トップセレブやアスリート、起業家たちに支持されている「ポジティブ・アファメーション(Positive Affirmations)」という言葉を耳にしたことがあるだろうか?
直訳すると「ポジティブな断言/主張」となるこのワードは、“前向きな精神状態を作り出し、最終的には現実世界の結果に影響を与えるよう意図された、シンプルな声明や宣言”のことで、具体的には「私は無条件に自分を愛している」「人生におけるベストな道を歩んでいる」といった言葉のことを指す。
多くのサクセスストーリーに貢献したとも言われており、ここ数年特に大きく注目されているトレンド。
現時点で、インスタグラム上で「#positiveaffirmations」のハッシュタグは210万件以上も投稿されており、意図していなくても、スクロールをしているうちにこの言葉を見かけたことがある人もいるだろう。
セレブ界にも当然ながら浸透しており、たとえばジェニファー・ロペスはこのために毎日15分を費やしているといい、世界で最も有名な司会者のひとりオプラ・ウィンフリーも、セルフケアのルーティンのなかで自分を肯定することについて明かしている。
ポジティブ・アファメーションがトレンドの理由
特に、この約1年の間に注目を集めているポジティブ・アファメーション。その理由のひとつには、新型コロナウイルスによるパンデミックが関係しているとみられている。
アファメーションは、「引き寄せの法則」の考え方と密接に関連している。「引き寄せの法則」とは、思考や感情が宇宙に波動を送り、その周波数を共有する事柄を引きつけるという考え方。つまり、善は善を引きつけ、悪は悪を引きつけるということ。
研究によると、ストレスが溜まっている時期は“魔術的思考”が急増する傾向にあり、無関係に見える出来事にも因果関係が生じて、超自然な力が結果に影響を与えると信じられている。
例えばストレスが強い状況では、より“幸運を祈る”おまじないをするようになることが、テルアビブ大学の研究で報告されている。星占いとマニフェスト(ここ1年で人気が急上昇している自己実現のための法則)は、この考え方に起因している可能性があると主張する人もいる。
しかし、アファメーションが自身の武器にならないというわけではないし、自身の認識を変え、真の変化をもたらす力がないというわけでもない――たとえ、波動とは関係なく、自尊心を高めているだけだとしても。
では、その根拠とは? みんながやる必要があることなの? 試すべき有益なステートメントとは? 気になることを以下に解説。
そもそも、ポジティブ・アファメーションって何?
「ポジティブ・アファメーションは、何度も繰り返すことで、ポジティブで幸せな感情や思考、態度を促進し、ネガティブで役に立たない思考に対抗することを目的とした短いフレーズです」と話してくれたのは、登録臨床心理士のステイシー・シェル博士。
「たとえば、あるタスクで失敗する可能性について考えるとき、その思考に抗うためにポジティブ・アファメーションが役立つかもしれません」
ポジティブ・アファメーションは簡潔で、決定的で、一人称で話すことが特徴。
いっぽうマインドセットコーチのウェンディ・オバインさんは、「特に、あなたが変化を起こそうとしたり、目標を達成しようとしているときにポジティブ・アファメーションを使うことで、自信を高め、変化が起こることを可能にするためのスペースを作ってくれます。自信を失い始めたときにあなたをサポートもしてくれます」と述べている。
ポジティブ・アファメーションはどう機能する?
