「女性のみんな、女性専用のジムがあったら最高じゃない!?」という2020年9月のツイートは52,000回以上リツイートされ、30万以上のいいね!と9千件近いコメントであふれた。そのうちの1人は「もうあるよ!」とコメントしたサマイヤ・ウィリアムズ。彼女のジムを筆頭に、世界では女性専用のジムが数を増やしているらしい。アメリカ版ウィメンズヘルスより詳しく見ていこう。

「ちょうど米メリーランド州に『Her Flex Fitness』という女性専用ジムをオープンしたところ! みんなぜひ、見に来てね!」とウィリアムズが添えた動画には、敷き立ての芝、ウエイトラック、プルアップ、ローイング、スクワットをする女性の姿が映っている。レスポンスの中には、メンバーシップに関する質問ばかりか、マイアミ、ロサンゼルス、ロンドンにも開いてほしいという声まであった。

この手のジムを開くのはウィリアムズの長年の夢だった。でも、彼女が本気になったのは、コロナウイルス感染症のパンデミックが訪れてから。「実は昨年まで別のジムを所有していました」。でも、外出自粛の要請でクラスをオンラインにした途端、女性の参加率が急上昇。もともとセルフケアの機会を探していた女性が「自宅で気兼ねなくワークアウトする機会」を見つけて乗り込んできた、というのがウィリアムズの説(実際、フィットネスレビューサイト『FitRated』の調査でも、女性の71%が「一般的なジムでは気が落ち着かない」と答えている)。2020年5月、共同設立者とのパートナーシップを解消し、そのジムを閉鎖したタイミングで、ウィリアムズは自宅からアウトドア・ワークアウトのクラスを配信するスタイルに切り替えた。夏の暑い日にマスクを付けて画面の向こう側に現れたのは、みんな女性だったそう。

このとき初めてウィリアムズに、女性専用のプログラムを作るだけの理由ができた。女性にとって励みとなる言葉を使い、美しさは強さの中にあるというメッセージを送り続けた。ウエイトリフティングに関する質問に答えるときは、がっしりした女性の体に付きまとう悪いイメージを考慮した。そして間もなくウィリアムズは、この女性コミュニティーを存続させる決意を固め、実店舗用のスペースを借りた。

フィットネス業界の情勢は、ここ数年で急速に変化している。その結果、ルームメイト、家族、オンラインの友達と女性だけのワークアウト空間を作るのが、これまでになく簡単になってきた。男性にウエイトラックを占領されたり、変な色目を使われてイヤな気分になったりする時代は去った。オンラインのジムには、おせっかいなアドバイスをしてくる人もいない。だから自然と、似たような目標を持つ人同士のつながりや、責任感やモチベーションを養うネットワークが生まれる。

また、前例のない時代を生きる中で、パンデミック前のフィットネス環境を振り返り、それが果たして自分たちのニーズを満たしていたか、真剣に考える女性が増えた。「パンデミックを経て私たちは、お金と時間の使い方をじっくり考えるようになりました。ジムも例外ではありません」と話す米ニュースクール大学の歴史学准教授で、アメリカのフィットネス文化に関する自著『Fit Nation』の出版を控えるナタリア・ペテルジラ博士は、その変化を“除外食”に例える。除外食では、アレルゲンとなり得る食べ物を排除して、安全が確認された食べ物だけを食生活に戻していく。これからは、エクササイズを行う場所、相手、方法も、似たようなプロセスを経て決められる。

フィットネス業界は絶え間なく変化する。今後、女性が心から楽しめるフィットネスとは、一体どんなものだろう。

フィジカル面に収まらない

女性専用ジムのコンセプトは1930年代に生まれ、1970年代のエアロビクスで一世を風靡した。でも、“フィット”の定義と共に、ジムのあるべき姿も変わった。「昔のジムは因習的な“女性らしさ”をベースに作られていました」とペテルジラ博士。「女性は何でもピンク色、軽いウエイトだけ使い、おしとやかに振る舞って、スリムな体をキープするべきという型にはまった考え方です」。でも、最近の起業家たちが目指すのは、体の見た目ではなく能力の向上に焦点を当てたサンクチュアリー。そして何より重要なのは、自分の潜在能力を引き出して、自信を持つこと。

