レストランで出てくるプラントベースのパスタには、高い確率でニュートリショナルイーストが使われている(パルメザンチーズのように振りかけられていたかもしれない)。自家製のマカロニチーズを作ったことがある人も、この食品を使った可能性が非常に高い。

ニュートリショナルイースト(別名ヌーチ)はフレーク状かパウダー状で販売されている。100%プラントベースで乳製品とグルテンが使われていないため、ヴィーガンやヴィーガン風の食生活の流行に伴って主流の地位を獲得した。

栄養管理とウェルネスの専門家として『Sugar Track』の執筆に携わった公認管理栄養士のサマンサ・カセッティ氏によると、「ニュートリショナルイーストは、プラントベースの食生活という巨大なトレンドにピッタリとはまった」アイテム。

ニュートリショナルイーストは「食べものにチーズのような風味を与えてくれる」ので、ヴィーガンのチーズの代用品としても使える。「チーズの摂取量を減らしたい人にとっては定番のアイテムになりますね」

大さじ1杯のニュートリショナルイーストを振りかけるだけで、パスタやポップコーン、スープの風味が一気に高まる。それに加えて、このアイテムは栄養価も非常に高い。

でも、イーストということは、酵母をそのまま食べるということなのだろうか? アメリカ版ウィメンズへルスからみていこう。

ニュートリショナルイーストとは?

ニュートリショナルイーストの正体は酵母。公認管理栄養士のアリッサ・ラムジー氏によると、この酵母は出芽酵母(サッカロマイセス・セレヴィシエ)という真菌の一種なのだそう。

でも、パンを焼くときに使用する酵母とはタイプが違う。パン作りに使う酵母は“活性”である(生きている)のに対し、ニュートリショナルイーストに含まれる酵母は“不活性”(死んでいる)。

米国栄養士会のスポークスパーソンで公認管理栄養士のソニア・アンジェロン氏によると、ニュートリショナルイーストは、酵母の菌株を培養基(糖蜜やサトウキビなど)の中で数日間培養して作られる。

培養された酵母は熱で不活性化(殺菌)され、収穫・洗浄・乾燥というプロセスを経て梱包される。カセッティ氏によると、通常は動物性食品に含まれるビタミンB群も強化されているので、ニュートリショナルイーストをチーズ代わりにしている人にとってはうれしい限り。しかも、ニュートリショナルイーストには、ナッツのような香ばしさとパルメザンチーズのような旨味がある。

最近では、健康食品の専門店だけでなく、普通のスーパーでもニュートリショナルイーストが買えるようになってきた。ダイエットアプリ『Lose It!』のアドバイザーで公認管理栄養士のケリ・マグレインによると、通常はパウダー状かフレーク状で売られているので、それこそ何にでも振りかけられる。

ニュートリショナルイーストはヘルシー?

若干の違いはあれど、ニュートリショナルイーストの栄養価がメーカーによって大きく変わることはない。

アマゾンのレビューが26000件を超える超人気メーカーBRAGG社のニュートリショナルイースト1食分(大さじ2杯)の栄養価は以下の通り。

  • カロリー:40kcal
  • 脂質:0g
  • ナトリウム:20mg
  • 糖質:3g
  • 食物繊維:2g
  • 糖類:0g
  • タンパク質:5g

BRAGG社のニュートリショナルイーストは、他の多くのメーカー(ボブズレッドミルを含む)と同様、ビタミンB群で強化されている。「ビタミンB12が強化されていれば、ビタミンB12が豊富に含まれているということになりますが、そうでなくても他の種類のビタミンBと微量ミネラルの素晴らしい供給源です」とアンジェロン氏。

例として、BRAGG社のニュートリショナルイースト1食分には以下の栄養素も含まれている。

  • ビタミンB12:1日に必要な量の630%
  • 葉酸:1日に必要な量の90%
  • ビタミンB6:1日に必要な量の420%

同量のニュートリショナルイーストからは、少量の鉄(1日に推奨される量の6%)とカリウムも摂取できる。とはいえ、数字だけ大きくても仕方ない。ここからはニュートリショナルイーストを取り入れることで得られる健康効果を見ていこう。

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ニュートリショナルイーストを使うメリットは?

