• 新たな研究結果により、ビタミンDが不足している人は新型コロナウイルスに感染した場合、重症化しやすいということが示唆された。これを受け、ビタミンDが新型コロナウイルス感染症の症状を軽減する可能性についての議論が再燃している。
  • 感染症の専門家は、ビタミンDと新型コロナウイルス感染症の重症度との直接的な因果関係を確認するためには、より詳細な研究が必要であると述べている。
  • ビタミンDそのものが新型コロナウイルスへの感染を阻止するわけではない。専門家は、大量摂取は健康を阻害する可能性があるので、サプリメントなどを購入する前に医師に相談することが重要だとコメント。
  • この記事では、ビタミンDが本当に有効なのか、そして単独で新型コロナウイルス感染症を予防できるのかを解説する。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止におけるビタミンDの役割については、代替治療法の話題による後押しもあり、パンデミックが始まって以来、長きにわたり多くの専門家たちの間で議論されてきた。

しかし新たな研究により、ビタミンDの値と(特にオミクロン株による新型コロナウイルス感染症の)重症化を防ぐ免疫システムの能力との間に関連性がある可能性が指摘されたため、ビタミンDのサプリメントなどに対する人々の関心が再び高まっている。

cod liver oil capsules
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この小規模な研究は、イスラエルの研究者らによって実施されたもので、2020年4月から2021年2月の間に収集されたデータに基づいているという。研究結果は先ごろ学術誌『PLOS ONE』に掲載され、研究者はオミクロン株においても「同様に関連性がある」という事例を示している。

データは、治療のために入院した253人から(ワクチン摂取の開始以前から)集められたもので、入院時に採血した血液サンプル内のビタミンD値が低い患者は、ビタミンD値に問題がなかった患者よりも、重症化または重篤化しやすかったと結論づけている。この研究では、約半数の患者のビタミンが不足していた。

さらに、ビタミンDが不足している人は、新型コロナウイルス感染症の重篤な合併症[アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、人工呼吸器が必要になる可能性が高い人を重症と定義し、さらに呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器不全を経験する人は重篤と定義している]を引き起こす可能性が14倍も高いことがわかった。

また、ビタミンDが不足している人は、感染症が原因で死亡する確率が著しく高く、ビタミンDが不足していない人の死亡率がわずか2.3%であるのに対し、不足している人の死亡率は25.6%であることが分かったという。

これを聞いて、ビタミンDを十分に摂取すれば、免疫システムを最高の状態に保つことができるのかと考える人もいるかもしれないが、他の専門家は、この研究がビタミンD単体で重度の感染症から人々を救えることを証明するものではないと強調している。

シンシナティ小児病院の感染症部門で責任者を務めるポール・スピアマン医学博士は『Good Housekeeping』に対し、新型コロナウイルスに感染した人のビタミンD値が、重症化抑制の指標になるかどうかを確認するためには、さらなる研究が必要であると語る。

「関連性は、因果関係とは異なります。つまり、ビタミンDが不足していること自体ではなく、他のことが原因で重症化している可能性があるということです」と同氏は説明。明確に証明するためには、新型コロナウイルスに感染する以前のビタミンDの補給に関する、二重盲検無作為化比較試験が必要であると付け加え、「この種の研究は実施が難しく、多数の患者に参加してもらう必要があります」と話す。

female doctor doing research in laboratory
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スピアマン博士によると、新型コロナウイルス感染症に対するビタミンDの役割を明らかにするために、限定的なメタアナリシス(過去の複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計的方法により解析した系統的総説)研究で考察されたのはこれが初めてではない。

なお相反する研究では、ビタミンD値が低くても新型コロナウイルス感染症のリスクや死亡率が「悪化」することはなく、また、任意の方法でビタミンDサプリメントの摂取量を増やしても、病院での回復に合わせて患者の健康が改善されることもないという結果が出ていると彼は指摘する。

2021年に『Nutrition Journal』誌に掲載された研究では、新型コロナウイルス感染症の重症度とビタミンD値との間に関連性はないと結論づけられ、ブラジルのサンパウロ大学から発表された査読前の研究報告書でも、入院患者に投与したビタミンDサプリメントが「回復効果をもたらさなかった」との結論が示されている。

しかし、ビタミンDが役に立たないというわけではない。新型コロナウイルス感染症の予防や重症化抑制にビタミンDが果たす役割はまだ不明だが、スピアマン博士はビタミンDが不足している人が免疫システムに影響を与える理由には、理論上の理由があると付け加えている。

ビタミンDは、新型コロナウイルス感染症の予防に有効なの?

カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、骨を健康に保つために不可欠な栄養素であり、筋肉の働きを助け、その他のいくつかの重要な体の働きにも関係しているという考えは、栄養学の専門家によって長い間確立されてきた。

ビタミンD値は、脂ののったサーモンや牛レバー、卵黄、チーズなどの食品から部分的に摂取できるため、栄養状態に左右されるのは確か。だが多くの場合、屋外に出るだけでビタミンDを自然に摂取することができる。登録栄養士のステファニー・サッソ氏は、サプリメントの潜在的な利点を紹介するインタビューで、「ビタミンD値を高めるための最もよく知られた方法は、日光を浴びることです」と語っている。

ビタミンd コロナ
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しかし、ビタミンDが免疫力を全体的に高めるという根拠はそれほど明らかではないとスピアマン博士はコメントしている。「ビタミンDは他の呼吸器感染症に効くと評価されています。しかし残念ながら、一度に大量のビタミンDを投与してもまったく役に立たないということ以外は、明確な答えがありません」「この問題のメタアナリシスでは、結論に至っていないのです」

