かむこと(咀嚼)で唾液を分泌させることには多くの健康メリットがあるということは、よく聞く話。そんな健康効果を手軽に取り入れるのに、上手く利用したいのが「ガム」。

とくに成分を気にせずガムをかんでいる人も、「シュガーレス」や「キシリトール」という表記は目にしたことがあるはず。

今回は、かむことの重要性と、シュガーレスガムの甘味料として使われているキシリトールについて、ロッテ中央研究所チューインガム研究課の課長である江村耕司さんと、噛むこと研究部の菅野範さんに伺った。

<目次>

かむことのメリットとは?

菅野さんに教えていただいた、研究報告されているかむことのメリットは以下の4つ。

①ストレスへの影響

ある店の店頭に立つスタッフに1日4回、それぞれの自由なスピードで6週間にわたりガムをかんでもらったところ、ガムをかんでいない人と比べて気分の落ち込みが軽減することがわかったそう。

また、仕事中に自由にガムをかんでもらったところ、ストレスや疲労感、仕事中の不注意によるミスの減少もみられたのだとか。

このように気分やストレスの好影響が見られた理由としては、リズム運動によって、幸せホルモンとして知られるセロトニンが、脳内で分泌されることが関係している可能性が。ウォーキングや呼吸だけではなく、実はガムなどをかむこともリズム運動の一種。リズム運動は脳内でセロトニン神経系を活性化するのだという。

②唾液の分泌

唾液は、なにも食べていなくてもじわじわ出ており、1日当たり1リットル~1.5リットルも分泌されているそう。また、食事中の味やかむ刺激によっても唾液が多く分泌される。ガムは、味がなくなった後もかみ続けることができ、唾液を出し続けられるメリットがある。

③エネルギーを消費する

かむことでエネルギー消費にもつながる。ガムのカロリーが気になる人もいるだろうが、かんでカロリーが消費されると考えれば、そこまで気にしなくてもよさそう。ダイエット中やお菓子のカロリーが気になる人は、ガムをかんでみては。

④血流促進

高齢者で記憶テストをしたときの正答率がガムをかんだときのほうがよかった。また、若い人でも瞬時に判断して回答する認知テストの正答率や反応速度が高まったという結果もある。これは脳の血流が促進されて、脳機能が活性化したためと考えられている。

さらに、スマホやPC作業で眼の疲れを感じている人にガムを摂取しながらPC作業をしてもらったところ、PC作業による眼の疲れや眼の重さ、乾きが抑えられていたという。これは、ガムをかんだことにより眼の血流が増加したことが要因だと考えられている。

仕事で1日中パソコンを使って眼の疲れを感じている人は、ぜひガムを取り入れてみて。

唾液を出すことのメリット

かむことのメリットのなかで、よく聞くのが唾液を出す大切さ。ここでは、唾液が出ることで得られる6つのメリットをご紹介。

①消化を助ける

唾液中にあるアミラーゼはデンプンを分解し、ブドウ糖に変えている。デンプンがブドウ糖になり、吸収されやすくなることで胃や腸での消化を助けてくれるそう。胃や腸の負担を減らすために、しっかりかむことを心がけよう。

②口内の自浄作用

唾液が口内を流れることによって、口内に残った食べカスや汚れが洗い流され、口内が洗浄される。

それだけでなく、舌で感じる味覚は、唾液などに溶けた味成分によって感じられるそう。私たちは、唾液が分泌されることで食べものの味をしっかり感じることができている。

③抗菌・免疫作用

唾液中のリゾチームといった成分は、口内を抗菌する作用がある。さらにIgAという免疫物質が菌やウイルスにくっつき、体内へ侵入することを抑えてくれる。

IgAという免疫物質は、ガムなどかむことで普段よりも時間当たりの量が増えるそうなので、唾液を分泌させる作用も含め、ガムは有用といえる。

④再石灰化

唾液にはリン、カルシウムなど歯のもとになる成分が含まれている。歯の表面が少し溶けたときに修復してくれる効果もあり、初期のむし歯に効果的だそう。

⑤口内の中和

口内が酸性に傾くと歯が溶ける原因になってしまうけれど、唾液中の成分が口内を中性に戻してくれる。唾液の出る量が多いほうが、酸性に傾いた口内を中和する効果が強くなるのだそう。