要するに、思考は感情に影響を与え、感情は行動に影響を与える。つまり、昇進できないとずっと悩み続けているときは、その感情があなたの行動に反映されている可能性があるのだ。
ポジティブ・アファメーションは、ネガティブな発想や制限的な思考を改め、時間の経過とともに、アファメーションをはっきりと示し実行することで自身の物語を変えることに役立つと考えられている。
「私たちの言語は重要であり、自分自身について考えることは、我々の行動に直接影響します」「あなたが『人前で話すのは苦手、嫌いだ』と自分に言い聞かせ続けるなら、その考えが感情を引き出してしまい、人々の前で話す機会を恐れるようになるでしょう」とオバインさんは言う。
オバインさんは、このような思考を「ネガティブ・アファメーション」と呼んでいる。つまり、自分自身について否定的な思考を繰り返すことで、自信を失ったり、自分の能力を信じられなくなってしまうということ。
オバインさんはさらに、「私たちがポジティブ・アファメーションで古い思考パターンを断とうとするときは、神経経路を再配線しようとしているのです」と説明する。
つまり、人前で話すことに苦労している人が、かわりに「私には話を聞いてもらう価値がある」と自分に言い聞かせることで、元々あった「人前で話すのは苦手、嫌いだ」という古い思考を改めることも可能になるという。
ポジティブ・アファメーションを科学的な観点から見ると?
実際のところ、科学的にもポジティブ・アファメーションの力は認められている。ただし、すべての人の解毒剤になるというわけではないので要注意。
「ポジティブ・アファメーションは、一部の人にとっては役立つ可能性がありますが、それ以外の人にはほとんど効果がないか、もしくはかえって気分を悪くしてしまう可能性もあります」とシェル博士。
「ポジティブ・アファメーションが有効になる要因のひとつは、その人の自尊心です。自尊心が高い人は、ポジティブ・アファメーションを繰り返したときに気分や自尊心がわずかに改善されることが明らかになっています」
「ですが、自尊心の低い人が同じ言葉を繰り返しても、実際には気分や自尊心をさらに下げてしまう結果が示されています」
やや不公平かもしれないが、ポジティブ・アファメーションは自分自身を比較的肯定的にとらえることのできる人には機能するが、そうでない人にとっては、裏目に出てしまうことがあるよう。
逆効果にもなりうる
「ポジティブ・アファメーションが役に立たないと考えられる理由は、他にもいくつかあります」とシェル博士。
「人間として、私たちは今信じているものと比較してあまりにも異なるメッセージを受け取ることができない傾向にあり、それらの言葉(=ポジティブ・アファメーション)によって、今信じているもの(ネガティブ・アファメーション)をより強く信じさせてしまう可能性もあります」
「したがって、自分自身について非常に否定的な考えを持っている場合、その否定的な考えとは対極にあるポジティブ・アファメーションを拒否する可能性があります」
また場合によっては、私たちの個人的な“痛点”をより鮮明にするため、「ポジティブ・アファメーションは真実ではない」と証明しようと頭を悩ませることにもなりうるという。
「たとえば、“好きになれない”という感覚に対し、“好きになれる”という正反対の思考を繰り返しても、好きになれないと感じるようになったそもそもの出来事を思い出してしまう可能性があるのです」とシェル博士は説明する。
ポジティブ・アファメーションの実践方法
では、ポジティブ・アファメーションを実践するときはどうすべきか。それは、自分のルールを作ること。専門家は、正しい心構えでいるためにしっかりと場面を設定することを推奨している。
「あなたのエネルギーと、あなたが宣言する信念や結果が、一致しなければなりません」と語るのは、マインドセットコーチのジョエル・バージェスさん。「もっと自信が欲しいと思うなら、たとえば、パワフルな音楽をかける、堂々と立つ、ダンス、パワーウォーク、シャドーボクシングなど、必要なことは何でもしてください」
いっぽうオバインさんは、一貫性を保ちやすくするために、ポジティブ・アファメーションの実践に併せて習慣と儀式を作ることを推奨している。「馬鹿げているように聞こえるかもしれませんが、私は、すべてのクライアントに対し、トイレに行くときにアファメーションを実践してもらっています」
