“ソウルメイト”って本当に存在するの?
1人だけじゃないかもしれない。
「ソウルメイト」という言葉は、21世紀に入っても頻繁に使われる。ソウルメイトとは、あなたのパートナーになる運命にある人のこと。もちろん、このコンセプトには議論が付き物。映画やドラマ、本には星のめぐりあわせで導かれた幸運が描かれているけれど、現実の人間関係はもっと複雑。だから、ソウルメイトの存在を固く信じている人もいれば、まったく信じていない人もいる。多くの人はその中間で、ソウルメイトが1人である必要はないと考えている。今回はアメリカ版ウィメンズヘルスより、ソウルメイトについてご紹介。
参考図書や辞書を出版するメリアム=ウェブスター社によると、ソウルメイトは「あなたと性格が完全にマッチする人」。
夢物語のように聞こえるけれど、ソウルメイト同士だからといって放っておいてもうまくいくわけじゃない。「ソウルメイトはパズルピースみたいなもので、ソウルメイト同士が出会えばパズルが見事に完成すると思われています」と話すのは、臨床心理学者のサブリナ・ロマノフ博士。
「その期待は大きな失望をもたらします。だから、ソウルメイトを“見つける”と考えるより、何年もかけて相手を知り、困難を乗り越えて、家庭を築き、幸せなときもつらいときもお互いを愛することで、ソウルメイトを“作る”と考えたほうがいいでしょう」
ロマノフ博士いわくソウルメイトは、私たちが思っているより意図的なプロセスによって作られる。
ソウルメイトが本当に存在するかどうかの前に、ソウルメイトが何なのかを知っておくことが大切。
ソウルメイトとは?
臨床心理学者のジョセフ・シロナ博士によると、ソウルメイトという言葉の意味は人それぞれ。でも、ソウルメイトは世界に1人しかおらず、お互いが完全にマッチするから、その人を見つけないと恋愛や結婚で幸せになれないというのが、最も一般的な考え方。
「ソウルメイトを見つければ人間関係はうまくいき、絶対幸せになれるけれど、ソウルメイトを見つけなければ、どんな関係もうまくいかないという考え方です」とシロナ博士は続ける。
『Facehooked: How Facebook Affects Our Emotions, Relationships, and Lives』の著者で臨床心理学者のスザンナ・E・フローレス博士によると、ソウルメイトは「あなたに何か大事なことを教えるために現れる人です。ソウルメイトは、あなた自身と世界の見方が変わるような経験を与えることで、あなたの魂を震わせます。ソウルメイトは、あなたの中にある何かに挑み、あなたを高次の意識状態へ導きます」とフローレス博士。
ソウルメイトの概念が議論の的になるのはなぜ?
愛する人と一緒にいて心から幸せな人にとって、ソウルメイトのコンセプトは超ロマンチック。でも、専門家に言わせると、あなたの恋人や配偶者がソウルメイトと決めつけるのは、ちょっと問題。なぜなら、それは他人の存在がないと満たされないことを示唆するから。心理学者のカリン・アンダーソン・アブレル博士によると、この状態では生きづらい。
「ソウルメイトという概念に執着すると、独身の間中、むなしさや孤独を感じるかもしれません。誰かがいないと自分が満たされないと感じている状態で恋愛や交際を始めるのは、必要性が前提にあるので危険です」とアブレル博士。
そして、ベストマッチと思えるような相手との関係にも問題は必ず生じる。ソウルメイトのコンセプトは、その人を見つければ、すべてが完璧で順調になるという思い込みのもとになる。でも、そんなことは実際にありえない。
「ソウルメイトの概念は非常に有毒で、完全に間違っていると思います。その概念から来る期待や思い込みは大抵、人間関係を妨害し、その人を健全な恋愛から遠ざけます」とシロナ博士。
ソウルメイトの存在を示す科学的な証拠はある?
