昨今、「高タンパクな食事を心がけよう」「筋トレしている人はタンパク質を多く摂って」など、タンパク質摂取を促す情報があふれている。しかし、実際のところ、女性が1日に必要なタンパク質ってどれくらいなの? そこで今回は、適切なタンパク質の摂取量、タンパク質不足・過多が引き起こす症状など、タンパク質について徹底的に解説する。

目次】

タンパク質とは?

five macronutrients carbohydrates, proteins, fats, minerals and vitamins
tunaco//Getty Images

タンパク質は、炭水化物・脂質・ミネラル・ビタミンなどの五大栄養素の一つ。肉や魚、大豆など、さまざまな食べ物に含まれているが、体内で合成することができないため、食べ物から摂取する必要がある。

タンパク質は筋肉だけでなく、皮膚や髪、内臓など、人間の体のさまざまなものを作るのに必要な栄養素。さらに、免疫機能や解毒、代謝などに必要な酵素や心の状態に関わるセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質などもタンパク質が原料になっている。

1日に必要なタンパク質量

厚生労働省は、日本人が摂らなくてはいけない栄養素を「日本人の食事摂取基準」で定めている。その基準では、ビタミン、ミネラルだけでなく、タンパク質の量も定められている。

女性(18歳以上)が1日に必要なタンパク質の量は、50g。推定平均摂取量が40gなので、必要量よりも摂取量が下回っている人が多いのがわかる。

対して、男性(18〜65歳)が1日に必要なタンパク質の量は、65g。

女性と男性では、1日に必要なタンパク質量は異なる。

(出典:日本人の食事摂取基準

タンパク質は活動量によって必要量が変わる

とはいえ、人によって運動量も活動量も差がある。

公認管理栄養士のカレン・アンセルによると、「軽い運動を週に4回以上する人は体重×1.2g、ジムで激しい運動を週に4回以上する人は体重×1.6g。体重を減らしたいなら、体重×2~2.2g(週に4回以上運動していることが前提)程度のタンパク質を摂取する必要がある」とのこと。

たとえば、体重50kgの女性が、軽い運動を週に4回以上行うとすると、
50kg×1.2g=60g
という計算になる。

ちなみに、学術誌『FASEB Journal』に掲載された調査によると、タンパク質をいつもの2倍摂っているダイエッターは、推奨される1日の食事量を維持している人に比べて、筋肉量を維持しながら脂肪をより多く落とすことに成功したという結果も出ている。

1日のタンパク質の摂取量は、日頃の運動量とダイエット中か否か、で考えてみて。

タンパク質摂取のポイント

1日の必要量を1食で摂るのは大変。どのようにタンパク質を摂取するのが正解?

「たとえば、朝食にサケなどの焼き魚、昼に刺身定食、夜にステーキなどを選べば簡単に摂れます。卵もアミノ酸バランスがとても良いので、ゆで卵や卵サンドなどをチョイスするのもいいですね。また、1日のどこかでご飯に納豆、大豆の入ったサラダを選べば、植物性タンパク質もフォローできます」と話すのは、管理栄養士の浅野まみこさん。

おやつや、ついつい買ってしまうスイーツも、タンパク質を摂るチャンスだという。

「納豆の入ったお菓子、ゆでたうずらの卵、ゆで卵(鶏卵)、いかの燻製、チーズにナッツやビーフジャーキーなど、選択肢はたくさんあります。コンビニのお酒のおつまみコーナーはタンパク質の宝庫で、侮れないんですよ(笑)」と浅野さん。さらに、毎日買っているコーヒーをカフェラテやソイラテにするなども、“タンパク質貯金”の小さな工夫だとか。

「ただし、食事のときは加工していない肉や魚を選ぶのがポイント。たとえばハンバーグは約半分が脂身なので、100グラムのハンバーグを選んで100グラムの肉を食べたつもりでも、実際に摂っている肉は半分以下。気が付かないうちに脂質を多く摂っていることになります。調理でプラスされていく油も意識しておきたいところ。ハンバーグよりもステーキ、ナゲットよりも普通の唐揚げ、メンチカツよりもロースカツなどを選ぶイメージです」

タンパク質が多く含まれる食べ物

具体的にタンパク質はどんなものに含まれる? そこで、積極的に食べたい、高タンパク・低カロリーな食べ物をご紹介。

鶏の胸肉(皮なし)

chicken chests
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1食分:100g
カロリー:113kcal
タンパク質:24.4g
脂質:1.9g

タラの切り身

grilled halibut with spinach, leeks and pine nuts
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1食分:100g
カロリー:103kcal
タンパク質:17.6g

サーモン

salmon steak with spinach and tomatoes
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1食分:100g
カロリー:270kcal
タンパク質:24.5g
脂質:19.7g

ツナの缶詰(水煮)

tuna
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1食分:1缶
カロリー:96kcal
タンパク質:18.3g
脂質:2.5g

テンペ

close up tempeh with orange slices on a white plate
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1食分:100g
カロリー:180kcal
タンパク質:15.8g
脂質:9g

(出典:文部科学省 食品成分データベース

タンパク質が不足するとどうなる?

