力される脳波)が高レベルになるそう。シータ脳波は、白昼夢、記憶、創造性など、潜在意識に関連している。デルタ脳波は深いリラクゼーションに関連しており、そのため睡眠の最も深い段階で主に発生するそう。また、ヨガニードラ中の脳を調べた研究によると、後頭葉(脳の視覚中枢)と頭頂葉(感覚知覚)が活性化していることが分かっている。この活性化は、感情の調整、リラックスや安らぎの感覚につながる。

つまり、脳が究極の休息状態になり集中力や記憶力、アイディア力がアップしたり、ストレスリリースにもなるというわけだ。

NSDRの練習

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
#NSDR (Non-Sleep Deep Rest) with Dr. Andrew Huberman
#NSDR (Non-Sleep Deep Rest) with Dr. Andrew Huberman thumnail
Watch onWatch on YouTube

NSDRの練習では、インストラクターやガイドが緊張を解きほぐし、リラクゼーションを促すことを目的としたステップを指導しながら、楽な姿勢で横になっていく。インストラクターによって内容は異なるけれど、アンドリュー博士によるNSDRには以下が含まれている。

  • 意図の設定: ヨガニードラでは "サンカルパ "と呼ばれる。練習の最初にポジティブな意図を設定することで、潜在意識に定着させることができる。

  • ボディスキャン: 身体の特定の部位に意識を集中するよう、体系的に誘導される。緊張を解きほぐし、リラクゼーションの状態へと導く。

  • 深い呼吸:深い呼吸は副交感神経系を活性化し、闘争・逃走モードから抜け出すのを助けてくれる。

  • 視覚化: 目標は、意識から潜在意識に入ること。

NSDRはどんなレベルの技術も必要としない。ただ、10分間、休んでいればいいだけ。

現在、アンドリュー博士のガイド付き練習方法は、英語のみの配信。なので、日本語をご希望の場合は、ヨガニードラを練習してみよう。

Headshot of 桑子 麻衣子
桑子 麻衣子
ライター

1986年横浜生まれ。2013年よりシンガポール在住。幼少期よりクラシックバレエの練習に励みバレリーナになることを目指していたが、思春期に恋愛に走ってしまう。ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーの経験を活かし、現在は国内外のウェルネスやフィットネスなど健康周りの情報を中心に発信するライターとして活動。根っからの健康オタク。
Instagram: @mic_kwk