新たな研究は、ビタミンD値の低さと(新型コロナウイルス感染症を含む)重篤な疾患との関連性を示す、急成長中のエビデンスにさらに重みを加えるかもしれない。しかし、もしビタミンDに免疫力を高める効果があるとすれば、「標準的な低用量で摂取した場合であり、大量に投与した場合ではない」とスピアマン博士は明言している。

スピアマン博士やサッソ氏を含む各分野の専門家の見解は、ビタミンDのサプリメントは、主に治療中にビタミンD値が低いと医師に指摘された場合にのみ検討するべきだ、という点で一致している。

この研究のニュースを知って、自分のビタミンD摂取量に興味を持った人は、医師と相談してみる価値はあるかもしれない。しかし、多くの人の血管には十分なビタミンDが流れている可能性が高い。NIHによると、重度のビタミンD欠乏症を患っているアメリカ人はわずか5%で、18%は「不十分」なレベルであると指摘されているが、このレベルでは痛みやけいれん、筋肉の発達に関連した問題を引き起こす場合と、そうでない場合があるとサッソ氏は付け加えている。

スピアマン博士は、「もし医師からビタミンD値が低いと指摘されたら、医師の指導のもと、サプリメントを摂取してください」「ビタミンDの大量摂取は危険であり、自己流で摂取すると高カルシウム血症や腎不全などの問題を引き起こす可能性があることも、念頭に入れておきましょう」と助言。

またサッソ氏は、「水溶性ビタミンは過剰に摂取してもすぐに尿として排出されますが、ビタミンDのような脂溶性ビタミンは長期間体内に留まるため、過剰に摂取すると弊害を引き起こすリスクが高くなります」と付け加えている。

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ビタミンDの摂取で新型コロナウイルス感染症を予防できるの?

今回の研究結果と、相反する研究結果、そして新型コロナウイルスがワクチン接種者と非接種者の両方にどのような影響を与えるかについてわかっている情報すべてを考慮すると、ビタミンDサプリメント単体では新型コロナウイルス感染症を予防できないことは明らか。

いっぽうで専門家たちは、新型コロナ感染後に重症化したり死亡したりするリスクを下げるために、ビタミンDがわずかでも役に立つかもしれないことを、引き続き検証している。

スピアマン博士は、「普通の健康な人が、継続的にサプリメントを低用量摂取することで、新型コロナウイルス感染症の重症化を防げるかどうかは、まだ定かではありません」と語る。

現在も、ビタミンDの摂取に関する無作為化比較試験が専門家によって実施されているため、ビタミンDがパンデミック終息の一助となるかどうかの議論は今後も続くと思われる。「より高度なエビデンスが期待されるこれらの試験から、明確な答えが得られることを願っています」とスピアマン博士は語っている。

専門家の間では、ビタミンDがパンデミックの終息に果たす唯一の役割は、病気になった後の積極的な解決策ではなく、部分的かつ予防的なものであるということで意見が一致している様子。

UCデービスメディカルセンターの感染症部門で責任者を務めるスチュアート・コーエン医学博士は、「ビタミンDの補給は患者の治療に役立つかもしれませんが、現時点ではデータが比較的弱い」「ビタミンD単体では、新型コロナウイルス感染症の治療ができないことは確かだ」と最近のレポートで述べている。

主治医にビタミンDについて相談することは、最適な栄養素で免疫システムを全面的にサポートするための効果的な方法になり得る。新型コロナウイルス感染症を予防するための代替策について議論がなされているが、いっぽうで現在のワクチンには、感染による入院や死亡を防ぐ効果があることが実証されているため、ワクチン接種を検討することも助けになるかもしれない。

a healthcare worker prepares a dose of covid19 vaccine
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まとめ

特にビタミンD値が低かったり、ビタミンDが不足していたりする人は、この必須栄養素を十分に摂取するためにまず主治医と相談することが大切。専門家は過去にも、以下のようなリスクのある人は、ビタミンDのサプリメント摂取について医師と相談することが有益であると立証している。

  • 65歳以上の成人
  • 肥満症の人
  • 肝臓疾患、セリアック病、嚢胞性線維症、クローン病または潰瘍性大腸炎と診断された人
  • 日光を浴びる機会が少ない人
  • 肌の色が濃い人
  • 自然由来のライフスタイルを好んでいる人

医療機関に行けば、血液検査でビタミンD値を調べることができ、自分に合ったサプリメントや適切な摂取量を知ることができるとサッソ氏。

またスピアマン博士は、「ビタミンD欠乏症と診断された人は、医師の指導のもとビタミンDのサプリメントを摂取することが理にかなっています」「しかし、ワクチンが新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐベストな方法であることは確かであり、そのエビデンスは紛れもない事実です」と付け加えている。

※この記事は、海外のサイトで掲載された記事の翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。また、日本における新型コロナウイルスに関する最新情報については、厚生労働省WHOのサイトをご確認ください。

Translation: Masayo Fukaya From Good Housekeeping

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Zee Krstic
Content Strategy Manager, Hearst Magazines

Zee Krstic is a content strategy manager for Hearst Magazines, focusing on SEO optimization and other editorial strategies for four brands, including Country Living, House Beautiful, ELLE Decor and VERANDA. He previously served as Health Editor for Good Housekeeping between 2019 and 2023, covering health news, diet and fitness trends as well as executing wellness product reviews in conjunction with the Good Housekeeping Institute. Prior to joining Hearst, Zee fostered a strong background in women's lifestyle media with eight plus years of editorial experience, including as a site-wide editor at Martha Stewart Living after developing a nutrition background as an assistant editor at Cooking Light. Zee produces service-based health coverage, as well as design and travel content, for Hearst brands on a contributor basis; he has written about food and dining for Time, among other publications.