心理学の研究では、女性は共依存になりやすい性質を持っているそう。人間関係を築く際に、女性は、『他者への愛情欲求や依存性が強い』という特徴があるからです。無下に扱う恋人にハマってしまう、人の顔色を伺ってしまうなど、人間関係で苦労している気がするなら、もしかして、共依存かも? チェック項目と、その対処法をお伝えします。

共依存とは?

woman preventing man from drinking
Clandestini//Getty Images

共依存とは、自分と特定の相手が互いに過剰に依存し合い、その関係性に囚われている状態のことを指します。言い換えれば、お互いが相手に依存するあまり、自分自身を見失っている状態と言えるかもしれません。依存にも様々な種類がありますが、その中でも共依存は“関係性への依存”と言われています。元はアルコール依存症の患者とその家族の関係性から生まれた概念でした。飲酒の問題を抱える夫に対して、妻は自分を犠牲にしながら献身的に支え、世話をしますが、当事者の夫はますます酒に溺れて負のループに陥るといった具合です。今ではもっと広い意味で『問題を起こす人と、その人を支える人(問題を代わりに解決してあげようとする)という関係性に対して使われるようになりました。

共依存になりやすい人間関係とは? 例えばこんな場面

toddler hanging on to mother's dress
Tara Moore//Getty Images

共依存という関係性は、私たちの身近な、近しい人間関係の中で生まれます。共依存が生まれやすいとされる人間関係の例をいくつか見てみましょう。

親子

親が世話の範囲を超えて、過度に子をかまう、あるいは行動を制限することによって『親がいないと困る』という状況を作り、心身ともに自立することを妨げます。そういった親の対応により、子は『自分は親がいなければ何もできない』という思い込みを持つようになります。また、子が自立しようとしているタイミングで、親の具合が悪くなる、精神的に不安定になるといったケースもあります。

職場

意外かもしれませんが、職場でも共依存の関係は起きやすいと言われています。例えば、いつまでも独り立ちできない部下と、頼られたい上司の関係。部下の心の内としては、『上司が指示してくれれば安心。自分一人で何かするとなると不安だし面倒くさいから避けたい』といった依存心や、『自分なりの思いはあるけど、上司の好意に答えないと……』といった共依存が起こっています。一方で上司は『頼りにされることで自分の価値を保てるから、部下にはこのまま自立しないでほしい』という心理が働いており、お互いの心理的なニーズがマッチしていることで共依存から抜け出せないという構造が生まれているのです。

夫婦や恋愛関係

夫婦やカップルなどの恋愛関係は、特に共依存を生み出しやすくします。例えば、一方が相手に尽くしすぎることで、相手は尽くされることに慣れ、結果として自立しなくなります。“尽くす”と聞くと、一見すばらしいことのように思えますが、度を超えると、本来相手の責任であることさえも引き受けなくてはいけなくなってしまうのです。また、「相手のことを自分が救ってあげなければいけない」といった思いから、相手に問題が起こり、献身的に一生懸命関わっても、相手は変わらずに同じことを繰り返す=つまり何も行動に起こさないというケースもあります。それが続くと常に自分が無力感を味わう、なんてことも。

女性は共依存になりやすい?

sad woman lying on bed
Maskot//Getty Images

心理学の研究において、女性は特に共依存の関係に陥りやすいと言われています。それは、人間関係を築く際に、男性は自己優先、つまり他者よりも自分を優先し、支配や権力を示したいという特徴が強い一方で、女性は『他者依拠』と言って他者への愛情欲求や依存性、自己顕示性が強いという特徴があると言われているからです。女性が無下に扱う恋人にハマったり、わが子に依存してしまったり、というのもそういった背景があるのかもしれません。

当てはまるなら注意! 共依存にありがちな行動パターン

mid adult couple sleeping
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共依存に陥りやすい人たちには、ある程度共通した特徴があるとされています。以下の項目に当てはまるようであれば、すでに共依存の関係にはまっている可能性があるかも?

