唇の皮がやたらとむける10の理由
その原因を皮膚科専門医に聞いた!
唇が極度に乾く原因は、唇をなめる癖や塩気のある食べ物といった平凡なものから、日焼け、アレルギー反応、皮膚がんといった深刻なものまで実にさまざま。
米国皮膚病学会特別会員のドリス・デイ医学博士とアダム・フリードマン医学博士によると、唇の生物学的な構成が原因で唇の皮がむけてしまうこともあるんだとか。
唇の皮がむける理由は無数にあるので、ありきたりな症状と深刻な症状をうまく見分けることが大切。少々のリップクリームと水分補給だけで治るケースと、医師の診察を受けるべきケースをデイ博士とフリードマン博士が教えてくれた。
今回はこの内容をイギリス版ウィメンズヘルスからご紹介。
唇の皮がやたらとむけるのはなぜ?
唇はもともと乾いているものなので、その皮がむけたって大抵は心配無用。デイ博士によると、唇には皮脂腺がないため、水分を閉じ込めておくのが大変(だから唇にはニキビができない)。皮脂腺がないということは、唇が表皮を守る自然な保湿成分を分泌しないということになる。
それどころか、唇の大部分には、他の部位の皮膚にあるような角質層(表皮)がない。「表皮は皮膚にとっての鎧(よろい)です」とフリードマン博士。「脂質、タンパク質、皮膚細胞を使って複雑に編まれたバリアです」。このバリアには、皮膚を乾燥から守るだけでなく、肌本来のUV保護機能としての役割もある。「表皮にはSPF5くらいのUV保護機能がありますよ」
だから、唇の皮がむけるのは病気のせいだと思い込むのはまだ早い。もともと唇は他の部位の皮膚より敏感だし、乾燥や皮むけは、お気に入りのリップクリームを数回塗れば治まるはず。
とはいえ、食生活や何らかの疾患が原因で唇の皮がむけることもある。ここからは、その理由をひとつずつ見ていこう。
1.塩気のある物や辛い物を食べている
プレッツェルやチップスが大好物なら、それが原因で唇の皮がむけていることは考えられる。デイ博士が言うように、塩気のある食べ物(とくに外側に塩がたっぷり付いていて、食べると塩が唇に付着する物)は、間違いなく唇のコンディションに影響を与える。「塩には保水作用があるので、唇から水分を奪い、乾燥させてしまいます」と話すデイ博士によれば、スパイシーなスナックも皮膚の炎症や水分の喪失を招くそう。
治療法:塩辛い食べ物からしばらく手を引き、パラフィンベースのリップバームで唇を潤して。
2.唇をなめすぎている
フリードマン博士によると、カサカサの唇に絶対してはいけないのがコレ。「唾液には、脂質、タンパク質、糖質を分解して消化するための酵素が含まれています。私たちの唇は、まさにその3つからできているので、唇をなめると、文字通り唇を“消化する”ことになりますよ」
治療法:リップクリームを持ち歩き、唇をなめたくなったらサッとひと塗り。
3.唇が日焼けした
前述のとおり、唇にはUV保護機能付きの表皮がないので、SPFリップクリームを塗らずに外出すると、たぶん唇の皮がむけてくる。「日光によって皮膚の水分が蒸発するので、もともと乾燥気味だった皮膚がもっと乾燥してきます」とデイ博士。しかも、日焼けをすると、炎症を起こした皮膚細胞がターンオーバーで自分を修復しようとするため、唇の皮がむけやすくなる。
治療法:一般的な日焼けの治療法(アロエや抗炎症薬)は、カサカサの唇にも使える。
4.薬を服用している
薬の中には、いとも簡単に唇の皮むけを引き起こすものがある。フリードマン博士によると、これはニキビ治療薬を使っている患者さんによくある悩み。「アキュテイン(日本ではイソトレチノインとも呼ばれる)を服用中の患者さんには、唇の乾燥が最大の副作用だと伝えています。友達に『一体何が入っているの?』と聞かれるくらい頻繁にリップクリームを塗った方がいいでしょう」
治療法:服用中の薬で唇が乾燥することはあるか、医師に確認してみよう。答えがイエスで、その薬をすぐにやめられない場合には、フリードマン博士のアドバイスに従って、保湿力の高いリップクリームを頻繁に使うこと。唇の皮むけが悪化するのは、そのリップクリームの成分に対するアレルギー反応かもしれないので、病院で検査を受けて。
5.酵母菌が増殖しすぎている
受け口の人や睡眠中によだれが出る人は、口の中で酵母菌が増殖しやすい(その結果、口周辺がカンジダ症になりやすい)。デイ博士いわく口腔のカンジダ症は、周辺の皮膚を乾燥させる。そのせいで口角が少し裂けることも。
治療法:他の部位のカンジダ症と同様、皮膚科で抗真菌薬を処方してもらうのが一番確実。
6.光線角化症である