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krblokhin//Getty Images

栄養価がズバ抜けて高いゆえに、このチーズ風味のスーパーフードはプラントベースの食生活を送る人にも、そうでない人にも大きな利益をもたらす。

1.完全タンパク質を確実に摂取できる

植物性タンパク質のほとんどは“不完全”タンパク質なので、動物性タンパク質に含まれる9種類の必須アミノ酸を完全に備えていない。でも、公認管理栄養士のエリザベス・ハーレー氏いわくニュートリショナルイーストは、ヴィーガンでありながら完全タンパク質と見なされる数少ないオプションの1つ。

2.相当量の食物繊維も摂取できる

パルメザンチーズには食物繊維が一切含まれていない(ソース:米国農務省)一方で、1食分のニュートリショナルイーストには約4gの食物繊維が含まれている。ハーレー氏いわく食物繊維は、食後の満腹感を与えるだけでなく、消化器系の健康も促進する。

3.不足しがちなビタミンB12が含まれている

栄養たっぷりのニュートリショナルイーストには、ビタミンB12も含まれている。ビタミンB12は赤血球の産生と神経系の健康維持に不可欠で、不足すると貧血のリスクが高まる。

一般的にビタミン12は動物性食品(卵、肉、魚、乳製品など)から摂取するものなので、ヴィーガンやベジタリアンの人は不足しがち。でも、そんなときこそニュートリショナルイーストが役に立つ。数日ごとに1食分を摂取すれば、動物性食品を食べない人でもビタミンB12のニーズが満たせる。

4.コレステロール値を下げるのに役立つ

「ニュートリショナルイーストには、コレステロール値を下げやすくすることが証明されたβ-グルカンが含まれています」とマグレイン氏。

心臓の健康にいいことで知られるβ-グルカンは、オーツ麦や大麦といった一部の全粒穀物にも含まれている。

5.抗酸化物質が豊富

マグレイン氏によると、ニュートリショナルイーストには抗酸化物質が高い濃度で含まれている。その中でもとくにグルタチオンは、細胞をダメージから守り、体の毒素を取り除くうえで絶対不可欠。

年を取ると体内で作られる抗酸化物質の量が少なくなるので、食事から十分なグルタチオンを摂取することがますます重要になる。

6.血糖値を安定させる

ニュートリショナルイーストは低GI食品なので、血糖値の調節に役立つ可能性がある。血糖値が安定すれば、食欲が収まって活力と睡眠の質が高くなり、代謝性疾患のリスクも下がる。

ニュートリショナルイーストにもデメリットはある?

「ニュートリショナルイーストは植物性食品が中心のヘルシーな食生活に加えたいアイテムの1つですが、特効薬ではありません」とカセッティ氏。「ニュートリショナルイーストを野菜ソテーの上に振りかけるのと、ヴィーガンのマカロニチーズを作るのに使うのとではまったく話が違います。後者は精製穀物の塊なので、あまりヘルシーとは言えません」

アンジェロン氏によると、ニュートリショナルイーストには相当量の食物繊維が含まれているので、食べすぎるとガスや膨満感が生じる可能性もなくはない。

そして、ラムジー氏が言うように、酵母に敏感な人やアレルギーがある人は当然ながらニュートリショナルイーストの使用を避けるべき。

ニュートリショナルイーストの使い方

ニュートリショナルイーストは、ポップコーンやチップスをチーズ味にしたいときだけでなく、野菜の風味を高めたいときにも便利なアイテム。「カリフラワーやジャガイモのマッシュに入れると美味しいですよ」と話すアンジェロン氏は、スクランブルエッグや豆腐料理にもニュートリショナルイーストを加えているそう。

カセッティ氏によると、クリエイティブな気分のときは、ニュートリショナルイーストと他の食材(水に浸けたカシューナッツなど)でプラントベースの“チーズ”ソースを作ってみるのも面白い。

ちなみに、アメリカ版ウィメンズヘルスのスタッフは次のような使い方をしているそう。

  • パルメザンチーズ感覚で出来立てのパスタに振りかける。
  • 野菜ブロスに少し多めのニュートリショナルイーストを加えれば、独特の旨味が出る。
  • クリーミーな冷製スープに混ぜてしまえば、タンパク質の含有量が一気にアップ。
  • ヴィーガンのヒヨコ豆サラダサンドイッチに使えば、それだけでタンパク質23gも夢じゃない

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Aryelle Siclait, Korin Miller and Trish Clasen Marsanico Translation: Ai Igamoto

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Aryelle Siclait
Editor
Aryelle Siclait is the editor at Women's Health where she writes and edits articles about relationships, sexual health, pop culture, and fashion for verticals across WomensHealthMag.com and the print magazine. She's a Boston College graduate and lives in New York.
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Korin Miller is a freelance writer specializing in general wellness, sexual health and relationships, and lifestyle trends, with work appearing in Men’s Health, Women’s Health, Self, Glamour, and more. She has a master’s degree from American University, lives by the beach, and hopes to own a teacup pig and taco truck one day.
Headshot of 伊賀本 藍

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。