ウォーキングは、お金がかからずシンプルで、忙しいスケジュールに組み込みやすい。でも、歩くだけで体重は減るのだろうか? ウォーキングは、心拍数を急上昇させるケトルベル・トレーニングやマラソン並みの長距離ランニングほどヘビーじゃない。でも、シンプルなブリスクウォーク(キビキビ歩き)は、身体組成を変えるのに効果的。

とはいえ、どのくらいの頻度で、どのくらいの距離を、どのくらいのペースで歩けばいいの? ウォーキングの消費カロリーや健康効果、シンプルで効果的な歩き方を、パーソナルトレーナーでヘルスエキスパートのローラ・ウィリアムズが教えてくれた。


ウォーキングはダイエットに効果的?

アメリカのデューク大学医療センターによると、ウォーキングなどの有酸素運動は、体重を減らすのにもっとも効果的なエクササイズ。応用生理学専門誌『The Journal of Applied Physiology』に掲載された大規模なランダム化比較研究結果も、有酸素運動、レジスタンストレーニング、その2つのコンビネーションのなかで脂肪燃焼作用がもっとも高いのは有酸素運動であることを示している。

どんなスピードで歩いてもカロリーは消費されるけれど、体重を減らすにはカロリーが不足した状態をつくらなければならない。体力をつけてカロリーを消費するには、ブリスクウォーキングが効果的。個人差はあるものの、一般的にブリスクウォーキングとは、1時間に5.6km以上のペースで歩くこと。最大心拍数の60~70%を目安にしよう。

体重の減り方は、一気に歩くか、少しずつ歩くかによっても変わる。肥満学専門誌『Obesity』によると、カロリー制限のある食生活を送りながら1日2回25分ずつのウォーキングをした女性は、1日1回50分のウォーキングをした女性よりも体重を1.7kg多く減らした。

ウォーキングで消費されるカロリー量は?

ウォーキングで消費されるカロリー量は数々の要素(コースの地形、気温、年齢など)によって変わるけれど、もっとも影響力が強いのは体重と歩くペース。その人の体重が多ければ多いほど、歩くペースが速ければ速いほど、カロリーの消費量は多くなる。

アメリカのハーバード大学発行の医療情報誌『Harvard Health』によると、1時間に6.4kmのペースで歩いた場合の消費カロリーは、体重56kgの人で150kcal、70kgの人で186kcal、84kgの人で222kcal。また、スポーツ医学専門誌『The American Journal of Sports Medicine』掲載の研究結果は、“やや肥満”の女性が1日1時間のブリスクウォーキングを6カ月続けたところ、体重が平均10%減ったことを示している。

この研究では、1日に少なくとも30分は歩かないと、あまり体重が減らないことも分かった。その理由は、ウォーキングに代表される強度の低い運動を始めると、最初の30分間は、体内に貯蓄された糖がエネルギーとして燃やされるため。脂肪細胞のなかにある脂肪が使われるようになるのは、その30分を過ぎてからなのだ。

ウォーキングで体重はどのくらい減る?

ウォーキングで体重がどのくらい減るかは、その人の摂取カロリーと消費カロリーのバランス次第。運動で消費するカロリーを増やすか、食事で摂取するカロリーを減らすか、それを両方するかしないと、体重は減ってくれない。

栄養学専門誌『The Journal of Nutrition』掲載の論文によると、肥満の被験者が12週間にわたり1日の摂取カロリーを500~800kcal減らし、1時間に6kmのペースで毎週3時間歩いたところ、歩かなかった人よりも体重が平均1.8kg多く減った。

でも、カロリーの摂取量を急激に減らすのは逆効果。カロリーの摂取量が体のニーズを大幅に下回ると安静時のカロリー消費量が減り、しばらくの間、1日の消費カロリー量が最大20%減る。

ウォーキングの健康効果

ウォーキングのメリットはダイエット効果だけじゃない。始めようと思った日から始められるのもウォーキングの長所の1つ。オランダのマースリヒト大学の研究では、参加者が歩く時間を増やして座る時間を減らしたところ、たった4日でインスリン感受性、コレステロール値、血圧が明らかに改善した。それ以外のメリットは、以下の8つ。

1.認知症予防になる

フランスのトゥールーズ大学の論文によると、70歳以上の人の歩行ペースからは、認知症を発症する確率が予測できる。

2.心臓が強くなる

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学によると、週5日、1日に少なくとも30分のウォーキングを続ければ、冠動脈性心疾患のリスクが19%低くなる。

3.脳腫瘍のリスクが半減する

アメリカのローレンス・バークレー国立研究所によると、脳腫瘍のリスクを減らすためには1日36~72分歩くのが効果的だそう。

4.クリエイティブになる

実験心理学専門誌『The Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition』掲載の論文によると、とくに外を歩いているときは、新しいアイディアが浮かびやすい。

5.血糖値が安定する

アメリカのジョージ・ワシントン大学公衆衛生学部によれば、1日3回、食後に15分ずつ歩くと、適当な時間に45分歩いたときより血糖値が安定する。

6.ウェルビーイングが向上する

イギリスのイースト・アングリア大学によると、歩いて通勤する人は車で通勤する人よりも集中力が高く、ストレスが少ない。アメリカのミシガン大学の研究結果も、1日最低20分、自然のなかを歩くことでストレスホルモンの量が著しく減ることを示している。

