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理想の恋人に出会えない……どうしたらいい?【臨床心理士・南舞さんのあるある! 心の相談室】第10回

相手探しとともに、自分自身のことも見つめてみよう。

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体と同じく、ココロも健やかな状態でいたいものだけど、メンタルケアはなにかと根性論や「気の持ちよう」で語られがち。悩みは、実は心理学的なテクニックで対処できるものも多いという。そこで、臨床心理士の南 舞さんが、読者のお悩みに具体的な対処法をレクチャー。今回のお悩みは、「恋人が欲しいと思うが、理想の相手が見つからない」という20代女性の場合について。

恋人は欲しいけど……

group of joyful young asian man and woman having fun, passing and sharing food across table during party
AsiaVision//Getty Images

相談者Uさん「理想の相手が見つからない……」

恋人ができず、5年くらい経ちます。恋人が欲しいなぁという気持ちはあり、友達に紹介してもらったり、マッチングアプリを試してみたりと色々していますが、なかなか「この人!」と、自分の中でしっくりくる理想の相手が見つかりません。もうすぐ30代も見えているので、結婚も意識しますし、その先の子どもを持つことなども考えます。どうしたら理想の相手に出会えるのでしょうか? というか、理想の相手を追い求めている自分はおかしいのでしょうか? 教えていただきたいです。

臨床心理士・南さん
「恋人探しと共に、自分を見つめることもしてみませんか?」

Uさん、お悩みありがとうございます。もうすぐ30代が見えている、その年齢って結婚や妊娠、出産など家族を持つことがリアルになってくる年齢ですよね。そして実際に、周りのお友達も結婚・妊娠・出産ラッシュがやってくる頃かと思いますので、「自分はいつ?」と思う気持ちにも共感できます。

さて、「理想の恋人に出会えない」という悩みについてですが、この「理想の」という部分や、しっくりこない感じというのは、具体的にどういう感じなのか気になりました。もしかしたらこのあたりを言葉にしてみることによって、なにがその先の進展への引っかかりになっているのかが見えてくるかも。Uさんに直接お話を聞けていないので、この後のお話はあくまで推測になってしまうのですが、カウンセリングの中でもこうしたお悩みに触れることは多くあり、これまでの相談の中で「これが引っかかりなのでは?」とクライアントさんとの話題に出てきたことをいくつかご紹介しますね。

理想の恋人に出会えない原因とは?

upset redhead teen girl sitting by window looking at phone waiting call or message
MementoJpeg//Getty Images

(1)「~すべき」が強い
理想の部分を言葉にしていくと、外側に対しても内側に対しても「こうあるべき」「~すべき」という思考が隠れていることがあります。譲れない部分もあるかと思いますが、すべきという思考が強いことによって、相手を減点方式でしか見られなくなり、結果関係を発展させることができないということもあります。

(2)自分に優しくできない

幼少期に両親などの養育者から自分のことを大事にしてもらったり、優しくしてもらう経験が乏しかったりすると、自分に対して優しさを向けたり、自分自身を大事に扱うということが苦手だったりします。すると「私なんて」という思考になりやすく、また恋愛という場面では、自分を傷つけるような人に自ら近づいてしまうということが起きがちです。そして傷つき、「やはり私なんて幸せになれない」という思考になるという悪循環に陥ります。

(3)恋愛に対する心理的なハードルが高い

例えば「恋愛は対等な関係ではいられない」とか「恋愛すると自由を奪われる」といった、恋愛に対する不健全なイメージが自分の中にあったとしたら、それが恋愛に対する抵抗感を生み出していたり、ハードルを上げている要因かもしれません。こうした恋愛に対する不健全なイメージは、ご自分の両親の関係がモデルになっていることもあれば、周囲の人の経験を聞く中でそういったイメージができあがる、といった可能性もあります。

相手探しの他に、自分の中でできること

woman working in a coffee shop
Ezra Bailey//Getty Images

(1)思考のクセを見直していく
自分の中にある、恋愛にまつわる「こうすべきだ」という思考を少しずつ書き換えていくと良いでしょう。まずは自分の中に、そういった思考がないかどうかに気づき、もしそういった思考が浮かんでいる場面があった時は、「そうとも限らないかも」「こんな可能性もあるかな?」といったように自分に問いかけてみてください。それをくり返していくうちに、これまで自分の中で想像していた相手に対するイメージが少し変わるかもしれません。

(2)恋愛は人間関係の一部と捉える

恋愛となると「わざわざするもの」「頑張ってするもの」というような特別感を持ちがちですが、恋愛も人間関係の一部にすぎません。そのため、「恋愛しなきゃ!」と意気込む必要はないと思いますし、逆に頑張ろうとするからこそ上手くいかないのかも。恋愛を始め、人間関係は気負わず自然の流れに身を任せる方がうまくいく時もあるので、肩の力を下ろしてラクにしておきましょう。

(3)精神的に自立していく

例えば「1人でも十分楽しいし満足しているけれど、恋愛で2人になったらさらに楽しいかも」という状態は、精神的に自立している状態と言えるでしょう。精神的に自立していると、パートナーと対等な関係でいられます。逆に精神的に自立していないと、支配と服従という不健康な関係になりやすいので、まずは1人の時間を楽しめるようになることから始めてみてはいかがでしょうか。

(4)ポジティブなイメージを取り入れていく

SNSなどメディアに取り上げられている情報や、周囲の人から入ってきやすい話というのは、どうしてもネガティブなものに偏りがちです。ご自分の周りで、あるいはメディアでも構わないので、良い関係を築いているカップルの話を聞いてみたり、恋愛に対してポジティブな情報を入れることで、イメージを変えていくのも大切なことです。

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理想の相手探しに疲れたら、休むのもいいかも

young woman with arms outstretched in carefree moment
We Are//Getty Images

恋愛という関係の中で大切なのは、「その人と一緒にいることで、自分が充実した気持ちになれる」ということではないでしょうか。理想の相手を探すことに意識が向きすぎると、その辺りのことを忘れがちです。それを思い出すためという意味でも、理想の相手探しに疲れた時は一度立ち止まって小休憩を挟んでみましょう。また、恋愛という関係は自分の幼少期のことがフォーカスされやすいものだったりするので、心の専門家とともに、自分の生い立ちを振り返ったり、自分の中にある思考や感情を整理してみることで先に進めるという可能性もあるかもしれません。最後に、勇気を持って相談してくださったUさんが、素敵な人と出会えることを陰ながら応援しています。

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南 舞
ライター

臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。   公式HP: mai-minami.com Instagram: @maiminami831  

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