タンパク質が不足すると、さまざまな症状を引き起こす。昨今の高タンパク質食ブームで、だいぶタンパク質を摂取する意識は高まった。しかし、タンパク質の摂取量に関してはいろいろな説があり、推奨される摂取量の幅が広い。どのくらいが「適量」で、「足りている」状態か判断しづらいと「The Flexitarian Diet」の著者のドーン・ジャクソン・ブラントナー医師は話す。足りているかどうかは数字だけで判断するのではなく、体のサインを参考にしよう。もし、下記のような症状があったら、タンパク質が足りていない可能性がある。

■甘い物が欲しくなる

タンパク質が足りないときに最初に出る症状がこちら。「甘い物が食べたくなり、なんとなく食べ足りないという気持ちになる」とブラントナー医師は話す。なぜ甘いもの? と思う人がいるかもしれないが、タンパク質の一番大切な働きは血糖値を一定に保つこと。つまり、タンパク質が足りないとグルコースの値が乱降下して、簡単に血糖値を上げるような甘い物を欲するそう。

■髪の毛が抜ける

タンパク質は細胞をつくるために大切な栄養素。「毛胞がしっかりとして強ければ、髪は簡単には抜けなくなります。でも、慢性的に毛根や頭皮への栄養となるタンパク質が足りていないと、だんだん髪も細くなってしまう」とブラントナー医師は話す。もちろん、髪がやせてしまうのは、チロイド障害といったほかの可能性もあるので注意が必要。

■筋肉が弱まる

タンパク質が筋肉をつくるということは誰もが知っているところ。タンパク質が足りていないと、少しずつ筋肉が細くなってしまう。その結果、体が弱くなり、昔できていたエクササイズができなくなる、といったことも起こりうる。

タンパク質量が不足するならプロテインも取り入れよう

exercise strength training protein
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タンパク質は毎日の食事で摂るのがベスト。しかし、食事から毎日しっかり摂り切るのが難しい。その場合は、プロテインを取り入れてみるのも選択肢の一つ。プロテインは一般的に、ホエイプロテイン・ソイ(大豆)プロテイン・カゼインプロテインの3種類を取り入れることが多い。それぞれの違いを解説する。

【ホエイプロテイン】
・牛乳から精製されるプロテインパウダー(牛乳中20%がホエイ)
・吸収が速い、筋肉の合成に有効な必須アミノ酸やBCAAが豊富で体内での利用効率もよい
・ホエイとは乳清のことで、ヨーグルトを例にすると、上澄み液にはホエイが豊富に含まれる

【ソイ(大豆)プロテイン】
・大豆を原料としているプロテイン
・吸収は比較的ゆっくり。代謝をサポートし、血液をサラサラにするアルギニンが豊富
・女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンが豊富

【カゼインプロテイン】
・ホエイと同じく、牛乳から作られるプロテインパウダー(牛乳中80%がカゼイン)
・ゆっくり吸収され、長時間補給可能。運動されている方に有効なアミノ酸、グルタミンが豊富

なかでも、ホエイプロテインは吸収が速いうえに、体内で利用される量も多いことから、運動後や体作りにはおすすめ。ソイプロテインやカゼインプロテインは、穏やかな吸収で持続的な栄養補給が可能。目的や用途に合わせて自分に合ったものを選んでみて。

プロテインを摂るタイミングって?

①朝食時

朝は食事を摂る時間がないという人も多いが、そんなときにプロテインは活躍してくれる。食欲がなくても、寝起きの体は水分と共に栄養も欲している状態。そんな状態を放置して活動を始めるよりも、しっかりと水分と栄養を摂ることで活動レベルは確実にアップする。とくにボディメイクやダイエットにをしている人は、プロテインの中でも吸収の早いホエイプロテインがおすすめ。

しかし、朝はタンパク質だけではなく、エネルギー源である炭水化物も摂取したいところ。たとえば、バナナスムージーにプロテインを追加したり、プロテインだけでなくおにぎりを食べたりと、上手く組み合わせるとバランスが良くなる。

②間食

高糖質(高脂質)・低タンパク質になりがちな間食やおやつは、肥満の原因になるだけでなく、血糖値の急上昇を招き更なる空腹感や眠気を誘う。そこで、間食をプロテインにして、低糖質・高タンパク質に変えよう。 カフェオレ風味などのプロテインは、仕事中のコーヒー代わりにも◎。

③トレーニング前

意外に重要視されていないのがトレーニング前のプロテイン。食事から時間も空き、トレーニングをするには少し空腹を感じてしまうときにも、プロテインはちょうどいい。あまりにも激しい運動前やトレーニング直前は消化器官に負担がかかるので避けるべきだが、通常の筋トレ程度であれば、30分程度時間が空ければOK。

