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結婚前にしておきたい「自分の課題との向き合い方」心の専門家が解説

心理的な視点を持つことで幸せな結婚を。

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bride with wedding ring holding hand of groom
Klaus Vedfelt//Getty Images

『そろそろ婚活しようかな』という想いがある一方で、『結婚してもうまくいかなかったらどうしよう』という声を耳にすることが多々あります。3組に1組が離婚するといった現状も含めると、そういった不安な気持ちが湧いてくるのも自然なことだと思います。また、結婚するからには末永くと考えている人も多いはず。そこで、婚姻関係をスムーズにするために必要な視点や、結婚前に知っておきたいことを心の専門家の視点からお話ししていきたいと思います。

性格の不一致を心理学的に紐解いてみる

couples with opposite arrows walking away from each other
Malte Mueller//Getty Images

離婚理由の不動の1位である『性格の不一致』。もともとは他人だった2人がパートナーになるわけですから、不一致が起こることは決しておかしいことではありません。それでも、離婚するカップルと離婚しないカップルに分かれるのが現実としてあるのは一体なぜなのでしょうか。そこで、性格の不一致について心理学の視点から考えてみたいと思います。

(1)性格の不一致=悪いことなのか?

赤の他人がパートナーになるわけなので、どんな家族の元で育ってきたのか、どんな生い立ちだったのか、学歴や職歴、休みの日の過ごし方、好きなものや嫌いなものなどが全く同じであるということはあり得ないと思います。本来は『カップル間での性格の不一致が起こるのは自然なこと』だと思うのですが、どうしても性格の不一致に対しては『悪いもの』という印象がつきまとうようです。

(2)役割期待が強すぎるのでは?

『妻はこうあるべき』『夫はこうあるべき』といった考え方が強くなりすぎていないでしょうか? こういったものは【役割期待】と呼ばれたりしますが、役割期待によってこうすべきという思考が強くなると、自分と相手との違いを受け入れることが難しくなってしまいます。

(3)伝えることを避けていない?

性格の不一致があったとしても、婚姻関係が続いているカップルの特徴は、『伝える』ということを積極的に行っていることだと思います。近しい関係にいるからこそ、伝えることを怠るということが起こりやすいものですし、また、『相手はこう思っているに違いない』という思い込みを持つことによって、伝えることや理解することを妨げるということが起きやすくなってしまいます。

結婚前に知っておきたい大切なこと

woman crouching down in despair with head on her knees
Kathrin Ziegler//Getty Images

筆者も、結婚を目の前にしてうまくいかなくなっているカップル、結婚して間もないが離婚を考えているカップルなどのご相談を聞かせていただくことがあります。対話を重ねていく中で、こうした性格の不一致の裏側に存在する、役割期待や『こうすべき』『こうに違いない』という思考の正体に気付いていなかった、初めて知ったという方が意外と多いです。これらだけでなく、自分が葛藤しやすい人間関係やコミュニケーション、ネガティブな感情が強くなる状況、心の傷(トラウマ)が与えている影響など、自身が持っている課題を知らない人の方がほとんどだと思います。もちろん、そういった自分の課題があったとしても、自分なりにうまく消化する方法を知っていて、相手との関係に影響が出ていないのであれば問題ないのです。ただし、もし自分自身の中でモヤモヤを感じている、相手とうまくいかなさや葛藤を感じているのであれば、一度自分自身を見つめて、自分を理解しようとすることをお勧めしたいと思います。

自分を見つめるタイミングとは?

an hourglass on red and pink background
Jordan Lye//Getty Images

自分自身の課題を知ると言われても、具体的にどういうことなのか、どうやって知ればいいのか分かりづらいですよね。そこで、『こんなことを感じた時は一度自分のことを見つめるタイミングかもしれないよ?』という指標になりそうなことをいくつかご紹介します。

(1)違和感を感じている時

パートナーとのやり取りの中で、『これは違うのに......』とか『しっくりこない......』など、違和感やモヤモヤを感じる時はありますか? もしそういった感覚がある時は、違和感をなかったものにするのではなく、言葉にしてその正体を明らかにした方が良いかもしれません。

(2)ネガティブな感情が強くなる時

ネガティブな感情が自分でもコントロールできないくらい強くなり、そしてそれを相手にぶつけてしまうといったような時も、一度自分を見つめた方が良いでしょう。ネガティブな感情との付き合い方を探ることで、自分自身も楽になりますし、相手との関係もスムーズになります。

(3)似たような人を好きになり、苦労している時

お付き合いが深まっていくうちに『また同じような人を好きになってしまった』という感覚を持つようになる、それに加えてしんどさを感じているのであれば、その悪循環を繰り返す原因となっているものに気づくことによって、パートナー選びに新たな視野が生まれるかもしれません。

(4)自分だけ犠牲になっている感じがする時

『自分ばかりが我慢している』『相手は自分のことを大事にしない』など、自分ばかりが犠牲になっている感覚が生まれる時も要注意。それがストレスになったり、ストレスが溜まり続けると、相手に過度に感情をぶつけてしまったりして、関係にヒビが入ることも。

(5)先に進みたいのに進めない感じがする時

『結婚したいけど、いざとなると抵抗がある』など、先に進みたいのに心に引っ掛かりを感じている時は、心のブロックになっているものがあるのかも。そのブロックの正体に気づくことで、道が開けるかもしれません。

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大切なのは、自分を知ること

unrecognizable manager takes notes during interview with young adult woman
SDI Productions//Getty Images

家族心理学の中では、『家族の誕生は、独身の頃から始まっている』と言われています。20代前半あたりで多くの人が就職し、自分で生きていく方法を見出していくと思いますが、まさにこの時期から家族づくりのベースが始まっているのです。

【家族のライフサイクル理論】という概念の中では、自分の育った家族から経済的にだけでなく、精神的に自立することがこの時期の課題だと言われています。

精神的な自立とは、自分自身の意思や価値観によって意思決定をする、自分の思考や感情に責任を持つことです。精神的に自立することで、他人の意見や評価に振り回されることなく、自分自身の価値観に基づいて選択することができます。そして、精神的な自立をするために必要なことは『自分を知ること』。

例えば、自分の強みや弱み、大事にしたいものの価値観、感情を調整する力など、自分の取り扱いを知っていくことなどが当てはまります。もし結婚を目の前にした時にうまくいかない感じがする時は、まずは自分自身を知ることにフォーカスして欲しいです。しかし、これまで長年かけて築いてきた思考のパターンやコミュニケーションの方法を変えていくのはなかなか大変な作業でもあります。

そんな時は心の専門家(公認心理師・臨床心理士)のカウンセリングが役に立つかもしれません。対話を通して、時にはしんどさを分かち合いながら、自分の取り扱いを一緒に考えていくことができます。結婚とは人生の中でもビッグイベントなので、誰かに流されるのではなく、自分自身が納得して進める道に進んでいけることを願っています。

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南 舞
ライター

臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。   公式HP: mai-minami.com Instagram: @maiminami831  

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