「いまのビジネスを始めてすぐに気付きましたが、身体能力を高めるだけで、女性が自信に満ちあふれることはありません」と話すのは、女性専用ワークアウトスタジオ『Jane DO』共同設立者のジェイシー・ランブロス。このスタジオでは、身体面だけでなく、人生のありとあらゆる側面で現時点より成長するのが最終目標。だからラブロスと共同設立者のダニエル・デアンジェロは、専門家チームを招いて、セックス、メンタルヘルス、人間関係に関する質問を受け付ける。

仲間意識が養われる

ペテルジラ博士によると、「男性の目を気にすることなく体を動かせる」のも、女性専用ジムの魅力の1つ。TikTokやツイッターでは、女性だけの空間の心地よさが頻繁に語られる。しつこく言い寄られることも、女性であることを理由に見下されることもないし、自分が中心でいられる。つまり、女性専門ジムに10年以上通うスポーツ心理学者のマーラ・ズッカー博士が言うように、男性ではなく女性の体がスタンダードの世界にいられる。

ズッカー博士いわく女性専用ジムは、従来のジムから逃げてきた人にとっての避難所であり、ベースにあるのが競争ではなくつながりなので社交的。自分の体が世の中の基準に満たないと感じている人も、自分のジェンダーが定まっていない人も、LGBTQコミュニティーに属する人も、宗教的な理由から男性のそばでワークアウトしたくない人も受け入れられる。

女性専用ジム『Flex Into Fitness』に通うアマンダ・ラーソンも、「女性専用ジムには多方面から、さまざまな立場の女性が集います」と語る。ラーソン自身の成功にもチームメイトの成功にも、そこで得られるサポートが欠かせない。

新しいジムの未来図

米ホフストラ大学の心理学准教授、サラ・ノヴァク博士によると、エクササイズをする場所に女性がこだわるようになり、それで自分の人生が豊かになるかを真剣に考えるようになったいま、これからの(そして既存の)ジムは、彼女たちの要求に答えないと存続不可能。

自分を女性と認識する人しかいないローイング、ボクシング、クロスフィットのジムを想像してみて。「そこでなら、ワークアウトの種類に関する選択肢の幅も広がります」とズッカー博士。しかも、その空間は女性が使うことを念頭に作られている。

ノヴァク博士によると、男性と女性が同時に使える運動施設も例外ではなく、よりインクルーシブな環境づくりや価値観の変更を求められるはず。「これからはジムも、さまざまなタイプの人を魅了してキープする方法を真剣に考えなければなりません」

開業から7カ月でユーザーが100人から450人に増えたため、ウィリアムズは、いまより広いスペースを探すことになったそう。ユーザーにとってウィリアムズのジムは“セーフスペース”。そこに加わりたいとやってくる女性の数は、当然ながら増えている。

いつでも、どこでもエンパワーメント

近くに女性専用ジムがないときは、自分がワクワクする場所を自分で作っちゃえばいい。

グループトレーニングに参加する

大好きなトレーナーがいるのなら、友達と一緒に資金をためて、プライベートレッスンに来てもらおう。女性専用ボクシングジム『Women’s World of Boxing』設立者のリース・スコットは、ペンシルバニアの女性たちからボクシングの動きを教えてほしいと頼まれ、ニューヨークからルンルンで車を走らせたそう。

いまのジムにレベルアップしてもらう

「ボクシングでは、相手に隙がないときは隙を作らせ、その隙を逃さないのが鉄則です」とスコット。パンデミックのダメージから各地のジムが必死に立ち直ろうとしているいまなら、ユーザーの声が聞き入れられる可能性は高い。いまのジムでは女性の立場が低いと感じているなら、託児所の設置や女性トレーナーの増員といった具体的な変化を求めてみよう。

SNSを活用する

フェイスブックで地元のグループを検索すれば、フィットネス系のグループが1つは出てくる。「近所の〇〇公園でワークアウトしませんか?」という友好的な投稿も珍しくない。何も見つからないときは自分が発起人になって、アウトドア・ズンバの会やランニング愛好会を企画しよう。

※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Aryelle Siclait Translation: Ai Igamoto