ほとんどない。運命の人が世界にたった1人しかいないなら、その人を実際に見つけられる確率は極めて低い。それどころか実際は、多くの人と意気投合する可能性のほうが高い。
「世界の人口は約80億人。その中には、健全で幸せな恋愛にふさわしい人が多くいます」とシロナ博士。
価値観、共通の趣味、魅力、学歴、文化的背景などの重要性を挙げる人は多いけれど、シロナ博士によると、2人の人物が一緒になる確率を示す重要なインディケーターは地理的な近さだけ。あまりロマンチックな話ではないと、うなづける。「地理的な距離が近くて接触する回数が多い人同士はお互いを知り、惹かれ合う可能性が圧倒的に高いです」
私たちがコンタクトした心理学者の中にも、ソウルメイトの存在を示す確固たる証拠を見せられる人はいなかった。場合によっては、従来の科学的研究の範囲を超えて、ソウルメイトの定義を考えてみるのもいいかもしれない。「ソウルメイトの概念は数量化できません。証明することも測ることもできません」と話すのは、つながりを育むメソッド『The Narrative Method』の考案者で夫婦・家族関係セラピストのシャリ・フーズ。「でも、スピリチュアル・ヒーリングや過去生といった(抽象的な)概念で、ソウルメイトの価値を認める人もいます」
フーズによると、あなたが深く愛していて一緒にいるとホッとする人をソウルメイトと定義するなら、多くの人が理解して共感してくれるはず。でも、ソウルメイトという概念に固執すると、既存の人間関係に問題が生じたり、パートナー候補を見つけるのが難しくなったりするので注意が必要。
ソウルメイトの概念は人間関係に害を与える?
残念ながら、ソウルメイトの概念が健全な人間関係の構築を邪魔する可能性はある。「ソウルメイトはロマンチックな概念ですが、実は非常に厄介です」と語るのは、カップルカウンセリングアプリ『Paired Relationship』のヘッドカウンセラー、マリサ・T・コーヘン博士。
「常に“運命の人”を探していると、目の前の関係にしっかり集中できません。ギリ・フリードマン率いるチームによって行われた2018年の研究結果は、運命を強く信じている人はゴースティングに肯定的で、実際にゴースティングした経験がある確率も高いことを示しています」。言い換えると、運命の人がいると思い込んでいる人は大抵、「ソウルメイトに値しない」と感じたパートナー候補をゴースティングで切り捨てたことがある。
カップルを対象にしたコーヘン博士の調査によって、パートナーを「ソウルメイト」や「真の愛」という言葉で表す人は、そのパートナーとの関係がこじれたときにショックを受けやすいことが分かった。
「その人たちは、2人の関係が常に“パーフェクト”であることを前提にしていますから」
こういう恋愛でなければイヤと決めつけるのも、その恋愛を続けるのも、その人の選択。「自分で見つけられるとは限らないソウルメイトの存在を信じるよりも、愛情や敬愛から、目の前のパートナーと積極的に関わる(パートナーもあなたと積極的に関わる)ほうがいいかもしれません」とコーヘン博士。
そもそも、万が一ソウルメイトに不幸が訪れたらどうするの? 別れたら、最悪の場合、相手が死んでしまったら、あなたは一生シングルでいなければならないの? これは控えめに言っても非現実的。
ソウルメイトという概念を健全にとらえるには?
「ソウルメイトを必ずしも恋愛にひもづける必要はありません」とアブレル博士。例えば米テレビシリーズ『グレイズ・アナトミー』のメレディスとクリスティーナ、『フレンズ』のモニカ、レイチェル、フィービー、『セックス&シティ』のキャリー・ブラッドショーと女友達。他の誰にも代えられない永遠の友を持つことだって必要。
こうして定義を広げれば、複数の人と深いつながりを感じながら人生を楽しめる。そうすれば、完璧なパートナーを見つけなければ、というプレッシャーも減る。
恋愛におけるソウルメイトがいるという考えは手放すべき?
ソウルメイトには思えないというだけで、パートナー候補の魅力に気付けないのはもったいない。痛いほどロマンチックであることが裏目に出ることはある。
でも、アブレル博士が言うように、ソウルメイトを見つけたという確信があり、その人がいてもいなくても自分は幸せでいられると思うなら、ソウルメイトが存在すると信じることに害はない。ただし、恋愛においては科学的に証明できるコンセプトでも、恋愛エキスパートが支持する考えでもないことを覚えておいて。
またソウルメイト同士であろうとなかろうと、人間関係の構築には努力が必要。シロナ博士は、明確で効果的なコミュニケーションだけでなく、お互いの言葉と行動に矛盾がなく、お互いを尊重し大切にする気持ちが見えたことで築かれる信頼関係の重要性も強調する(明らかに“双方向”がキーワード)。
フローレス博士によると、あなたを変えようとしないパートナーを持つことも大切。パートナーの言動でイライラすることはあっても、お互いのすべてを受け入れることができると、2人の関係は素晴らしいものになる。ソウルメイト同士であろうとなかろうと、ひとりで時間を過ごせることや、それぞれの趣味を楽しめることも、カップルが長続きする秘訣。
結論:恋愛や人間関係の構築に対して現実的である限り、ソウルメイトが実在するかしないかは関係ない。
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Korin Miller And Perri O. Blumberg Translation: Ai Igamoto