普段コンタクトレンズを着用しているフィットガールズの5人がいま気になっているのが、眼内コンタクトレンズ「ICL」。メガネやコンタクト要らずの裸眼生活には憧れるけど、手術にはちょっぴり不安も。「レーシックとどう違うの?」「どんな手術?」「費用は?」など、気になることがいっぱい。眼科医の松本玲先生に正確な情報を聞いてみた!

MC上野智子(以下上野):
「​​普段メガネやコンタクトレンズを着用している方に話題の『ICL』をご存じでしょうか?

眼内コンタクトレンズのことで、手術をすればメガネやコンタクトレンズが不要になる方が多く、年々受ける方が増えています。

今日は5名のフィットガールズが、眼科医の松本玲先生に気になることを質問する座談会を開催。レイ先生は、今までどのくらいの人数のICL治療をされたんですか?」

松本玲先生(以下レイ先生):「ICLに携わるようになって今年で13年で、およそ1000人に手術をしました」

上野:「すごい人数ですね! ではさっそく1人目、やえこちゃんからの質問です」

【1人目】やえこの場合:
「コンタクトを外すのが毎日面倒!(笑)」

やえこ:「私はいつもコンタクトを着用しているんですが、ヨガのレッスン中に目にゴミが入ってレッスンができなくなってしまったり、日々のデスクワークでも目が乾燥してゴロゴロしたり。あと、寝る前にコンタクトを外すのが面倒くさくなっちゃって(笑)。裸眼の友達がうらやましくて、ICLにすごく興味があるんですが、ICLの治療ってどんな治療なのでしょうか?」

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レイ先生:「ICLとは、『インプランタブル コンタクトレンズ』の略で、直訳すれば『埋め込み式のコンタクトレンズ』。『眼内コンタクトレンズ』とも呼ばれています。

このICLのレンズを目の中に入れて、近視や乱視を矯正し、裸眼のような気分で過ごせることを目的とした治療です。柔らかいレンズなので、通常のコンタクトレンズと違い、異物感もほとんど感じません。手術自体は両眼で10分程度で終わるというと、驚く方がたくさんいらっしゃいます」

やえこ:「コンタクトレンズだと、ハードとソフトとか種類があると思うんですけど

どういったものが実際に目の中に入るのかがすごく気になります」

レイ先生:「ハードレンズは硬いですからね。ICLのレンズはソフトレンズのように柔らかい素材で、コラーゲンに近い成分が一緒に入っていますので、体になじみやすいというメリットがあります。ヨーロッパでは承認されて25年以上経っており、日本では2010年に承認を得ています。私が一番最初に手術をした方はもう13年以上経っていますが、今でも1.5の視力をキープされています」

上野:「1.5とは、うらやましいですね。次の質問はグレースちゃんです」

【2人目】グレースの場合:
「ピラティス中は、メガネやコンタクトだと不便」

グレース:「私は普段ピラティスインストラクターをしているんですが、やっぱりメガネでレッスンするのは難しいので、視力矯正手術はいつかしたいなと考えているんですけど、レーシックとICLでものすごく迷っていて。違いをぜひ知りたいです」

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レイ先生:「患者さんでも、どっちを受けたらいいの?と悩みながら来られる方もいます。ICLとレーシックの違いを説明しますね。

黒目を角膜といいますが、角膜の直径はだいたい1cm〜1.2cmぐらいです。レーシックの場合は、この角膜を約9mmカットして、ペロッとめくり、内側の真ん中を直径6〜7mmで削ります。削ったあと、めくった蓋のようなものを元に戻す、これがレーシックのやり方。
その一方で、ICLは角膜を削ることはせず、角膜の縁に約3mmほど切り込みを入れ、そこから柔らかいレンズを中に入れます。削る手術ではなく、切る幅も狭いので、術後ドライアイになりにくいというメリットがあります」

