「ダイエットでランニングを始めたけど、思ったより痩せない」というのはよく聞く話。有酸素運動は効率よくエネルギー消費してくれるはずなのになぜ? それは身体のある機能が働いているから。しかも頑張れば頑張るほど、どんどん痩せにくい身体を作ってしまうことに……。そんな悲劇を回避するためにも、身体の仕組みを正しく知っておこう!

有酸素運動
Bruce Ayres//Getty Images

【目次】

1.有酸素運動はダイエットに向かない?

「確かに消費エネルギーを稼ぎ体重を落とす、という点のみでいえば、有酸素運動は最強です。それでもダイエットには向かないというのは、人間の体には『ホメオスタシス(恒常性の維持)』という“今の状態を保って生命を維持するための機能”があるためです。

1日2000kcalの食事で体重を維持している人が、ダイエットのために毎日1時間走ったとしましょう。摂取カロリーは変わらず、消費エネルギーは増えるわけですから、最初は体重がスルスル落ちていきます。でもそのままどんどん痩せていったら、いつか体を壊してしまいますよね。そのため体は“毎日2000kcalで、かつ1時間走らなければいけなくなった”状況に合わせて体を省エネモードに切り替えてしまうのです」


2.運動量を増やしても痩せない「負のループ」に

「走り始めて数週間もすれば、ホメオスタシスが機能することでそれまで減っていた体重はピタッと止まってしまいます。ここで大抵の人は走る時間を増やしますが、たとえ増やしてもまたすぐにホメオスタシスが機能するので、さらに省エネモードに。そうやって繰り返すうちにどんどんエネルギー代謝の悪い体になってしまうのです。

また体が省エネモードになっていると、たまにたくさん食べた時に、その余剰カロリーをすべて脂肪として蓄えてしまうというデメリットも。有酸素運動をメインにしたダイエットは、痩せるどころか、代謝が悪く太りやすい体を作ってしまうのです」


3.そもそもどこからが有酸素運動?

ランニング、ジョギング、水泳、サイクリングなどのように、負荷が低く長時間続けられるものは全て有酸素運動だと思って下さい。よく「週末はジムで3時間頑張ってる」などという人がいますが、実はこれが落とし穴。筋トレのメニューをこなしているんだから大丈夫でしょ? と思うかもしれませんが、何時間も続けられるということは、負荷が低すぎるということ。もはや有酸素運動になってしまっているということです。そういう人は実際、何時間も頑張っているわりには、体はそこまで変化していないのではないでしょうか」


4.有酸素運動の中でも一番危険なのは……?!

水泳は全身運動でかつ、膝など関節への負担も少ない優秀なスポーツですが、一つだけ難点が。それは運動後の空腹感がとくに強いこと。サイクリングなどに比べてカロリー消費は大きいものの、運動後にドカ食いをしやすいのでトータルでみると不利、という研究結果もあるんです。私も自分のクライアントさんには、どうしても水泳したい時は、運動後の食欲増加に注意するよう伝えています」


5.ウォーキング&期間限定ならやってもOK

「有酸素運動の中でも、ウォーキングだけはOK。歩く時の足裏からの衝撃は骨を強くするので、女性にとっては将来の骨粗しょう症を予防する意味でもいいですね。特に坂道や階段の歩行が有効です。さらに腰痛にもいいので、デスクワークが多い人にもおすすめです。あくまで痩せる手段として有酸素運動を選ぶ事がベストではないということなんです。

また有酸素運動自体も、例えば“2週間後に大事な用事があるから、それまでにもう少し絞りたい!”というような場合にはいいと思います。ホメオスタシスが機能し始める前に止めること、あくまで短期決戦が条件ですね」


6.「好きなスポーツ」と「ダイエット」は切り離して

「もちろん、ランニングも水泳も自分の趣味として楽しむのはいいと思います。好きなスポーツをやることでホルモンが分泌されるなどのメリットもありますしね。

ただ好きなスポーツであるほど、“あともう少し頑張ろう”というに自分を追い込んでしまいやすいし、多少つらくても続けられますよね。それこそがホメオスタシスを機能させ、代謝の悪い体を作ってしまう要因に。本来の目的からズレやすいという意味で、趣味の運動とダイエットは繋げるべきではない、ということなんです」

頑張ってるのに痩せない、むなしいダイエットは今日でおしまい。体の仕組みを正しく理解して、もっと効率の良いダイエットを目指そう!

これはpollの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

Text: Megumi Yamazaki


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杉崎宏哉
NESTA公認トレーナー フィジーク選手

40歳で重度の腰痛を患い、手術を迫られたことをきっかけに体の仕組みについて勉強を始める。結果、腰痛は手術なしで見事快癒。同じ悩みを持つ人を助けたいとの思いから、バー経営と二足のわらじでフィットネストレーナーを目指す。現在YouTubeチャンネルでは「ネバトレフィットネス」を配信中。また現役フィジーク選手としても活躍、2019年度は全日本でカテゴリー7位、東日本2位。モットーは「Never too late(遅過ぎることはない)」。