トレーニング前にプロテインを飲んでおくことで、トレーニング後のゴールデンタイムと呼ばれる時間にしっかりと血中アミノ酸濃度を高めておくことができるので、筋たんぱく合成にも効率的。吸収の早いホエイや、吸収が穏やかなカゼイン、ソイをミックスさせておくと、比較的長時間にわたって高いアミノ酸濃度を維持できる。トレーニング後にプロテインが飲めないときにはぜひトライしてみて。

④トレーニング後

今や定番となったトレーニング後の「ゴールデンタイム」。トレーニング後にすぐ食事を摂れるという人は少ないはず。準備や時間の問題はもちろん、激しい運動後にすぐ食事と言われても喉を通らないのは当然。そんなときは、吸収の早いホエイプロテインと炭水化物(糖質)を組み合わせてしっかりと補給しよう。一般的なトレーニング量であれば、20g程度摂れば十分。タンパク質の量よりも、炭水化物と一緒に摂ることを重視しよう。追加でプロテインが飲みたい場合は、3時間程度時間を空けてから飲むほうが効率的。

⑤就寝前

こちらもトレーニング後と同様に「ゴールデンタイム」と呼ばれる時間帯。寝ている間は絶好の回復チャンスなのに、そのタイミングに体に栄養がないのはもったいない。とはいえ、いくら栄養摂取に適した時間だからといって、1日のトータル摂取量やカロリーがオーバーしているのにわざわざ摂る必要はない。

ただし、睡眠時間が長くなる場合や休日前でゆっくりと起きる予定の場合は、その分栄養が摂れない時間も長くなる。そのようなときには、就寝30分前くらいのなるべくギリギリにプロテインを飲もう。ソイやカゼインなどなるべく吸収が緩やかなものを選べるとさらに安心だ。

タンパク質を摂りすぎるとどうなる?

woman eating meat closeup of beautiful female face biting meat
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タンパク質は、摂れば摂るほどいいというわけではない。タンパク質を過剰に摂取すると体に起きる異常をチェックし、当てはまる場合は摂取量を見直して。

1.息が変な臭いになる

炭水化物を必要最低限まで減らすと (超高タンパク質な食生活をしているとこの可能性が高い)、体がケトーシスと呼ばれる状態に入る。そうすると、通常の炭水化物の代わりに脂肪を燃料に使い始める。これはダイエットにはいい話でも、息にとってはそうではない。脂肪を燃やす際、体はケトンという化学物質を生成する。しかしこれが、マニキュアの除光液を飲んだかのような口臭を作り出す。この悪臭は体の内部から湧き起こるものなので、歯磨き、デンタルフロス、デンタルリンスではほとんど効果がない。

2.気分が急に落ち込む

高タンパク質の食事を意識するあまり、炭水化物を食生活から除いてしまう人は多い。しかし、セロトニンの生成を促進するには、炭水化物が必要。セロトニンの生成がすくなると、機嫌が悪くなったり、怒りっぽくなったり、文句を言うようになる。1年間、厳格な低炭水化物ダイエットを行った人は、高炭水化物・高脂質の食生活を送った人々よりも不機嫌度が高いにも関わらず、減らした体重は変わらないことがオーストラリアの研究によって判明した。

3.腎臓の調子が乱れる

タンパク質をたくさん摂ると窒素副産物も一緒に摂り込まれ、腎臓がろ過をする。タンパク質摂取量が正常であれば、窒素は尿と一緒に排出されるので問題ない。しかし、大量のタンパク質が摂取されると、余分な窒素を取り除くために腎臓が普段以上に働かざるを得なくなる。長期的には、これが腎障害を引き起こす原因になる可能性があるという。

4.体重が増える

高タンパク質の食生活は、短期的なダイエットには効果的。しかし、ほかの食べ物を減らさず、卵白とホエイプロテインだけで乗り切ろうとすると、体重は減るどころか増えてしまう。7,000人以上の成人を調査した長期的な研究では、タンパク質を大量に摂取した人々が太りすぎる確率は、タンパク質を控えめに摂取した人々に比べて90%も高いという結果となった。

まとめ

various kinds of vegan protein sources
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タンパク質は人間が生きていくために必要な栄養素。まずは自分に必要なタンパク質の量を知り、どのようすれば必要量を摂取できるか考えてみて。プロテインなどを活用して、毎日しっかり摂れるようにしよう。また、タンパク質は不足しても、摂りすぎても体に良くない。体に異常を感じたら、自分の食生活を見直し、量を調整しよう。

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Kaoru Sawa
ウィメンズヘルス・エディター

美容・ダイエットを中心とした記事を担当。自他共に認める美容マニアで、ハマり症。その気質から、自分が挑戦する取材企画には必ず結果へのコミットにこだわる。男性ライフスタイル誌、女性向けアプリメディアなどを経て、2021年までウィメンズヘルス編集部に在籍。