米マウント・サイナイ病院付属ニューヨーク眼科・耳鼻科センターの耳鼻科研究ディレクター、アナ・キム博士によると、耳垢とは、「耳の中の皮膚を湿らせておくための皮脂腺からの分泌物と、耳の穴から鼓膜まで続く菅状の器官である『外耳道』から剝がれ落ちる古い角質が混ざったもの」。そして、米ウェイルコーネル医科大学耳鼻咽喉学准教授のマリア・サルナ医学博士によると、人間の耳は、綿棒に頼らなくても外耳道が勝手に垢を耳から押し出し、自然と掃除できる仕組みになっているのだとか。
そのため、綿棒を外耳道に突っ込んでしまうと、皮膚が自然に剥がれるプロセスが妨げられて、垢の量が増えてしまうこともあるそう。加えて、キム博士は「綿棒を使うと耳垢が外耳道の奥へ押し込まれ、病院でしか取り除けない大きな妨害物になってしまう」と注意を促している。
サルナ博士は、ヘアピンなどで耳垢を取る患者さんも時折見かけるそうだけど、こういった自己流の方法で耳を掃除するのはできるだけ避けた方がいいそう。正しく掃除ができていないと、耳の皮膚本来の剥落プロセスが邪魔されて、逆に耳垢がたまってしまう原因にもなりかねない。それに先のとがったアイテムで耳をいじれば、最悪、鼓膜が破れてしまう可能性も。
数年前に流行したイヤーキャンドルや耳用スポイトもおすすめできないアイテムたち。イヤーキャンドルとは、中が空洞のキャンドルを耳に立てて火をともし、その熱で耳垢を吸い上げるというお掃除方法。「キャンドルの熱で鼓膜がやけどすることも考えられます。キャンドルのワックスが耳の中に詰まって、問題を大きくする可能性もあるでしょう」とキム博士は補足。専用のスポイトを使い、水で洗浄するのは安全そうに聞こえるけれど、サルナ博士に言わせてみると、水が耳垢の奥に詰まったり、垢が水分を含んで膨らんだりすることもあるとか。