美尻トレーニングブームで下半身のプロポーションに悩む女性は多い。すっきりした太ももや真っすぐに伸びた脚はキュッと上がったお尻と同じくらい手に入れたいと願うもの。

「O脚やX脚は見た目ももちろん気になりますが、膝や股関節に大きな負担がかかり、骨や軟骨がすり減ることで痛みを発生させる場合もあります」

真っすぐな脚を理想とする女性が多いが、過度に内側に回転してしまうこと(内旋)が女性の美脚にとって問題になっていると警鐘を鳴らすのはパーソナルトレーナーの林 健太さん。

「男性は過度に外側に回転してしまうガニ股(外旋)が多くを占めますが、女性はその逆のパターンが多いです。先天性や怪我を除いてもいくつか原因が考えられますが、太もも裏のハムストリングスは一つの原因です」

歪んだ状態でトレーニングを繰り返しているとその歪みがひどくなるのは当然なので、美脚に向けてまずはハムストリングスのトレーニングやストレッチを入念に行ってみよう。

①O脚、X脚の診断

o脚、x脚を改善するためのストレッチとトレーニング
Barks_japan//Getty Images

鏡の前に立ち、つま先を正面に向けて立つ。この時、足の人差し指を基準にすることがポイント。

「両足の内くるぶしをくっ付けたときに膝の間に指2本以上が入るようであればO脚です。反対に内くるぶしをくっ付ける前に膝がついてしまう人はまず膝をくっ付けましょう。そこから内くるぶしの隙間が指2本分以上であればX脚です。この時、基準にした足の人差し指が正面に向いていることも確認しましょう」

もう一つの診断方法としては、へその斜め下あたりにある骨盤の出っ張りに手のひらの付け根を当て、手のひら全体で鼠径部をカバーするようにする。

そこから腰を反って陰部を前に突き出すようにすると、手のひらの中心あたりに出っ張りを感じる。

「感じた出っ張りが太ももの骨頭です。そこをスタートに重りのついた紐などを垂らして、足の甲の人差し指の延長線上と結び、紐が膝の中心(±2cm程度)を通っていれば理想の荷重線です」

②O脚、X脚の原因

冒頭に述べた通り、女性の場合は股関節が内側に回転してしまう(内旋)ことが原因としては多い。その結果、腰や大転子が張り出したようにも見えてしまい、下半身全体が太いと感じてしまう。

「内側に入ってきた脚のカウンターバランスで膝下が外側に回転(外旋)してしまうことでX脚にも繋がります。O脚が進んでX脚になることもあり得ますので、早期に改善することが大切です」

骨に異常がない場合は筋肉の張りと弱化が原因として考えられる。ほぐす筋肉と鍛える筋肉を見極めることが大切で、股関節を内に回転させる筋肉をほぐし、外に回転させる筋肉を積極的に鍛えていくことが多くの人に当てはまるパターン。

「女性で太もも裏にセルライトが見られるのは、その部分の筋力低下により脂肪がつきやすい状態になっているからです。特に太ももの裏でも外側に付きやすい人が多いと思いますので、その部分を使うトレーニングや動作は重要です」

内転筋や臀筋を積極的に鍛える女性も多いが、それらの筋肉は姿勢や部位により作用が変化する万能筋でもあるので、今回は太もも裏のハムストリングスに注目してみよう。


③O脚、X脚の対処

ハムストリングスには内ハム(内側)と外ハム(外側)と呼ばれる筋肉がある。内側が硬く外側が弱くなると股関節は内旋しやすい。

太ももの裏というとひとまとめにしてトレーニングをすることも多いが、分けて行うとより美脚に近づくことができると林さん。

「外ハムと言われる大腿二頭筋は遅筋繊維が多いので、ゆっくりと行うことがポイントです。また、体幹や上半身がぶれると膝を使ってそのバランスを取る結果、太ももの前がより張りやすくなってしまうので、普段から上半身と下半身のトレーニングもバランスよく行っていきましょう」

簡単に対処できる方法としては、普段から大股で歩くことが有効だそう。また、歩くときや階段を上るときは脚を前に出すのではなく後ろ脚でしっかり踏み込む意識をするだけでハムストリングスが働くようになる。

まずは日常生活から脱O脚を目指して、ここから紹介するストレッチとトレーニングを取り入れてみて。

④O脚・X脚を改善するためのストレッチ

■ダウンドッグ
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ヨガの動きでもあるダウンドッグは、ハムストリングス全体のストレッチに非常に有効。

膝を伸ばしたままできる限り踵を床に近づけることで、筋連結の深いヒラメ筋や腓腹筋の下腿三頭筋も伸ばすことができる。

この時できる限り腰が丸まらないように、反り腰を作るくらいの気持ちで行うと良い。


■フィギアフォーニーハグ
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臀筋のストレッチとして取り入れている人も多いが、外ハムのストレッチとしても有効。膝を抱え込むことが難しい人は、引き付ける動作を目一杯意識することで対則の腸腰筋や大腿のトレーニングにもなる。


■スプレッドイーグル

シンプルなストレッチだが、多くの人が間違いやすいポイントがあると林さん。

「できるだけ背中を丸めて手を前方に出そうとするのが一般的ですが、内ハムや内転筋群のストレッチであれば、まずは背中を丸めないことです。できる限り座高の高い状態から始めて、お尻の穴を後方に移動させていきながら体を倒すイメージで行ってみてください」

⑤O脚・X脚を改善するためのエクササイズ

■ルーマニアンデッドリフト

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ハムストリングス全体に最も強烈な刺激が入るトレーニングがルーマニアンデッドリフト。背中を反らせることに集中するあまり、目線が上がった状態のままになり首を痛める可能性もあるので注意してほしいと林さん。

「膝は曲げすぎず伸ばしすぎずで、崖下を覗き込むようなイメージで行ってください。最初はフォームが難しいのですが、ハムストリングスへの刺激をしっかりと感じられるようになれば他のトレーニングの質も変わってきます」

片脚で行うことで筋力に加えてバランスや体幹力、柔軟性も鍛えられる超重要種目だ。


■ヒップリフト

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ヒップリフトも一工夫するだけで、外ハムのトレーニングと内ハムのストレッチが同時に可能。

「足の裏を合わせてカエル脚でヒップリフトを行うことで刺激が外ハム中心に変わりますので、ゆっくり目のペースで行うと良いでしょう。普段から股関節が内旋してしまう方はお尻を持ち上げずにリラックスした状態をキープするだけでも横隔膜との繋がりで呼吸の深さも変わります」

■ワイドスタンススクワット

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スクワットで太ももに効いてしまうという方は、必ずワイドスタンスを試してほしい。前述のルーマニアンデッドリフトをダンベルも何も持たずに行い、ハムストリングスに十分ストレッチが感じられるような練習をしてから行うとさらに良いそう。

「スクワットは内転筋や内ハム、臀筋に最も刺激が入る種目です。日常生活動作のポイントで述べたように足裏で床を押し下げるイメージをもって行うとさらに刺激の感じ方が変わるでしょう」

お尻のトレーニングをよく行う人は、臀筋との繋がりが深い太ももの外側上部にある大腿筋膜張筋が張りやすく、膝痛を引き起こしやすくなる。

「大腿筋膜張筋は股関節をより内旋しやすくなるので、O脚と膝痛を予防する上でもトレーニング後はしっかりとストレッチをしましょう」

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林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/