7.免疫力が高くなる

医学情報誌『The British Medical Journal』掲載の論文によると、適度なペースで1日30~45分歩く人は病欠が43%少ない。ウォーキングをする人は上気道感染症(かぜなどを引き起こすウイルスが鼻粘膜から咽頭粘膜に感染し、ウイルスが増えることで、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、のどの痛みなどの症状が出る)にもかかりにくく、いざ病気になったとしても症状が軽いそう。

8.寿命が延びる

台湾人口科学研究所によると、1日15分歩くだけでも寿命は延びる。
ウォーキングの効果を最大化したい人、とくに寿命を延ばしたい人は、ブリスクウォーキング(1時間に5.6km以上)のペースで歩いて。オーストラリアのシドニー大学は5万人以上のデータから、歩くペースが速いほど何らかの原因による死亡のリスクが下がることを突き止めた。


ウォーキングで体重を減らす7つの方法

ほかの運動をせず、ウォーキングだけで体重を減らしたいなら、焦らずに時間をかけることが大切。週に数回、無理のないペースで15分歩くことから始め、慣れてきたら時間を延ばして、強度を上げよう。

近所の地理に詳しくなったら、ウィリアムズのアドバイスに従って、ウォーキングによるカロリーの消費量を増やしていこう。

1.インターバルウォーキングをする

カロリーの消費量を増やす方法はブリスクウォーキングだけじゃない。アメリカのオハイオ州立大学の論文によると、ペースを変えながら歩けば、一定のペースを維持したときよりカロリーの消費量が最大20%増す。

これにトライ
意外にも、距離が長いと私たちの歩くペースは速くなる。週に1度は、40分以上かかる長めの距離でインターバルウォーキングをしてみよう。

2.ランチタイムに歩く

ウォーキングで消費されるカロリーは、1分で4kcal程度。よって、1日15分でも歩いていれば、8週間で約0.5kg分のカロリーが消費される。医学情報誌『The British Medical Journal』掲載の研究結果も、歩いて通勤する人は、座って通勤する人よりもBMIと体脂肪率が低いことを示している。

これにトライ
ジョギングとランニングの消費カロリーはウォーキングの約2倍。ウォーキングの合間に1~2分の軽いジョギングを挟んでみよう。汗だくになる必要はないけれど、心拍数が上がり、息が切れる程度のペースで走るといい。

3.傾斜をつける

少し傾斜をつけるだけで、カロリーの消費量が30%程度増す。ハムストリングスと臀筋も鍛えられるので一石二鳥。

これにトライ
上り坂では歩幅を狭くしてバランスを取り、関節への衝撃を和らげよう。少しだけ前かがみになるのはいいけれど、上体は常に腰の上に置くべき。

4.階段を使う

ウエストを細くしたいなら、できるだけ階段を使うこと。その人の体重にもよるけれど、階段を1日10分上るだけでカロリーが60~90kcal消費される。心臓に関していえば、階段を上るペースは関係ない。カナダのマックマスター大学の論文によると、階段を駆け上がった場合でも、ゆっくり上った場合でも、心臓に対する効果は変わらない。

これにトライ
1段飛ばしで上れば、お尻と太ももの筋肉が強くなる。正しい姿勢をキープすることも大切。姿勢の崩れを感じたら、ためらわずに手すりを使って。

5.自重エクササイズをする

歩きながらシンプルな自重エクササイズをすれば、目標体重が近くなる。なぜ? 自重エクササイズをしている間はカロリーの消費量が増え、代謝率も上がるため、デスクに戻ってからのカロリー消費量が増す。

これにトライ
カロリーの消費量を最大限に増やしたいなら、複数の筋肉群を同時に使うコンパウンド・エクササイズを。歩きながらのランジなら下半身の筋肉を全部使うし、短時間のウォーキングにも問題なく組み込める。

6.フィットネストラッカーを外す

フィットネストラッカーの使用は、ときとして逆効果。アメリカ医学会誌『The Journal of the American Medical Association』掲載の研究結果は、フィットネストラッカーを使わなかった人の体重が使った人より平均2.2kg多く減ったことを示している。データの記録で得られる結果と、生活習慣の改善で得られる結果の差は非常に大きい。

これにトライ
その日の目標歩数の分だけ、体のなかに“余分なカロリー”があると思わないで。その日の歩数は、ダイエットを後押しするボーナスポイント。目標に届かなくても自分を責めず、いまの自分にできることをすればいい。

7.バディを見つける

フィットネストラッカーを外したら、現実のワークアウトバディを見つけよう。スコットランドのアバディーン大学によれば、バディのサポートがあると運動量が増加する。

これにトライ
LINEでウォーキンググループを作り、友達や家族を招待しよう。目標の歩数を決めたり、ウォーキング中の写真をシェアしたりすれば、お互いを励まし合える。モチベーションやサポートをくれるエクササイズ・コミュニティの存在は、いろいろな意味で有意義。

※この記事は、『Netdoctor』から翻訳されました。

Text: Annie Hayes Translation: Ai Igamoto