ずっと健康的だった食生活が何かの事情で急に乱れた？ 残念ながら、その影響は非常に大きい。
2017年の研究結果は、たった1日食べすぎただけで血糖値に大きな影響が出ることを示している。しかも、これはフィットで健康な若者にも言えること。
油っこい物や甘い物ばかり食べていると、血糖値が基準値以上に高くなるのは周知の事実。そして、血糖値の上昇はインスリン抵抗性、2型糖尿病、心疾患のリスクを高めることが分かった。詳しく見ていこう。
1日だけ食べすぎてしまった場合
英ラフバラー大学の研究チームは、一時的な食べすぎが血糖値に与える影響を調査した。その結果、高脂質の食べ物をたった1日食べすぎただけで血糖値とインスリン値が上昇する、つまり、糖を効率的に処理する体の能力が低下することが分かった。
「高血糖は体に害を及ぼします」と話すのは、この研究論文の上席著者であるカール・ハルストン博士。「また、膵臓によるインスリンの過剰分泌が続くと、膵臓が機能障害に陥って、必要なときにインスリンを分泌できなくなってしまいます（これが2型糖尿病）。だから私たちは食べる物に気を配り、食事内容が健康に与える影響を意識する必要があるのです」
この研究では、若くて健康な成人15名がソーセージ、ベーコン、目玉焼き、チーズ、ビーフバーガー、チーズケーキなどの高脂質の食品を摂取してから血糖値の検査を受けた。
この15名はみな運動量の多い健康な非喫煙者で、心疾患や糖尿病の既往歴が一切なかった。にもかかわらず、このような結果が出たというのは興味深い。というのも、こういうプロフィール（運動量の多い健康な非喫煙者）であれば、ちょっとくらい不健康な物を食べても大丈夫と思われることが多いから。
博士課程の一環でこの研究を行ったシオン・パリーは「私たちの実験結果は、高脂質の食べ物を1日食べすぎるだけで、健康な若者の全身のインスリン感受性が低下することを示しています。過食症の人や、クリスマスから年末年始にかけて、あるいはお祝いの席で食べすぎてしまう人にとっては重要な意味があるでしょう」
でも、パリーによると、今回の食事内容のどの部分がいけなかったのかを特定するには、さらなる研究が必要になる。また、食べすぎた日の影響がどのくらい続くのかも現段階では分かっていない。
5日ほど食べすぎてしまった場合
2019年、米国の研究チームは、健康な若い男性たちが5日間連続で不健康な食べ物を過剰に摂取した場合（私たちがクリスマスや年末年始にする感じ）と、慢性的な過食が28日間続いた場合の影響を調査した。参加者に出された食事は高糖質で、チョコレート、ミールリプレイスメント（ダイエットドリンク）、チップスなどで1日の摂取カロリーを1000kcalほど増やしてあった。
まずは短期間の実験の結果から。5日間で参加者の体重や体脂肪が大幅に増えることはなかったけれど、内臓脂肪（内臓の周りに蓄積する脂肪）は15%増加した。内臓脂肪はさまざまな疾患のリスク因子。なお、参加者の血糖値は5日間を通じて安定しており、インスリン値は正常なままだった。
28日も食べすぎが続いた場合
28日間の実験を終えたあとでも男性たちの血糖値は正常な範囲内に収まっていたけれど、食後の血糖値とインスリン値は一時的に上昇し、全身の体脂肪と内臓脂肪が増加していた。内臓脂肪の増加率は（5日間の実験と同じ）15%にとどまっていたけれど、裏を返せば5日間の過食の影響が28日の過食と同じだけ大きかったことになる。
内臓脂肪
内臓脂肪は内臓を取り囲むように蓄積しており、これが増えると心臓発作、心疾患、2型糖尿病、高血圧、脳卒中、乳がん、大腸がん、アルツハイマー病のリスクが高くなる。
前述の実験に参加した男性たちは若い・フィット・健康の三拍子が揃っていたので、食生活をもとに戻せば実験で増えた分の内臓脂肪も自然と減る可能性が高い（このあたりは今後の研究で裏付けが必要）。逆に高齢者や運動量が少ない人は、たぶん回復にかかる時間が長くなる。クリスマスや年末年始の一時的な食べすぎには体も対処できるかもしれないけれど、数日おきに暴飲暴食を繰り返せば、私たちの目に見えないところ（内臓）で長期的な影響が出る可能性もあることを覚えておいて。
Text: Medically reviewed by Dr Louise Wiseman MBBS, BSc (Hons), DRCOG, MRCGP and words by Natalie Healey Translation: Ai Igamoto
ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。