グレース:「削らないのはいいですね。私、かなり視力が弱い方なんですけど、手術できますか?」

レイ先生:「レーシックの場合は削る手術なので、どこまでも削っていいというわけではありませんので強い近視の人ができないことはあります。ICLは弱い近視の人から強い近視の人まで、ほぼ制限なく対応できると思います」

上野:「日本でレーシックは2000年に承認を得ていますが、ICLは2010年の承認なので、レーシックの方が浸透している現状がありますが、ICLという選択肢もあるということですね。次の質問です」

【3人目】りさの場合:
「旅行や出張中って、コンタクトの着脱が大変」

りさ:「私は元外資系客室乗務員なのですが、今まで海外に行く機会が多くて、長時間フライトのときにワンデイのコンタクトレンズを毎回取り外さないといけなくてすごく大変でした。しかもドライアイなのでコンタクトレンズに悩んできて、ICLに興味を持ちました。
ICLもレンズを取り外さないといけないことはありますか?」

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レイ先生:「ICLのレンズは半永久的に目の中に入れていて問題ないレンズになります。

定期交換の必要はありません。

なんらかの理由で一回入れたレンズを取り出した調査があるのですが、平均10年以上入れていたレンズがまったく変化がなかったという報告があります。なので、レンズの劣化については心配ないと考えていただいていいと思います」

りさ:「交換しなくていいっていうのは嬉しいです。もし、その間に視力が変わった場合はどうしたらいいですか?」

レイ先生:「眼内コンタクトレンズの術後成績は長期的に安定しているというのが、ICL手術の利点のひとつです。万が一生活習慣で視力が落ちてしまったり、途中で近視が進んでしまった場合は、レンズを交換することはできます。

一度入れたレンズを取り出してまた適切な度数のレンズを入れることは理論的に可能ですが、滅多にあることではありません」

【4人目】さくらの場合:
「スマホやPCで、つい目を酷使しがち……」

さくら:「私は大学生で日中パソコンを使うことが多く、さらにスマホをずっといじってしまうので、目に悪影響だと思ってはいるのですが……ICL治療を受けてもブルーライトを浴びすぎるのはやはりよくないでしょうか? それと、ICL治療は早めに始める方がいいのでしょうか?」

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レイ先生:「まず、ICLの手術をしている人でもしていない人でも、デジタルデバイスを使いすぎると『VDT症候群』といって、目を酷使した結果眼精疲労やピントが合いにくくなったり、目以外の体の病気が起こってしまうことがあります。ICLを受けたあとに目の使い過ぎはもちろん注意してほしいですが、通常のデジタルデバイスの使用は問題ありません。

次にICL治療の時期についてですが、その人によって求める視力は違いますので、いつからがよいとは一概には言えません。例えばスポーツをしたり、活動的に社会生活をしている、また、子育て中のお母さんが夜に子供が泣いても自分の目で見れなくてメガネを探さなくてはならない場合などを考えると、日常生活の中で裸眼で見える、自分の目で見えるというのは価値が大きいと思います」

さくら:「わかりました。もうひとつ気になることがあって……。術後どのくらいでお化粧ができるようになりますか?」

レイ先生:「ICL手術はまったく縫わない手術で、3ミリ切ったところが自然に傷が治るのを待つ無縫合手術なんですね。なので傷口がちゃんと閉じるまでの約1週間はアイメイクを控えてください。どうしてかというと、傷口が開いてそこからバイ菌が入ると、

目は小さな空間ですのでバイ菌があっという間に広がってしまいます。そうすると感染症で視力も落ちかねません。手術直後は目の周りを触るのは避けてください」

やえこ:「マツエクは禁止ですか?」

レイ先生:「直後はもちろん控えていただきたいですが、OKなのは1週間以降、安心なのは1ヶ月以降です。手術の時はまぶたを消毒しますので、当日はエクステ等は取っておいてください」

