タブー視されがちな話とはいえ、便についてみんなでもっと話し合おう。

トイレに行くことは、身体の絶対不可欠な機能であるにもかかわらず、多くの人が便に関する話題を避けたがる。でも、排便の頻度や形など、便に関する知識を身に付けておくことは非常に大切。なぜなら便は、今の健康状態について多くのことを教えてくれているから。

ギリシャの名医ヒポクラテスは、「腸がすべての健康の基盤」だと言っていたけれど、まさしくその通り!

腸内細菌のバランスの崩れは、珍しいことではない。実際に全世界の約11%の人が過敏性腸症候群(IBS)を患っており、医療機関を受診しているのはそのうちのわずか30%(つまり、11%という数字よりもはるかに多い可能性がある)。そして、少なくともオーストラリア人の成人の50%が、ガス、腹部膨満感、便秘など、腸の不快な症状を経験しているという。オーストラリア版ウィメンズへルスから詳しくみていこう。

健康な消化=健康な体

腸が全体的な健康にどういった影響を直接与えているかを示す研究は、数多く存在している。

  • 腸内細菌叢の異常やバランスの崩れが、アレルギー、炎症性腸疾患、肥満、糖尿病、がんなどを引き起こすことがわかっている。
  • 微生物叢・腸・脳相関の乱れは、うつ病、不安、過敏性腸症候群と関連付けられている。
  • 食事の変化は、腸内細菌叢を通じて気分や幸福感に影響を与えることが示されている。

自然療法士のローレン・ジェーンによると、体は病気が本格的に現れ始める前に、微かな合図を送っている。その合図とは、疲労からニキビ、不安、便の見た目や頻度の変化まで、さまざまな形で現れているという。

本来、便はどんな形をしているべき?

pattern of white toilet paper rolls on yellow background concept of going to the bathroom, cleaning and pooping and peeing
DBenitostock//Getty Images

「健康な便の形は整っています。滑らかで柔らかく、蛇のような形をしていて、色は黄褐色。少なくとも1日に1回は排便があるのが理想的です。これにより、体内の毒素やコレステロール、不要になった古いホルモンを着実に体外へ排出できたり、健康な腸内細菌叢のコミュニティやバランスを整えるのにも寄与しています」とジェーン。

「これらの微生物は、脳内の化学物質(実際にはセロトニンの90%)と免疫細胞(70-80%が腸に存在している)を生成する重要な役割を担っているんです。ビタミンの産生やインスリン感受性にも影響を与えています。つまり、腸の状態がよくなければ、他の面の健康状態もよくないことは想像がつきやすいでしょう。便に注意を払ってみると、多くのことが学べます。これこそ、病気の初期兆候を見逃さないために大切なことです」

ヒポクラテスの言葉通り、便は健康の基盤。水分や必須脂肪酸が不足していないか、クローン病や憩室炎など、炎症性腸疾患に罹っていないか、食物繊維を十分に摂取できているか、痔になっていないか、甲状腺機能の検査が必要かどうかなど、便から得られる情報のリストは実に膨大な量だという。

トイレに行く際に注意を払うべきこと

teenager sitting on the toilet
Peter Dazeley//Getty Images

ジェーンいわく、次にトイレに行くときは、便の色、形、臭いだけでなく、どのくらいの頻度で排便があるかどうかを気に留めるようにしよう。

通過時間

健康な腸の通過時間は12〜24時間で、排便の回数は1日に3回以下であることが望ましい。排便が頻繁であれば、栄養が十分に吸収されなかったり、感染症や不安、食物不耐症、腸内の炎症が起きている可能性がある。逆に排便が少ない場合や残便感が残る場合は、食物繊維や水分が不足しているか、寄生虫がいる可能性がある。慢性的な便秘は、毒素やホルモンがきちんと排出されなくなり、その結果として生理の問題や頭痛、腹部膨満感が生じることもあるとのこと。

便の理想的な色とされる中褐色を作り出しているのは、私たちの胆汁。

  • 薄い茶色や粘土色の便は、胆汁がうまく生産されていないことを示している。これは、抗下痢薬による副作用、またはセリアック病の症状である可能性がある。
  • 抗生物質の服用後は、緑色の便が出ることがある。もしくは、細菌感染の可能性もあり、食物が大腸を速く通過し過ぎることで起こりやすいそう。または、緑の野菜や食品添加物(食品色素)の摂取が原因かもしれない。
  • 黒色の便が出るときは、最近鉄剤を服用したか、上部消化管での出血が考えられるため、できるだけ早く医師の診察を受ける必要がある。
  • い便は、痔や肛門裂傷などにより、下部消化管で出血が起きている可能性がある。もしくは、単に赤ワインやビーツの摂取が原因かもしれない。
  • 黄色い便や不快な臭いがする脂っぽい便は、脂肪の分解や吸収がうまく機能していないことを示していることが多い。おそらく、胆汁や消化酵素の不足が原因とのこと。もしくは、小腸感染症の兆候かもしれない。
  • オレンジ色の便は、胆管の詰まりを示しているか、制酸剤の服用が原因の可能性がある。

