朝起きても疲れが残っている日が続いていたり、お昼になると頻繁に眠くなってしまうことはないだろうか? そんなときは、「質の高い睡眠」が十分にとれていない可能性が高く、ただコーヒーなどでカフェインの摂取量を増やせばいいという問題ではないかもしれない。睡眠習慣は、心臓を含む全身の健康をサポートする役割を果たしており、寿命にまで影響を与えているかもしれないのだ。

米国心臓病学会の年次学術集会で2023年2月に発表された新たな研究によると、良い睡眠は寿命を延ばす効果があるそう。また、あらゆる死亡理由のうち約8%の原因が「睡眠パターンの不良」にあり、反対に健康的な睡眠習慣をもつ人は、早世する可能性が少ないとの結果も出ているとのこと。

米国で行われたこの研究では、1997年から2018年の間に行われた対面式の国民健康調査のデータと、2019年12月31日までの国民死亡記録のデータを使用し、17万2321人の睡眠と死亡率の関連性を調査。睡眠に関連する5つの要素を評価し、健康リスクが低下するとされる定義を次のように設定した:

  1. 毎日の睡眠時間:7~8時間
  2. 入眠困難な日:週に2回未満
  3. 中途覚醒:多くて週に2回
  4. 睡眠薬:使用しない
  5. 爽快な目覚め:少なくとも週に5回

上記5つの要素すべてに当てはまった30代の人は、0~1つしか当てはまらなかった人と比較して、平均して男性が約4.7年、女性が約2.4年寿命が長くなると評価。

また、5つ当てはまると答えた人は、0~1つと答えた人と比較して、死亡リスク全体で30%、心血管疾患による死亡リスクは21%、心臓病やがん以外の原因による死亡リスクが40%低いことも判明した。

young african woman sleeping in her bed in the morning
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良い睡眠パターンとは?

良質な眠りをサポートするサービス「Solution Is Sleep」の創設者で、認定医師のアンジェラ・ホリデー・ベル氏によると、良い睡眠パターンは「毎日ほぼ同じ時間に寝て、同じ時間に起きること」だそう。「クロノタイプ、つまり就寝や起床のタイミングは人によって異なりますが、最も重要なのはその時間を一貫して保つことです。これにより概日リズムが整い、毎晩眠りに入りやすくなり、毎朝目覚めやすくなります」

できる限り長時間続けて眠るのが理想的、と述べるのは、オレンジコースト・メディカルセンターのメモリアルケア・心血管研究所の専門医、ユー・ミン・ニイ氏。「人は、1日の約16時間は起きており、約8時間は眠っています。つまり、この睡眠中の8時間のうちに、その倍の時間をかけて行っている日中の活動やストレスを回復させる必要があります。睡眠は非常に重要です」と説明。

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「良い睡眠パターンやルーティンによって、起きている間の集中力が高まり、リフレッシュした気分を得ることができます」と話すのは、ボスウェル・スリープ・センターの認定医師であるデヴィッド・クールマン氏。「健康的な睡眠には、最適な起床および就寝時間や、規則正しい睡眠サイクルに加えて、十分な時間を確保することが重要です。米国睡眠医学会は、毎日7時間以上確保することを推奨しています」

睡眠障害や乱れがないことも大切。ニイ氏は、「しっかり眠れていない場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性も医師に相談してください」と助言。

日中何度も眠くなってしまう場合も、夜間に質の高い睡眠が十分とれていないサインである、とニイ氏は補足。昼寝の頻度の高さは、高血圧や脳卒中のリスクと関連していることも、研究で示されている。

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睡眠が健康におよぼす影響とは?

ホリデー・ベル氏によると、睡眠は健康のあらゆる面に影響するそう。「良質な睡眠がとれないと、体にストレスがかかった状態になり、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されます。この基準値が上がると、炎症を引き起こしたり、血管が脆くなつなど、心臓疾患につながる可能性があります」

さらに、睡眠不足だと活動的ではなくなり、栄養価の高い食事を避ける傾向も強まるため、肥満のリスクも上昇する。また、ホリデー・ベル氏は「免疫系がもっとも調整されるのも夜です。慢性的な寝不足は、感染リスクを高めますし、不安になったり、うつ病にかかる可能性も著しく高まってしまいます」と続ける。

米国心臓病協会(AHA)は2022年、心臓の健康を維持するために必要な7つの指標(禁煙/運動・身体活動/食事/BMI/血糖/コレステロール/血圧)に、新たに「睡眠」を追加。ニイ氏は、こう説明する。「今日では、これを『エッセンシャル8』と呼びます。長年にわたる研究で、睡眠もまた心臓の健康に重要であることを示しています」

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より質の高い睡眠をとるには?

