おへその存在は忘れがち。通常は服に隠れて見えないし、見えたとしてもなにかしようという気にはならない。だから、突然おへそが臭くなった日には大慌て。でも、悪臭がするからといって必ずしも体に問題があるとは限らない。

アメリカのノースウェスタン大学フェインバーグ医学院の皮膚科学助教授、シュアイ・シュイ医学博士によると、ほかの部位の皮膚と同じように、おへそのなかや周辺にある古い角質も剥がれ落ちる。この剥がれ落ちた角質は、汗や汚れと一緒に、おへそのなかに蓄積する。シュイ博士いわく発赤、痛み、分泌物がないのなら、本当に心配無用。

形状上、おへそのなかに老廃物が溜まりやすく、悪臭が生じやすい人もいる。「複雑に入り組んだおへそには汚れや老廃物といった“ゴマ”が溜まりやすいです」と説明するのは、認定皮膚科専門医のリンジー・ズブリトスキー医学博士。おへそが深く引っ込んでいると「掃除が難しいので、臭いもひどくなりがちです」。

とはいえ、おへその悪臭が体の異常を示すサインであることもなくはない。ここからは考えうる悪臭の原因と対処法をアメリカ版ウィメンズヘルスから見ていこう。

1.掃除をしていない

アメリカのイェール大学医学部の臨床皮膚科学助教授でアメリカ女性皮膚科協会副会長のモナ・ゴハラ医学博士によると、おへその悪臭の原因として一番多いのがコレ。いうなれば、台所の生ゴミを出していない状態。おへそのゴミも「腐られば腐るほど臭くなりますが、しっかりゴミをかき出そうとする人は少ないですね」

なかになにも見えなくても、おへそを洗う必要はある。「おへそのなかに大きなゴミの塊があるわけではありません」とゴハラ医師。「溜まっているのは顕微鏡でしか見えないような角質や細菌、皮脂ですから、必ずしも目に見えるとは限りません」

原因が掃除不足にあるときは臭いだけ。おへそ周辺の皮膚に異常が見られず、おへその見た目も変わらない。

この場合は、おへそを定期的に掃除するだけでいい。おへそは、ワキの下や足の指の間と同様、くぼんでいるので入念なケアが必要。「低刺激のボディソープで表面を洗いましょう。私なら綿棒やオイルは使いません」とゴハラ医師。

ポイントは、やさしく丁寧に。シュイ博士によると、おへその皮膚はデリケートなので、動かしすぎや擦りすぎはNG。

2.感染症

おへそのなかで細菌や酵母様真菌が増殖すると、感染症が生じてしまう。通常はブドウ球菌による細菌感染症か、カンジダ菌による酵母様真菌感染症。「カンジダ菌は、暖かくて湿った環境が大好きです」とズブリトスキー博士。「おへそのなかは、カンジダ菌の増殖にピッタリの環境といえますね」

アメリカのマウント・サイナイ病院皮膚科学助教授のジョシュア・ツァイヒナー医学博士によれば、深く落ち込んだタイプのおへそは、真菌や細菌の温床になる。そのため、免疫不全の人だけでなく、おへそがこのタイプの人も感染症になりやすい。おへそにピアスをしている人や、おへそから腹腔鏡手術をした人も要注意。

感染症にかかったおへそは、炎症を起こして赤くなり、触ると熱い。かさぶたのようなものができたり、排膿や皮膚の剥離が見られたりもする。

ズブリトスキー博士によると、細菌性感染症の場合は、おへそを抗菌性のせっけんで洗うといい。洗ったあとは、真菌性感染症を防ぐために、おへそを完全に乾かして。

3.皮膚疾患

皮膚疾患が原因で、おへそが炎症を起こしたり、おへそにゴミが溜まりやすくなったりすることも。シュイ博士によると、おへそには乾癬(かんせん)が生じやすい。乾癬は、皮膚の発赤や剥離を引き起こす自己免疫疾患で、おへそのなかにゴミを溜まりやすくする。湿疹やアトピー性皮膚炎も発赤や剥離の原因となる。

おへその悪臭にプラスして上記のような症状が見られるときは、皮膚科で原因と治療法を特定しよう。乾癬の薬には処方箋が必要になるけれど、湿疹の場合には、生活習慣の改善でかゆみや不快感を軽減できる。

4.嚢胞(のうほう)

嚢胞も考えられる要因の1つ。ズブリトスキー博士いわく類表皮嚢胞は、皮下にケラチン(皮膚や髪のタンパク質)と老廃物が詰まった袋で、おへそのように表皮がシワシワしているところにできやすい。このような部位の問題は、皮膚が成長しても古い角質が剥がれないこと。

嚢胞からチーズのような物質が染み出てきて臭いけれど、通常は危険じゃないし、治療も不要。ただ、炎症が見られるときは、かかりつけ医か皮膚科医に相談を。嚢胞の中身を出し切るために、お湯で湿らせた布をおへそに当てるよう指示されることもあるそう。

結論として、おへそが急に臭くなっても通常は心配無用。ただし、おへそ周辺の皮膚の発赤や剥離、排膿などの分泌物が見られるときは病院へ。おへその悪臭の予防と改善には、低刺激のせっけんと水で定期的に洗うのがベスト。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Jackie Lam Translation: Ai Igamoto