1日中Zoomしていると自信がなくなるって本当?
自分の顔を何時間もじっと見ていることは深刻な問題?
コロナウイルスが収束するときが来ても、ロックダウン中に経験した多くのことは記憶に残るだろう。ビジネスでも、ソーシャルライフでも、たくさんのオンラインを活用してきたことはその1つ。でも、自分の顔をじっと見ていた時間の蓄積は潜在的にどんな影響があるの? イギリス版ウィメンズヘルスより詳しく見ていこう。
月曜日がまたやって来て、週の最初のビデオ会議が始まる。ライフスタイルの秘密は上司に知られたくないので、ビデオコールの背景を検討。そして、朝食の残りが歯に挟まっていないか鏡をチェック。ただ、同僚がリビングの一角に新たなモンステラを飾っていることより、ヒザの上に泣いている子供を乗せていることに気づくよりも前に、別のものに目がくぎ付けになるはずだ。それは自分の顔。そして大抵それを見てもいい気はしないのでは?
ガラケーの時代から比べると、ビデオ会議は複数でのコミュニケーション戦略を大躍進させた。
ZOOM、2020年1-4月期に約2,000%の成長
ビデオコールアプリのHousepartyが2020年3月単月で5,000万ダウンロードを突破した一方、ZOOMという、知名度はまだあまりなかったオンライン会議アプリのグローバルユーザーが1-4月期に2,000%の成長を記録し、659,000人から1,300万人に飛躍した。そのアプリを自然に受け入れ、好んで使った人たちがいた一方、従来のコミュニケ―ションの変化により不安を感じるようになった人もいたという。
「ZOOM」という言葉が私たちの語彙に登場するや否や、「ZOOM顔」が広まるようになったとか。ダーマルフィラー(皮膚充填剤)ブランドのTeoxane社は10人に1人の女性がビデオコール中に、自分の顔に欠点を見つけ、手術を伴わない美容治療をした62%の女性が、ロックダウン前と比べて、より見た目を気にするようになったと話しているという。Transform Hospital Groupで美容医療の専門家である、アッシャー・シッディキ医師は、その影響を観察する臨床医だ。
働く人の35%は、現実よりビデオコールの方が魅力的でないと感じる
「より多くの人が、鼻の美容整形やボトックス、ほくろ除去などで、ビデオコンサルテーションの予約を入れています」と医師。その理由は? 「自分の鼻がこんなに大きいと思っていなかった、目の周りにこんなにシワがあるなんて知らなかった、とおっしゃる人が多いです」
顧問皮膚科医のアンジャリ・マハト医師もまた、この現象に気づき、自分の顔に初の微調整を施すことは、2021年彼女の診療においてメジャーなスキンケアトレンドになると言及している。
「Zoomを通して自分の顔を観察することは、注射療法ブームの原因となっています」と、マハト医師。事実、外科医主催のバーチャルコンサルテーションの急増が見られるようになって以降、英国美容形成外科協会(BAAPS)は一般の人に向けて、より慎重になるよう呼びかけている。BAAPSメンバーの一部は、実際に実施されたデジタルアポイントメントの数は、60-70%増加していると言及している。
ただ、このような感覚はパンデミック以前からもあったという。ビデオコールネットワークのHighFiveが2016年に実施した調査では、35%のワーカーが、現実よりビデオコールの方が魅力がないと感じ、59%がカメラの前ではより自分を意識すると答えている。
「パンデミックの開始以降、美容処置の需要は明らかに高まっています」と話すのは、Spotlight Oral Careの共同創設者であるリサ・クリーブン医師。「歯を真っすぐにしたり、明るい笑顔を手に入れたりと、歯科業界では至るところでzoomバブルが起きています」
今や、ミーティングやデート、ウェディングを含め、生活はどんどんオンライン化している。これらのあらゆるスクリーンタイムは、自尊心を傷つけることになるの?