⑥口の乾燥対策

口内が乾くと粘膜が傷つきやすくなったり、口臭がでやすくなったりする。口内を乾かさないためにも、ガムかんで唾液を出すというのも1つ 。まだまだマスク生活が続きそうだから、口内の乾きが気になったらガムを試してみては 。

ここまでで、かむことや唾液の重要性はかなり分かったはず。では、シュガーレスガムに含まれる成分はどんなものなの? 江村さんに教えてもらった。

そもそもシュガーレスとは?

シュガーレスとは、食品100gあたりに含まれる 糖類(砂糖、ブドウ糖や果糖など単糖類と二糖類 )が0.5g未満のものである。シュガーレスガムでは、糖類以外の糖質(キシリトール等)を主に含んでいるため シュガーレスという表記ができるそう。

キシリトールってなに?

主に、シラカバやカシなどの植物から作られる「糖アルコール」の一種。果物や野菜に含まれており、 人間の肝臓でも、1日に約15g作られている。

キシリトールのメリットとは?

1.むし歯の原因にならない

口内のむし歯菌(ミュータンス菌など) が歯に残った糖から酸をつくるけれど、キシリトールからは酸をつくれないため、むし歯の原因にならない。

2.唾液中のむし歯菌を減らす

キシリトール非配合のガムを噛んだ人と比べて、キシリトール配合のシュガーレスガムを噛んだ人の方が唾液中のむし歯菌が減るのだそう。

3.カロリーが少ない

砂糖は、1gあたり4キロカロリーに対し、キシリトールは1gあたり3キロカロリー。数字は大差ないように感じるけれど、パーセンテージで見ると、25%のカロリーオフになる。

さらに、キシリトールは砂糖と同じくらいの甘さなのに、カロリーが低いのはうれしいポイント。

シュガーレスガムは、どんなシーンに食べるのがおすすめ?

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Oleksiy Boyko / EyeEm//Getty Images

カロリーが低く、ダイエット向きといえるシュガーレスガム。どんなシーンで取り入れるのがおすすめなのかを、菅野さんに教えていただいた。

①食後 

ご飯を食べたあと、体が温まった感じがするのは食後熱産生によるもの。この熱産生によって1日のカロリー消費量の 10%もカロリー消費が行われているそう。食後にガムを食べることで、このエネルギー消費が高まったという研究結果もある。ガムを1回食べただけでは、その効果は微々たるものでも、1週間、1年と食後のガム習慣を続けることで消費カロリーが上がるといえる。

②食前

食前にガムをかむことによって血糖値を下げるインスリンが分泌されるという結果もあるそう。食後の血糖値が気になる人は、ガムを食べてから食事をしてみては。

③運動中にガムをかむ

ウォーキング中にガムをかむと、そのリズムの影響で、かまずに歩くよりも歩行速度が上がり、カロリー消費も上がるという。

唾液で口内を潤しながら、効率的にウォーキングができるからおすすめ。

④酔いの軽減

電車やバスなどで通勤時に酔ってしまう人に朗報。ガムをかみながら乗ると揺れによる酔いが軽減されるという結果があるそう。

まとめ

・かむことでストレス対策やエネルギー消費ができる

・唾液の分泌は、抗菌・免疫&口の乾燥対策に効果的

・シュガーレスガムは、カロリー消費や揺れによる酔い対策にもおすすめ

ガムをかむことは、健康維持やダイエットにもつながる可能性が。

まずは、ガムを生活に取り入れ、かむ習慣を身につけよう!

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Nao Sakamoto
エディター

アシスタントエディターとしてSNS業務も担当。人間の心理、睡眠や美容に興味を持ち、記事執筆を行っている。自他ともに認める運動音痴だが、最近ヨガとピラティスで心と体を整え始めた。健康なライフスタイルを送りたいため、1日1食オートミール生活を実践中。