この記事を読めばきっと、あなたの細胞たちはますます骨のためによい仕事をしてくれるようになる。まずは、骨に関わる重要な2つの細胞たちのことを理解しよう。骨を作ることで忙しい「骨芽細胞」と、骨を分解する「破骨細胞」。

生きている間は永遠に停止することのないこの生物学的プロセスによって、10年ごとに新しい骨に生まれ変わり、損傷した古い骨は除去されたり、あるいは再構築を繰り返して、可能な限り骨の強度が保たれている。

この任務を遂行する2つの細胞の働きっぷりは、あなたの年齢によって変わるもの。30歳を迎える前までの骨芽細胞は、骨の形成に熱意を持ってせっせと着手している。30歳を過ぎると、骨芽細胞の数は激減し、代わりに破骨細胞が立派な労働倫理を持って責任を務めるようになる。

この入れ替わりによって、40歳以降になると骨の健康は低下し、45歳から70歳の間で骨量が最大30%も消失するというリスクがある。だからこそ、健康管理の一環として、丈夫な骨を作るための習慣を身に付けることが大切なのは、言うまでもないこと。

もちろん、これはすでに多くの人にとって周知の事実かもしれないが、多くの人に知られていない事実もある。それは、「骨を作るための最良のルート」が存在するということ。骨密度のことなど考えもしないで筋力トレーニングに励んでいる人でさえ、骨が丈夫になるという筋トレの効果に精通している人は少なくない。カルシウムが骨を強くするということは、牛乳を飲むたびに、子供の頃からよく聞かされていたことかもしれない。

実際のところ、食事と運動の両方が、骨量の増加や減少のスピードに影響を及ぼすことは紛れもない事実。だが最近になってようやく、どちらのほうが影響力が大きいのかが明らかになった。それはなんと、食事のほうだった。アメリカ版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。

研究で明らかになっていること

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この判決を下したミシガン大学の科学者にとっても、これは寝耳に水だったそう。「運動が骨の健康に与える好影響については数々の研究で示されていたため、食事がこれほどまでに大きな役割を果たしていることを知らされとても驚いています」と話すのは、この研究に携わったバージニア・コモンウェルス大学のマイケル・フリードマン博士。

フリードマン博士が率いる研究チームは、運動する2組のマウスを比較した。1つ目のグループには、種子と穀物を混ぜた通常のマウスの餌を与え、もう1つのグループには同じ餌に加え、骨に優しいミネラルを補った。すると後者のグループは、運動時の骨量が増加しただけでなく、その後の安静時にも骨量が増加していたという。

マウスは人間じゃないけれど、この結果は人間にも当てはまるとフリードマン博士は述べており、骨の健康状態をもっともよい状態に維持する最善の方法は、体重負荷運動と骨の形成に役立つミネラルを適量に組み合わせることだと話している。

骨の形成に役立つミネラルとは? カルシウムを満点に含む食品を食べると、ビタミンDの働きによって腸管からカルシウムが吸収される。

そして血液中に入り、最終的には骨の結晶の中に保存される。実際のところ、体内のミネラルの99%が骨の中に蓄えられている。このミネラルが骨芽細胞の数を増やし、その効率性を高めるという2つの機能で、骨質を強化しているという。

「生体内(生きている人間の骨の中)でなにがどのように起きているのかを観察するのは難しいことですが、試験管内の研究では、カルシウムが骨の幹細胞に、新たな骨の形成を助長するタンパク質の産生を増加させることがわかっています。さらに補足すると、これらの幹細胞は骨芽細胞にも変化するため、骨芽細胞の数が増えることもわかっています」と、フリードマン博士。

また、カルシウムは骨の中に蓄えられており、血液中のカルシウム濃度が下がりすぎると、骨に蓄えられたカルシウムが血流に放出される仕組みになっている。カルシウムの供給量が慢性的に不足すると、骨は繰り返しカルシウムを血液に放出しなくてはならなくなるので、結果として骨質が低下し、骨が細く脆くなるので、問題を引き起こすことになる。

カルシウムを十分に摂取するには?