ホリデー・ベル氏によると、より健康的な睡眠環境をつくるための簡単な7つのポイントは次の通り:

  • 毎日同じ就寝時間と起床時間にすることから始めよう。朝起きてすぐに光を浴びるようにすると、概日リズムがさらに整い、目覚めやすくなる。
  • 日中は体を動かすことも、睡眠の質を高める手助けに。
  • 就寝の2時間前には明かりを落としたり、ベッドサイドのランプなど低反射光の照明に切り替えることが大切。これにより、眠りを整えるホルモンである、メラトニンの分泌が自然に促進される。
  • リラックスできて、一貫したベッドタイム・ルーティンを持つことも、眠りへの導入を促進する。自分が望む時間に入眠しやすく、より長時間眠り続けることができるようになる方法だ。
  • マグネシウムなど、睡眠を補助する天然のサプリメントもおすすめ。なお、睡眠サプリなどを飲み始める前に、医師へ相談を。
  • だいたい昼の12時以降はカフェインを避けることも重要。カフェインは、体内で代謝・分解されるのに約5~6時間かかるため、摂取後も長時間にわたって睡眠の質に影響を与える可能性がある。
  • 寝る3~4時間前から、アルコールの摂取を避けよう。アルコールは速やかに代謝され、代謝された後は刺激物となり、断続的で質の低い睡眠を引き起こす可能性がある。
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ニイ氏によると、睡眠の質を低下させる主な要因は、寝る前にテレビやスマートフォンをみること。「光は脳を刺激します。それによって、脳が『まだ寝る時間ではない』と勘違いをしてしまい、それが睡眠の質に影響を与える可能性もあります」と指摘。クールマン氏も、「光を浴びる代わりに、日記をつけたり、読書や瞑想などでリラックスしてみてください」と同意し、寝る30分前からは明るい光や電子デバイスの使用を制限することをおすすめしている。

30分たっても眠れない場合は、いったん起きて温かいシャワーを浴びたり、お風呂に入るのも良い、とクールマン氏は補足。「寝室を暗く涼しく、静かな環境にして、リラックスできるように整えてみてください。それでも睡眠が中断されたり、翌朝リフレッシュできない場合は、医師に相談しましょう」

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睡眠は寿命を延ばす?

「この研究は、質の低い睡眠がどれほど危険であるかを示しています。改めて睡眠を優先し、睡眠時間だけでなく質の高さも、健康に影響することを理解しましょう」と、ホリデー・ベル氏。

ニイ氏も、1日のうち(願わくば)約8時間を睡眠に費やすので、時間をかけて睡眠の改善について考えることが非常に重要、と説明。「良質な睡眠をとることで、少なくとも寿命を5年は延ばすことができる可能性があります」

クールマン氏も次のように述べている。「睡眠の質に悩んでいる場合は、自身が健康的な睡眠をとっているか、見直してみてください。それでもまだ寝つきが悪かったり、眠りが浅く、すっきりとしない場合は、専門医に相談してみてください」

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

From Prevention

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Madeleine Haase

Madeleine, Prevention’s assistant editor, has a history with health writing from her experience as an editorial assistant at WebMD, and from her personal research at university. She graduated from the University of Michigan with a degree in biopsychology, cognition, and neuroscience—and she helps strategize for success across Prevention’s social media platforms. 

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中学生の頃にできたイギリス人のペンフレンドに音楽や文化を紹介されたことをきっかけに、イギリスを中心に海外文化やエンタメに関心を持つようになる。テレビ番組向けの日本語訳字幕や通訳、労務関係の翻訳経験を経て、現在はロイヤルファミリー、海外セレブの記事をメインに翻訳。趣味は観劇と言語学習で、特技はポルトガル語。