フリードマン博士によると、光線角化症は、紫外線を浴び続けたせいで皮膚が自己修復できなくなる病気。高齢者に比較的多く見られる。
長期的な紫外線ダメージと炎症は、唇を皮膚がんにしてしまう。「乾燥して裂けた部位は皮膚がんになりやすく、高齢者の下唇には扁平(へんぺい)上皮がんが頻繁に見受けられます」とフリードマン博士は続ける。光線角化症の症状は、皮膚(通常は下唇)の乾燥とうろこ状の斑。
治療法:光線角化症には、免疫反応を引き起こすため、またはダメージを受けた皮膚細胞を殺すための局所放射線治療や光線力学的療法が用いられる。でも、まずは皮膚生検で光線角化症との診断を受けるのが先。
7.ビタミンが不足している
「ビタミンB不足は、唇の乾燥、ひび割れ、炎症、赤みを引き起こすことがあります」とフリードマン博士。これには通常、口周辺の発疹が伴う。
治療法:病院で血液検査を受ければ、どの種類のビタミンBが不足しているかが分かる。それに応じて必要なサプリメントの処方(または食事指導)を受けて。
8.アレルギー反応か接触皮膚炎のせい
デイ博士によると、アレルギー反応は唇の皮むけだけでなく、唇周辺の赤みや腫れも引き起こす。この場合は、唇がうろこ状になるというよりかゆくなるのが特徴で、原因は化粧品、スキンケア用品、歯磨き粉などに含まれる成分。「ケイ皮酸やシナモンは歯磨き粉に含まれる一般的なアレルゲンで、唇をヒリヒリさせることがあります」とフリードマン博士。
一方の接触皮膚炎は、金属製のリテーナーやインプラントに唇が擦れることで生じる。フリードマン博士いわく金属製や複合素材のインプラントは、慢性的な唇の皮むけを引き起こすことがある。
治療法:どちらの場合も、通常はステロイドクリームか飲み薬で対処可能。
9.扁平苔癬(へんぺいたいせん)のせい
扁平苔癬は、体に紫色のかゆいブツブツができる炎症性皮膚疾患。「でも、これが唇に現れることもあります」とフリードマン博士。その場合には、唇が紫または茶色がかったひび割れを起こす。
治療法:処方された抗炎症薬かステロイドクリームを使えば治る。
10.腫瘍随伴性天疱瘡(てんぽうそう)のせい
フリードマン博士によると、“超”レアな腫瘍随伴性天疱瘡は、「がんにひもづく自己免疫性水疱形成疾患」。発疹の形で現れることもあるけれど、この疾患の特徴的な症状は、びらん性口腔疾患。よって唇に水疱ができた場合は、すぐ医師に相談を。唇が裂けて血が出たり、口の周りに痛み、赤み、腫れが生じたりするのも、腫瘍随伴性天疱瘡の症状。
治療法:腫瘍随伴性天疱瘡と診断されると、皮膚病変や水疱を治すステロイドや抗生物質のクリームが処方される。悪性腫瘍がある場合には、医師が必要な治療について説明してくれるはず。
皮むけの原因がマイナーな場合には?
唇の皮むけが軽い日焼けなどのマイナーな理由で起きている場合には、唇のバリアを修復し、保湿することが大切。フリードマン博士の話では、唇を唾液ではなく水でぬらし、こってりしたアイテムでカバーすると治りが早い。「私は小さな缶に入ったパラフィンのリップバームを持ち歩いています。必要なだけすくうことができますし、効果テキメンですから」
それ以外でオススメなのは、日焼け止め入りのリップバームと香り付きじゃないリップバーム。フリードマン博士が言うように、刺激物やアレルゲンを唇に乗せるのはできるだけ避けること。
リップクリームは、どのくらい頻繁に塗るべき?
フリードマン博士によると、日中は「唇をなめたい」「皮をむきたい」と思うたびに塗ればいい。夜は寝る前に、こってりしたリップバームを使ってみて。口で息をする人や口を開けたまま寝る人は、そうすることが特に重要。「口から空気が出たり入ったりすると唇が乾きます」とフリードマン博士。「睡眠中の体は多くの水分を失いますしね」。リップバームは寝る前に数回塗れば十分。ベッドの横に加湿器を置き、寝室の湿度を高めるのも◎。
リップスクラブは使うべき?
最近は唇のピーリングやブラッシングがはやっているけれど、その必要はまったくない。デイ博士も「唇を乾燥させるだけですよ」と注意を促す。唇には毛穴がないので、ピーリングをしても意味がない。それよりも保湿力の高いリップバームを塗った方が効果的。
※この記事は当初、アメリカ版ウィメンズヘルスに掲載されました。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Alexis Jones Translation: Ai Igamoto
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