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FARBAI//Getty Images

骨を丈夫で強くする作用を持つカルシウムに関する研究は、栄養ガイドラインに情報提供しており、カルシウムの濃度を健康的に維持するためには、成人男女は1日700mgのミネラルが必須になるとアドバイスしている。(※下記アメリカの栄養ガイドラインの数値)

この摂取目安量を満たすには、一部脂肪分が取り除かれているセミスキムミルク、またはカルシウムが強化された植物性ミルクを250mlのグラスに1杯と、ランチタイムのサラダにカッテージチーズを150gトッピングする。午後のおやつにはドライイチジクを60gとアーモンドを30g、夕食にはブロッコリーを150g添える。

アンチョビ、シラス、サケ、イワシなどに含まれる本物の骨を食べると、ハイドロキシアパタイトと呼ばれる高濃度のカルシウムを摂取することができる。例えばイワシの缶詰には420mgのカルシウムが含まれており、1日の推奨量の半分を満たすことができる。

一方で、意欲的に牛乳をたくさん飲むことは、必ずしも骨を強化するために適したアプローチとはならないので要注意。実際のところ、1日1杯の牛乳は、骨が丈夫になることに関連付けられている一方で、3杯以上飲むと骨折のリスクが高くなる。

それはどうして? これに関しては、研究者たちもはっきりとわかってはいない。一説によると、牛乳はほかの乳製品よりもD-ガラクトースという糖が多く含まれている。これを大量に摂取すると、有害なフリーラジカルと抗酸化物質のバランスが崩れるため、炎症や酸化ストレスを引き起こし、骨にもダメージを与えることになると考えられている。

これは、栄養士が1日を通して乳製品の供給源を変えることを推奨する理由の一つなのだそう。

ほかのミネラルも一緒にバランスよく摂ること

骨にカルシウムが大事なのは確かだけれど、そのほかの栄養素も同じくらい配慮すべき。マウス実験では、特にリンの働きが不可欠であることが示された。

「リンは、体がカルシウムを利用できるように、さまざまな方法で補助しています」と、フリードマン博士。「ヒドロキシアパタイトを作るには両方のミネラルが必要です。骨を構成する主成分だからです。リンを摂らずにカルシウムばかりを補っていても、然程骨のためにはならないのです」

「また、血中のカルシウム濃度が上昇すると、ホルモンが変化して、血中のリン濃度を低下させます。食事から十分にリンを摂取できていなければ、この低下は、食事からカルシウムを多く摂取することで得られる効果を妨げてしまいます」

お決まりだけど、特定の食材や栄養素だけを食べていれば解決する、というような答えは栄養学にない。でも幸いなことに、リンは、ほとんどの人がかなり頻繁に食べている食品(米、パン、オーツ麦、鶏肉、魚、乳製品など)に含まれているため、1日550mgの摂取目安量を無意識に満たせている人は多いよう。

脂溶性ビタミンDとKもまた、骨にとって大きな役割を果たしている。「ビタミンDは、カルシウムが骨に到達できるように、腸を通過するのを助けています。ビタミンKは、骨の形成に関与するタンパク質の濃度を上昇させる働きがあります」と説明するのは、栄養士のエマ・ダービーシャー博士。

ダービーシャー博士が言うには、一度に吸収できるカルシウムの量は限られている。ほかの成分との相乗効果もあるため、1日を通して満遍なくミネラルを摂取することが、骨の貯蔵カルシウムを増やし、体が効率的にカルシウムを利用できるようにするためのもっとも懸命な方法なのだとか。

また、1日に5種類の野菜や果物を食べても害にはならない。ニュージーランドのマッセー大学で行われた研究では、1日に9種類以上の果物と野菜を摂取した女性は、わずか3カ月で骨の健康の指標にプラスの変化が現れたそう。

栄養科学では、あらゆる色や形をした植物をふんだんに食べることが、自身の体を守ることにつながることを支持している。今からでも遅くはない。骨に十分なミネラルを蓄えていこう!

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: HELEN FOSTER Translation : Yukie Kawabata