やえこ:「えーっ(笑)」

レイ先生:「でもほら、1ヶ月後にはつけられますから(笑)」

りさ:「カラーコンタクトもいつから入れていいのか気になります」

レイ先生:「オシャレのために入れたいですよね。傷口が閉じていても、コンタクトの出し入れのときは若干目を圧迫しますので術後1ヶ月は控えてもらった方が安心です」

上野:「ということは、アイメイク以外はお化粧していいということですね。眉毛はOKですか?」

レイ先生:「はい。ただ、目の周りはあまり触ってほしくないので、閉じてそっとであればいいんですけどもゴシゴシは控えてください。同じように激しい運動も約1週間は控えてもらった方がいいかと思います」

【5人目】ありさの場合:
「裸眼が理想だけど、手術はちょっと怖い」

ありさ:「私もヨガ講師をしていて、ICLにメリットを感じているのですが、デメリットも知りたいです。副作用があるのかも気になります」

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レイ先生:「まず手術の前は、コンタクトレンズを完全に外す期間が必要になります。

ICLのレンズの度数を正しく決めるためにコンタクトを外した本来のその人の目で検査する必要がありますので、メガネで過ごしていただきます。手術の後は、若干目の鈍痛を感じることがあります。それは眼圧といって目の硬さがちょっと硬くなってしまうことが理由で、著しく硬くなった場合は目薬や飲み薬で対応します。また、手術の後でごくまれに軽い炎症が起きることもあります。その場合も目薬や飲み薬で治療します。

症状によっては手術室の中で処置をしないといけないこともありますが、定期検査をしっかり受け、何かおかしいなと思ったらすぐ眼科を受診してもらえば医師が正しく診断をしてそれに対して適切な処置を行いますので大きな心配はありません」

ありさ:「対処法があるのは安心しました。でも、目の手術って怖いです。見えるんですか⁉️」

レイ先生:「手術の時は目薬で瞳孔を開いているので、ピントが合わず、『まぶしいところで何かされているな、何か近づいてきたかな』くらいの感覚です。くっきり見えるわけではありません」

上野:「たしかに目の手術って何か見えるのかと思っちゃうよね(笑)! ということで、質問は以上でみんな大丈夫そうですね。レイ先生、いかがでしたか?」

レイ先生:「私にとっては日々行ってる当たり前の手術なのですが、こうやってみなさんが不安を持っていることを知れたのがとても価値がありました。そういう気持ちを持ちながら、これから来られる患者さんに接していきたいですね。また、ICLの手術に関しては最近ネット上でも様々な情報があると思いますが、実際クリニックでカウンセリングを受け、医師の診察を受けるきっかけになってもらえたらいいなと思います」

上野:「みなさんこれをきっかけに検診へ行っていただいたり、選択肢を広げていただければと思います。レイ先生、皆さん今日はありがとうございました」

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教えてくれた人

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松本玲先生 プロフィール

日本眼科学会認定 眼科専門医、平成2年 宮崎医科大学卒業、京都大学医学部眼科学教室入局。神戸逓信病院眼科、県立塚口病院眼科、遠谷眼科勤務を経て、平成19年1月 医療法人社団 医新会へ入職。平成20年4月 眼科レイクリニック 院長に就任。現在までに白内障・眼内レンズ手術等、1万眼以上の執刀経験を有するが、特にレーシックや有水晶体眼内レンズなどの屈折矯正手術分野では国内屈指の治療実績をもち、多くの眼科医師・検査員らの育成・指導にあたっている。

Photo:KOTA TSUKAMOTO Hair&make:MISUZU MOGI

制作協力・提供/スター・ジャパン合同会社

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Kanna Konishi
ウィメンズヘルス・副編集長

編集者として多くのメディアに携わったのち現職。健康オタク歴20年、趣味は"毒出し"で、体と心と部屋を効率よく整え、環境にもいい健康法を探るのがライフワーク。チアリーダー経験あり、勝手に人を応援しがち。仕事では「心から推せるものしか紹介したくない!」と目を血走らせ、常に情熱大陸に上陸中。 

Instagram: @editor_kanna_purico