脇汗の悩みは尽きない。夏は量や汗ジミ、冬はムレや匂いなど、制汗剤や脇汗パットが年中手放せないという人もいるだろう。
そんな脇汗の悩みを解消してくれるのが「ボトックス注射による多汗症治療」、通称脇ボトックス(脇ボト)である。
筆者も脇汗に長年悩まされてきた。特に緊張すると大量の脇汗が出てしまう。しかし、脇ボトックスによって、暑さからの汗からも緊張からの汗からも解放されることができた。その体験をレポートしたい。
脇ボトックスの効果は。なぜ汗を抑制できる?
脇ボトックスとはボツリヌス菌がつくる天然のタンパク質を有効成分とする薬をワキに直接注射する治療法のことをいう。通常、暑さや緊張を感じると交感神経から発する信号が汗腺を刺激し、汗が出る。脇ボトックスはその信号そのものをブロックし、発汗を抑制する。つまり汗腺から汗が出ること自体を止めることができる治療法なのだ。
この注射に使われるボトックスは美容皮膚科での治療でたびたび耳にするものと同じものが使用されている。脇以外にもシワに打つことで、シワを改善したり、顔のエラに打つことで小顔効果が得られるといった効果もがある。
気になる注射の痛みは? 効果はずっと続くの?
はっきり言って、脇ボトックスはめちゃくちゃ痛い。患部を冷やしながら処置を行うが、それでも痛い。注射は片ワキにつき1箇所ではなく、汗腺の範囲に合わせて数カ所注射を行う必要がある。
また、残念ながらその効果は永久には続かず、人によって異なるが、効果は治療後2〜3日から、約4〜9カ月で切れてしまう。
しかし、経験者としてその痛みに耐える価値は十分あると考える。何度も制汗剤を塗り直したり、時にはそれによってかぶれたり、汗を気にして過ごすことから解放されることがこんなに快適だとは思わなかった。
脇ボトックスのデメリットは? 副作用はある?
妊娠している女性や授乳中の女性は処置を受けることができない。また、神経に関わる持病がある人なども不可なので注意しよう。
また、注射後まれに副作用を生じるケースがあるらしい。注射部位の赤みであったり、体のだるさや脇以外の汗が増えたりなどだ。
妊娠している女性や授乳中の女性は処置を受けることができない。また、神経に関わる持病がある人なども不可なので注意しよう。
筆者も注射直後はなんとなく脇の周りがだるいような感覚がある。副作用の心配はほとんどないとはいえ、処置前には担当医師から十分に説明を受けるようにしたい。
気になる費用について。保険適用されるって本当?
気になる費用だが、自費負担で1回5万円程度かかる。しかし、「原発性腋窩多汗症」と診断されると保険適用で2万〜3万で受けることが可能だ。診断には例えばこのような項目が問われる。
●両側性かつ左右対称性に多汗がみられる
●多汗によって日常生活に支障が生じている
●週1回以上の頻度で多汗エピソードがみられる
●25歳未満で発症した
●家族歴がある
●睡眠時は局所性の発汗がみられない
少なくともこの中から2項目以上当てはまる必要がある。保険が適用されると経済的負担がグッと減る。まずは一度病院で相談してみるといいだろう。
わずか10分程度で完了! 処置の流れをレポート
最後に処置の流れをみてみよう。まずは問診と、医師からしっかりと脇ボトックスについての説明を受ける。
脇が見えるよう服を着替えて診察台にうつる。両脇の注射範囲をマーキングし、消毒を行う。次に最初に注射の打つ方の脇を保冷剤などでしっかりと冷やす。
注射範囲に合わせて20箇所程度注射を行っていく。片脇が終了したら続いてもう片方の脇を冷やし、同じように注射を打っていく。
処置の時間は両脇で10分程度だ。注射が終わるとマーキングを取り、服を着替えて終了。処置当日も湯船に浸からなければお風呂に入っても構わない。患部をゴシゴシと洗うことは避けよう。
処置に痛みは伴うが、その後しばらくは汗のことから解放されて過ごせる。汗ジミを気にすることなくファッションも自由に楽しめるようになった。脇汗で悩んでいる人はぜひ一度体験してみてほしい。
Hikari Inagaki(side dishes)
『エル・オンライン(現エル・デジタル)』のファッションエディターを経て、フリーランスに。女性ランナーによる企画集団「ランガール」を設立。その後女性誌立ち上げやWebメディアの立ち上げを経て2017年にウィメンズヘルス』日本版ローンチ時から編集長に。2023年夏よりエル・グルメ編集長も兼務。趣味は料理を作って友人たちに振る舞うこと。