臭い

便が薔薇の香りである必要はないけれど、不快すぎるべきでもない。臭いがきついときは、なにかしらの問題が起きているサインであり、砂糖の摂り過ぎや食物不耐症が原因かもしれない。これは、体が食べものを適切に消化できておらず、発酵が起きていることを示している。つまり、消化酵素が不足しているか、腸内細菌のバランスが崩れているか、または感染症が原因として考えられるそう。

ジェーンは、ブリストル便性状スケールを使って説明してくれた。

タイプ1:木の実のようなコロコロした固い便

タイプ2:ソーセージ状ではあるがゴツゴツした固い便

タイプ1と2は「便秘」を示しており、便が乾燥していたり、硬くて出にくかったり、ウサギのペレットのような形状をしている便を便器の中で見かけたときは、水分摂取量を見直す必要がある。尿の色が透明、または藁色(わら色)になるまで、毎日の水分摂取量を増やしていこう。

タイプ3:表面にひび割れのあるソーセージ状

完全に滑らかな便じゃなくても、これが普段の状態であればあまり心配する必要はない。ただし、便に亀裂がある場合は、脱水状態の度合いや脂肪酸の摂取量を示していることがある。

次は、理想的な便!

タイプ4:ソーセージやヘビのように滑らかで柔らかい

基本的に私たちが望んでいる便はこのタイプ。便の通りがよく、茶色で、排便後はスッキリと出し切れた感覚が得られる。

タイプ5:柔らかい小塊で、形がはっきりしている

タイプ6:小片が混じって周囲がデコボコした泥状の便

タイプ7:全体が水様で固形物がない便

これらが示すのは「下痢」で、消化器系が刺激を受けている可能性があり、カフェイン、食品アレルギー、ヒスタミン過敏症、抗生物質の服用、ウイルスや細菌感染、辛い食べもの、アルコール、慢性炎症性腸疾患によって引き起こされるそう。下痢を治療せずに放置していると、消化管の粘膜に微小な損傷が生じて、炎症、または微量栄養素やマクロ栄養素の吸収不良が起こることもある。

粘液

もう1つ注意が必要なのは、透明な粘液が出ている場合。消化管内膜は、自らを守るために粘液を分泌するため、自然療法医を受診する必要があるとのこと。

水に浮く便

ガスが溜まっている可能性がある。たまに出る分には問題ないけれど、水に浮く便が頻繁に出ていたり、臭いがきつい場合には、検査を受ける必要がある。もしくは、食物繊維の多い食事がガスを発生させているだけかもしれない。

消化器系をリセットする方法は?

ときには、腸を休ませてリセットすることが大切。刺激を和らげ、消化器官を休ませてあげるために必要なことは、幸いなことに、ちょっとした変化を日常に取り入れるだけ。下記の方法をいくつか試してみよう!

  • リンドウ、グローブアーティチョーク、陳皮、タンポポの根茶、カカオ、グレープフルーツなど、苦味のあるメディカルハーブを取り入れる。
  • 満腹シグナルに従う(食べ過ぎはよくない)
  • 健康的な消化管のpHを維持するために、高タンパク質な食品とホールフードでバランスをとる。
  • おなかの調子が悪いときは、冷たい生の食品を避けるようにする。
  • 抗生物質を適切に使用する。
  • 原材料名をチェックし、砂糖、精製された穀物、添加物の摂取を避けるようにする。
  • ケフィアなど(コンブチャのような野生発酵でないもの)、プロバイオティクスと発酵食品/飲料を毎日取り入れる。
  • フラックスシード(亜麻仁)大さじ1、浸水させたチアシード小さじ1、オオバコなど、粘性のある食物繊維を食べる。
  • 彩り豊かな野菜を毎日食べる。
  • そして最後にもっとも重要なこと:それは、ストレスを解消できることに毎日取り組むこと。
     
    ※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

    Text: SCARLETT KEDDIE Translation : Yukie Kawabata
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川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。