最近のポップカルチャーは、スポーツシーンと切っても切れない関係のよう。たとえばテイラー・スウィフト。NFL（ナショナル・フットボール・リーグ）のカンザスシティ・チーフスの試合を観戦した際に、チームカラーをファッションに取り入れたコーディネートが話題となった。
NFL公式ジャージやギアなどを販売するファナティクス社の担当者によると、テイラーとの交際が噂されているトラビス・ケルシーのウェアの売上は400%近く急増したそう。（米メディア「NPR」より）
ファッションの世界でも、スポーツジャージがランウェイやストリートスタイルのトレンドを席巻している。
ジャージが旬のアイテムになっている理由のひとつは、ワークアウトスタイルにモードなアイテムを組み合わせた“アスレジャースタイル”の定番トレンドから、実際の“スポーツウェア”を着こなすスタイルへとシフトしていることと関係がありそう。
さらに、テニスやゴルフ、スキーだけでなく、サッカーからF1レースまで、あらゆるスポーツがファッション性を求めるようになったこと、そして2024年のパリオリンピックが近づいていることも後押ししているようだ。
ジャージをサッと着こなすことで、最先端の流行を取り入れるだけでなく、トレンドをわかっている人だと示すこともできる。スーツにスニーカーを合わせたり、ブレザーにスポーツブラを合わせてみることで、本気でスポーツにハマっていないとしても、スポーティな印象を残すことが可能。
スポーツジャージは、キム・カーダシアンが90年代のASローマのユニフォームなどを着用したことで人気に火がついたといわれている。80～90年代のイギリスのサッカーファンを彷彿とさせる“ブロークコア”のファッションスタイルや、“ヨーロッパコア”と呼ばれるバカンススタイルを融合したルックが話題となった。
また、TikTokをきっかけに人気セレブの仲間入りを果たしたアディソン・レイは、サッカーブラジル代表の明るいイエローのユニフォームを着用。いっぽう、ヘイリー・ビーバーはオーバーサイズの「ダイム」の「Numero 50 Jersey」をワンピースのように1枚でコーディネート。
2023年10月頭のNFLのマイアミ・ドルフィンズの試合では、アリックス・アールがユニフォームのフロントをタテ真っ二つに切り、多くのTikTokerが彼女の真似をするほど話題に。
ジュリア・フォックスは「ウィリー チャバリア」のシアー素材のジャージとスポーティなパンツを合わせた姿が、ニューヨークの2023-24年秋冬コレクション会場で目撃されている。
もちろん、忘れてはならないリアーナも、長年にわたりジャージをハイレベルな着こなしに昇華させていることで有名だ。
NFLのアナウンサーたちの推測では、テイラーや彼女のファンたちが必ずしもアメフトのルールを知っているとは限らないようだが、それでもスタジアムには大勢の若い女性ファンが集まっている。
テイラー自身も以前、NFLの他チーム（フィラデルフィア・イーグルス）のスウェットを着ていたことがあり、昔ながらのカンザスシティファンということではなさそう……？
それでもスポーツジャージはトレンドとしての存在感を発揮している。ニューヨークコレクションのゲストの多くも、ジャージをハイエンドなアイテムやアクセサリーと組み合わせたルックを披露。ファッションセンスをアピールしつつも、肩の力の抜けたコーディネートが多く見られた。
また「コシェ」「マーティン・ローズ」「オフ-ホワイト」などのブランドは、2024年春夏コレクションのショーでジャージを取り入れている。
いっぽう、パリ装飾芸術美術館では現在、「モードとスポーツ」をテーマにした展示会が開かれている。ここでは、現在は指導者として活躍する元サッカー選手のジネディーヌ・ジダンが、1998年のW杯でフランスを優勝に導いた際に着ていたジャージなども展示されており、このスポーツ礼賛トレンドはもうしばらく続きそうな予感だ。
From ELLE US
Véronique Hyland is ELLE’s Fashion Features Director and the author of the book Dress Code, which was selected as one of The New Yorker's Best Books of the Year. Her writing has previously appeared in The New York Times Magazine, The New Yorker, W, New York magazine, Harper’s Bazaar, and Condé Nast Traveler.
大学卒業後、広告代理店や出版社での勤務を経て渡英。現地のメディア関連会社で勤務した後、アフリカ6カ国を陸路で縦断。帰国後はデザイン／カルチャー雑誌『+81』の編集部に所属し、出産を機にフリーへ転身。一男一女を育てながら、ファッション、デザイン、アート、旅行などの分野で翻訳、執筆を行っている。愛知県東海市出身。