その理由として、まず多くのトイレ(洗面所)には鏡があるから。ネガティブな思考に対応する際の自分の顔を、確認できることがポイントだという。また、トイレは朝起きてから夜寝るまで、1日に何度も行く場所でもあるから。トイレに行くたびにポジティブ・アファメーションを繰り返すことで、定期的に思考を調整する習慣を身につけることができるようになるという。
オバインさんは、鏡に映る自分自身とアイコンタクトを取りながら、ポジティブ・アファメーションを口にすることを勧めている。「ポジティブ・アファメーションの後は、微笑んでください。笑顔でいることで、脳がアファメーションを受け入れやすくなります」
バージェスさんによると、ポジティブ・アファメーションが今の真実(もしくはもうすぐに起こること)だと自分自身に首尾よく納得させることができるときに、“魔法”が起こるという。
「宣言していることが、現実であるかのように振る舞ってください。あなたが望んでいることをすでに成し遂げているかのように、です」
もちろん、すぐにそれができるようにならなくても大丈夫。まだこうした振る舞いができる段階ではないときは、ポジティブ・アファメーションを何の条件もないシンプルなものにすることをオバインさんは推奨している。
ただし、ポジティブ・アファメーションをきちんと機能させたいのであれば、一貫性が重要。「たまにしか実践していないのに、それがいきなり実現するということはありません」「頻繁に繰り返す必要があります。特に、眠る直前と目覚めた直後は潜在意識が最も受け入れやすいタイミングなので、あなたが望む思考や信念で心を満たしてください」とバージェスさんはアドバイス。
ポジティブ・アファメーションの例
「ポジティブ・アファメーションは非常に個人的なものなので、まず、現在どのような制限的な考えがあなたを妨げているのか、その代わりにどんな考えを持ちたいのかを理解することをお勧めします」とバージェスさん。「これをとおして、制限的な考えを強い信念に変えることが、最も重要な違いを生むでしょう」
「たとえば、あなたの制限的な考えが“私は歳を取りすぎていて、ビジネスを始めることができない”というものなら、“私は自分の思い通りのことを成し遂げることができる”というふうに試してみてください」
「または、“私は未熟だ”と思っているなら、“私は今の自分とこれからの自分を受け入れ、愛している”と唱えてみましょう」
またオバインさんは、初歩的なアファメーションで自信を増してから、より具体的で直接的なステートメントに変えることを推奨している。
ポジティブ・アファメーションの最初のステップは、ここから始めてみて。
- 私は自分自身を愛することを学んでいる
- 私には、自分で選択したことを何でもできる能力がある
- 毎日、あらゆる面で、私は強くなっている
- 私は自分が正しい道を進んでいると信じていて、毎日自分のために存在している
- 私には話を聞いてもらう価値があり、私の上げる声にも価値がある
- 私は自分で思っているよりもずっと勇敢である
- 私は自分で自分のお金をコントロールし、それを楽に実行しようと学んでいる
その後さらに、以下の言葉を重ねていってみて。
- 私は自分自身を愛している
- 私は自分自身を信じている
- 私は今のままで十分
- 私は自分の目標に向かって突き進んでおり、明確な変化を感じている
- 毎日あらゆる面で、より多くを受け取る
- 私は豊かである
ポジティブ・アファメーションが悪い結果をもたらしたら?
アファメーションがうまくいかないときや、自尊心が低下していると感じるときは、代わりに現実的でバランスの取れたセルフステートメントを試してみよう。
「実際に私たちの現在の経験を検証すると同時に、よりバランスの取れた物事の見方にシフトさせることができます」とシェル博士。
そんなときは、以下の言葉に変えてみて。
私は自分自身を愛している → 自分の好きなところがいくつかある
私は愛されている → 私は好かれていないと感じているかもしれないが、少なくとも数人は好いてくれていることを知っている
この障害は学びの機会である → これはとてもハードなことで、起こらなければよかったと思うけど、もしかするとここから学べることがあるかもしれない
すべてがベストな方法で進む → たとえ嫌だとしても、コントロールできない、変えることのできない結果を受け入れるように努めている
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
Photos: Getty Images, Translation: Ai Ono From Women's Health UK