マネジメントエージェンシーで働くハナ・ホーランドにとって、朝のミーティングはストレスの元となったという。2度目のロックダウンでは、ストレスに耐えるため、食に走った結果体重が増えた。体重の増加はこの激動の時代を生き抜くための副作用だと認識する一方、スクリーンの自分と向き合うことで、少しずつ自尊心が崩壊していったという。
より良いアングルのために、カメラポジションを何時間も調整
「より良いアングルのため、カメラのポジションを何時間も調整したり、猛暑でもハイネックのトップスを着ていました」とハナは回想する。彼女は顎の下の脂肪を除去する処置を検討し始めたが、手術の恐怖がその実行を阻んだという。その代わりに、頬と唇に充填物を入れた。「以前にもやったことがあったけれど、徐々に無くなってしまいました。疲れてしぼんだ自分の顔を何週間も見た後、制限が解除されるや否やすぐに再び充填してもらいました」
手術にせよ、充填物を注入する微調整にせよ、美容整形を試みることは、必ずしも自尊心低下の症状の兆候ではないそう。
これまでもウィメンズヘルスでは、セルフィ―文化の増加や、画面をスクロールして他人と比較して落胆するなど、スクリーンタイムと自尊心の関係性について紹介してきた。ZOOMやMicrosoft Teams、Google Hangout のようなビデオコールプラットフォームは、数年の間われわれが感じてきたことや、取り上げてきた問題を、さらに激化させるものになりうるのだろうか?
それについて同意するのはピース・アマディ医師。カリフォルニアのホープ・インターナショナル大学で心理学およびカウンセリングの助教授を務め、ソーシャルメディアとメンタルヘルスの間の関係性について、広範囲の研究を行っている。「ソーシャルメディアの使用と心理的な悩みには実証された関連性があります」と彼女は説明する。「インスタグラムは身体的な外見に関連した不安とひもづいていて、体への不満や自尊心の低下を増長します」
デジタル加工された理想の自分と現実の自分のギャップが不快感を生む
「こういった悩みはとどまらずに、増えていきます」とアマディ氏。ビデオコールが不快感を感じさせる理由の1つは、画像がデジタル処理されてないことにあるそう。誰しも、インスタグラムのPerpetuaまたはClarendonフィルターを好んで使用しているのでは? 「デジタル処理された理想の自分と現実の自分の間のギャップが広がると、不快感が生じるようになります」とアマディ氏。「うつや不安、摂食障害、身体醜形障害などの強迫性障害(OCD)関連症を発症するケースも増加しています」
パンデミック以前からも自尊心に苦しんできた人は多いので、ビデオコールが不安を感じる材料になる理由も、理解しやすいという。イギリスの成人のおよそ半分が、外見が人生で成しえることに影響すると信じているという統計がある。
これをを受けて、イギリス版ウィメンズヘルス編集長のクレア・サンダーソンは、女性と体の関係性を改善させるキャンペーン、プロジェクト・ボディー・ラブを発足させた。このキャンペーンの調査の一環として、もっとも自尊心を傷つけたことが何かという問いに、鏡に映る自分と直面することが一番最悪だったという答えは、自分の外見に対する自信欠如を物語っている。
55%の人が自分の写真を見たり、鏡を見たりすることが、もっとも自尊心にダメージを与えると話しているという。もし今再度同じことを聞いたら、鏡の近代版ともいえるにビデオコールこそ、高い位置にランクインするかもしれない。
外見の欠点は10分で見つかる
通常のビデオ会議が自信喪失パワーを持つという調査が保留になっている一方で、『the journal Behaviour Research And Therapy』に掲載された研究では、10分あれば自分の外見の欠点を見つけることが判明。調査員が鏡を見たボランティアの人の反応を観察すると、身体醜形障害の人は25秒間、健康的な体形の人ですら、鏡の中の自分を10分間見ると不安やストレスの兆候が見られることが判明したという。
それは同僚がつまらない世間話をしている時間かもしれない。会議や友達との近況報告で1時間も画面を見ていると、それが想像だろうがそうでなかろうが、欠点を見つけるには十分。既に自分の外観に不安を感じている人にとって、それは不安の温床ともいえるという。
