第二の脳といわれる腸が気分を調節するホルモンのセロトニンを分泌することや、サウンドバスやクジラの鳴き声にリラクゼーション効果があることは知っていても、香りにパワーがあることまでは知らない人も多いはず。

いい香りに囲まれると日常から一時的に解放される。張り詰めた神経を解きほぐすには、ピノノワールの芳醇な香りやキャンドルの甘い香りで十分かもしれないけれど、アフターコロナの世界では、もう少しなにかしないとストレスが減ってくれない。

そこで神経科学者たちは、香りと感情と記憶のつながりを証明した過去数十年分のエビデンスを足場にして、脳内化学物質を詳しく分析。あなたの気分を魔法のようによくしてくれる香りのコンビネーションの特定に奮闘している。

このような香りを放つ“機能性フレグランス”は、ポジティブな感情を増幅させて、リラクゼーションを促すことで私たちの気分を改善するそう。最近では、更年期の症状の改善を目的として使われることもある。イギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。

機能性フレグランスとは?

平たくいえば、特定の気分を促すために作られたフレグランス。例えば、穏やかな気分、セクシーな気分、パワフルな気分、リラックスした気分、ハッピーな気分など。

機能性フレグランスの人気に火を付けたのは、調香師のヴェロニク・ガバイ。ヴェロニカは同名の香水メーカーから3種類の機能性フレグランスを発売した。「私はずっと、天然の成分で人と自然をつなぐ香水を作ってきました。でも、パンデミックの到来で、私には美しい香りだけでなく、癒し効果があるような天然成分を探す義務があると思ったんです」

機能性フレグランスの科学的根拠は?

理論上は素晴らしいアイテムに思えるけれど、その効果を裏付けるエビデンスはあるのだろうか? 幸いにも答えはイエスで、そのようなエビデンスは続々と増えている。

最新の調査結果によると、本当にストレス解消効果が高いフレグランスはクリスマス、具体的にはバニラとトンカ豆と生姜を足して割ったような香りがするらしい。これは、カシミアのブランケットや温かいハグ、甘いスパイスココアと同じくらい幸せな香り。

化学品メーカー『シムライズ』が行った同調査では、20~66歳の白人のボランティア78名がフレグランスをスプレーしたフェイスマスクを15日間着用した。

その結果、バニラ、トンカ豆、生姜を混ぜた“活性”フレグランスの香りを嗅いだ参加者は、ポジティブな感情が強まったと報告。また、この人たちはストレスやニュートラルな感じのするイメージよりも、ウェルビーイングを象徴するイメージを選ぶ確率が高かった。

しかも、このような影響は無意識の脳活動にも反映される。調査チームがアイトラッキング・ソフトウェアで参加者の視線を追跡したところ、活性フレグランスを使った人は、ニュートラルなフレグランスやプラセボのアルコールスプレーを使った人に比べて、ウェルビーイングのイメージを見ている時間が長かった。

香料メーカー『ジボダン』のセンター・オブ・エクセレンスに所属するルーシー・アキニイによると、バニラとトンカ豆がリラクゼーションを促進し、生姜が気力や体力の回復に役立つことは同社の過去の研究で確認済み。「ストレス解消とは、リラクゼーションやマインドフルネスという経路を通じてネガティブな感情を軽減すること。バニラ、トンカ豆、生姜といったフレグランスの成分は、このような経路に作用してポジティブな気分をもたらします。それでストレスが和らぐ可能性もありますね」

また別の調査では、機能性フレグランスが中年女性の更年期の症状を緩和することも分かった。とくにミモザは、複数のメカニズムを介して抗不安作用、抗うつ作用、記憶力強化作用を発揮することが判明。これが理由でフレグランスブランド『Adel』は、ミモザ配合の新商品を発売した。

さらに『ジボダン』は、フレグランスの相互作用に関する研究を進めている。「特許を取得したAI技術の活用により、色、感情、フレグランスは相互に強く作用することが分かりました」とアキニイ。この発見は、今後のフレグランスの開発やパッケージにも影響を与えそう。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Perdita Nouril And Becki Murray Translation: Ai Igamoto

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Perdita Nouril
Beauty Editor

Perdita Nouril is the Beauty Editor for Women’s Health UK. She has worked in the beauty industry for 15 years since graduating from the University of Nottingham. Adept at exploring the colossal world of beauty, she loves to scratch beneath the surface to debunk the myths, decode the science and challenge traditional notions of beauty. You can always find her preaching sermons on the power of a red lip, extolling the virtues of a decent serum and championing the very best female beauty founders.  
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