□自らを犠牲にしてでも他人を助けたり、世話をする
□自分に対する評価はいつも低めで、自分に自信が持てない
□自分とは何か? と言われると困ってしまう
□何事に対しても一人でやっていけるという自信が持てない
□他人の行動、感情、生き方が気になり、変えようとコントロールしてしまう傾向がある
□他人のことも自分ごとのように思えてしまう時がある、あるいは相手の問題は自分のせいで起きていると思うことがある


共依存がなくならないのはなぜ?

woman holding mobile phone feeling headache sitting on bed at home
Oscar Wong//Getty Images

共依存関係に陥っている人の話を聞くと、依存者側の方に原因があると感じる人の方が多いのではないでしょうか。

しかし、実は支える側にも、共依存を長引かせている原因があるのです。支える側の人から苦労話を聞かされると、「そんな関係が嫌なら逃げればいい」とか「支える側はなぜやめないの?」と思う人もいるかもしれませんね。しかし、簡単にやめられないことが共依存の難しさなのです。依存される側、つまり支える側のことを心理学では『イネーブラー』と呼びますが、このイネーブラーと呼ばれる人たちは、責任感が強く、優しさに溢れ、困っている人たちを放っておけないといったところがあるので、一般的にはすばらしい人として評価されます。ところが、一見善意のように見えるイネーブラーの人たちの行動が、結果として相手が自分の力で悩みを解決することを放棄するように仕向けてしまうといった危うさを持っています。イネーブラーの人たちの本質は、自分に自信がなく、常に不安といったところがあるので、“誰かから必要とされている自分”といった状況を無意識に欲しています。世話してほしい依存者と、人の役に立って認められたいイネーブラーのニーズが見事一致し、結果として共依存が深まっていくという負のループになっています。

共依存になりたくない……そう思った時にすべき行動とは?

young lady embracing hope and freedom
Oscar Wong//Getty Images

1. 些細なことでも自分で決断してみよう

    例えば、今日の夕食を何にするか、どっちの洗剤にするかなど、日常生活はそんなに大きな出来事でなくても決定しなければいけない出来事がたくさんあります。そういった小さなことでも、誰かに委ねるのではなく、自分で決断することを習慣づけていきましょう。また、もし今すぐに出せる結論ではなかったり、迷いを感じたりする時は「今は決めない」ということを決めるのも良いと思います。どんなに小さな選択でも「自分で決められた」とか「自分のことは自分で決めることができる」といった、自分をコントロールするような経験を持つことが大切なのです。

    2.白黒だけでなく、グレーゾーンを

    「こうでなければいけない」「〇〇であるべき」といった思考(白黒思考、0か100か思考などと言います)を持っていると、何事に対しても「自分一人の力でやるか、あるいは相手に完全に頼るかしないといけない」といった極端な考え方になりやすくなります。「自分の力でやれるけど、時には他人の力も借りよう」などグレーゾーンの考え方を取り入れられるようになると、少し楽に感じられるかもしれません。

    3. ときには自分の主張も大切

      共依存に陥る人は、自分の言いたいことが言えない、NOと言えないなどのコミュニケーションの苦手さを持っていると言われています。自分の気持ちを大切にするために、『アサーション』というコミュニケーションスキルを身につけるのがおすすめ。アサーションとは、相手の気持ちを尊重しながらも、自分の気持ちを率直に伝えるという心理学的な考え方のこと。具体的なスキルとしてよく使われるのが『I(アイ)メッセージ』と言って、主語を“私は”にして相手に伝える方法です。“私”を主語にすることで、自分の気持ちが誤解なく相手に伝わりやすくなるのと、自分の意見や考え、行動の結果は他人のものではなく、自分のものであると認識することができるようになります。そういったプロセスを繰り返すことによって、それまで薄かった相手との境界線が少しずつ厚くなり、健康的な関係を築いていくことに役立ちますよ。

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      南 舞
      ライター

      臨床心理士。岩手県出身。多感な思春期時代に臨床心理学の存在を知り、カウンセラーになることを決意。大学と大学院にて臨床心理学を専攻し、卒業後「臨床心理士」を取得。学生時代に趣味で始めたヨガだったが、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングと近いものを感じ、ヨガ講師になることを決意。現在は臨床心理士としてカウンセリングをする傍ら、ヨガ講師としても活動している。   公式HP: mai-minami.com Instagram: @maiminami831