これについてはロンドン出身の35歳、2020年3月からテレワークで広告業務を始めたエイミーが嫌というほど分かっているという。大抵の人同様、最初はスクリーンに映る自分の顔に気まずさを感じていたそう。ただ、数週間、数カ月たつに連れて、徐々に自信が崩壊し始めた。クライアントとのミーティングは恐怖へと、Zoomでの友達とのおしゃべりは悪夢へと化した。「不安や自尊心の低下に関するセラピーを以前受けていたけれど、こういう感情がどれほど自分の外見とひもづいているかという認識はなかったです」と彼女は話す。「職場や友達といるときの自分について知っていたようで、それは思っていたものと異なるものでした。大げさに聞こえると思うけど、それは一種のアイデンティーの崩壊だったんです」
ZOOMで開かれたパーティーで突然涙が止まらなくなったとき、彼女は自尊心を持ち直すため、助けを求めたという。「Zoomでセラピーを受けるという皮肉は、受け入れることできました」と彼女は笑った。「ただ、セラピストにはなぜカメラをオンにできないか説明して、これまできちんと向き合ってこなかった問題について相談しやすくなりました」
ではどのようにして、デジタル上での注目が避けられない今の世の中で自尊心を守っていけばいいのだろう? カメラをオフにして、Zoomのタッチアップ機能を選択しよう。美容整形もその瞬間は自分の外見に気分よくいられるかもしれないけれど、その自信は持続するものではない。
自分の体機能に注意を向けられるようにするコンパッショネイト・ボディースキャン(瞑想の一種)や、鏡に映る自分と向き合うエクササイズなどは、体に関するイメージや自尊心を改善に導き、見た目ではなく自分の体ができることにフォーカスしやすくなるという。
その他にも、身体的な見た目以外で、自尊心のコップを満たすことができることは何でも有効。例えば、仕事のプロジェクトで成功したり、チャリティーワークをしてみたり、バルコニーのグリーンを育ててみたり。
ZOOM画面に映る自分の姿をじっと見ることが自尊心の低下につながるとするならば、次回のZOOM会議はどうすべき? 上司の本棚を観察してみたり、アマチュアながら同僚の精神分析をしてみるのも手。または、他の人が言っていることに同調するのもいい。とにかく何かやることを見つけ、自分の顔から視線を外そう。
感情を管理するには
1.事実を確認
「本当にそこにあるものに目を向けず、ネガティブなセルフイメージというレンズを通して、自分の外見を見ることに慣れすぎてしまうことがあります」と話すのは、セラピストのアリッサ・リオ・マンカオ氏。
視点をそらす療法がある。「鏡の中の自分を見て、主観的言語を使わずに自分の外見を描写します」とアリッサ氏。頭の中の批判的な声(まつげが短すぎるなど)を鎮め、客観的に自分を描写したり(目が2つあるなど)、機能にフォーカス(目があるから見えるなど)できるようになるそう。
2.マインドフルネスの練習
「空に雲が通り過ぎていく」といったように気づいたことに目を向けてみる。さらに、不安や自己意識の引き金となるイメージを見たときは、あれこれ判断せずに事実をただ認める努力をしてみよう。
それから、自分を褒める練習を開始。「自分の体は他の誰よりも、自分に多くのことをしてくれている」という感じだとアマディ医師。次に自分のおなかや足をつかみ、この部分がどれほど体に奉仕してくれているか考えを巡らそう。
3.価値を見つける
美に関する目的を、「豊かで目的を重視した人生を生きる」といったものと交換してみよう。基本的な質問をすることが1つの方法。自分にとって何が重要なのか? 何に喜びを感じるのか? 誰を愛しているのか? 「外見はあなたという人間のたった1つの要素にしか過ぎません」と身体醜形障害の専門家であるキャサリン・フィリップス医師は話す。「違う側面に価値を見いだしましょう。あなたの親友は、あなたの鼻が左右対称だから親友でいてくれていますか? きっと違うでしょう。完璧な歯並びだからという理由で関係が長続きすることはありません」
4.日記をつけてみる
思考と感情をつなげて受け入れることに圧倒されてしまうようなら、日記をつける習慣を始めてみよう。やり方は人それぞれだが、毎日日記をつけるにせよ、マインドマップを書くにせよ、箇条書きや目的の設定にせよ、紙に自分の考えを書き出すことは、フレッシュなマインドと目的を持って1日を始めたり終えることができ、何で自分が気分よくいられるか気づくことができるだろう。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Kristina Rodulfo and Georgie Lane-Godfrey Translation: Asami Akiyama
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