ダイエットで頼りがちなサプリメント。

食事の大切さを実感していても、色々なサプリメントの効果・効能に目を奪われるのは仕方ないことかもしれない。

「サプリメントはダイエタリーサプリメント(dietary supplements)の略で、食事の不足を補うものという意味です。つまり、土台の食事がしっかり摂れていないと、その効果も十分に発揮されません」

パーソナルトレーナーの林健太さんも様々なサプリメントを試してきたそうだが、やはり食事の改善が最も効果を感じるという。

しかしトレーニング前後には、集中力やパフォーマンス向上、怪我の予防なども考慮してサプリメントを活用することも多いそう。

「特にダイエット中は普段以上に頑張りすぎたり、回復に時間がかかったりするので、トレーニング前後の栄養面でのケアは大切です。日々の食事がきちんと管理できていれば、体感も変わってくるでしょう」

今回はトレーニングの効率を上げるためにおすすめのサプリメントを教えてもらった。

もちろんダイエット中の人は、まず食事コントロールがしっかりとできているか振り返ってから試してみて。

①トレーニング前にカフェイン

metal spoon standing in white cup with coffee on roasted brown beans surface
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トレーニング前にコーヒーを飲むと良い、という話は聞いたことがあるかもしれない。

カフェインによる覚醒作用で眠気を飛ばし、頭が冴えることでトレーニングにも集中できる。

「カフェインは脳に働きかけてアドレナリンの分泌を促進します。アドレナリンは、体脂肪を分解してエネルギーとして使いやすい状態にするためにも、必要不可欠なホルモンです」

ダイエットにおいて脂肪燃焼は最重要キーワード。

しかし、燃焼の前ステップにある分解がスムーズに行われていなければ本末転倒。スムーズに脂肪のエネルギーを使うためにはカフェインを摂っておきたいところ。

「サプリメントとしてピックアップはしましたが、カフェインに敏感な人も多いので、一日の摂取量を考えるとコップ一杯のコーヒーや緑茶などでも十分です。カフェインを摂取すると、筋肉の収縮に関与するカルシウムイオンの濃度も上がり、筋肉の発揮力も上がります」

カフェインの体への影響は個人差が大きいことから、日本においても国際的にも推奨摂取量は設定されていない。

しかし、カナダ保健省は健康な成人は最大400mg/日と注意喚起を促しているので、くれぐれも過剰摂取しないように注意して。

②トレーニングを始めたらマルトデキストリン(糖質)

ダイエット中に糖質を摂るというと嫌悪感を示す人も多いが、体を動かすための重要なエネルギー源でもある。

食事量が少ないダイエット中は、特に十分なエネルギー源が確保されていないので、その分をトレーニング中に適量摂ることは集中力アップや持久力アップにも繋がる。

「トレーニングの初めに感じる疲れは、血糖値の低下による場合も多いです。エネルギーを摂りながらトレーニングすることで血糖値の急下降を防ぎます」

マルトデキストリンは水に溶けやすく吸収も早い。

甘味も少ないので、市販のスポーツドリンクが甘すぎて苦手な方は、体重(kg)×0.5g程度を好みの量の水などに溶かすのが林さんのおすすめ。

「特に筋トレや強度が高めのトレーニングは、優先的に糖がエネルギーとして使われます。糖のエネルギーがなくなった後に、脂肪がエネルギーに変わると思われがちですが、実際はどちらも同時に使われています」

糖質のエネルギー源は枯渇すると、筋肉を使ってエネルギーを作り出すことにも繋がる。

せっかくのトレーニングを無駄にしないためにも、エネルギーの消費だけでなく補充も心がけておこう。

③トレーニング中のドリンクにはBCAA
orange fizzy powder and water glass with copy space healthy supplement
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体を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で作ることができない必須アミノ酸は9種類。その中でもトレーニングや栄養面で最も注目されている3種類がBCAAと呼ばれる。

アミノ酸サプリメントに関しては、何をどれだけ摂るのが最も優れているのかなど様々な議論が飛び交っているが、アスリートだけでなく一般の人にも人気が高い。

「BCAAは他の必須アミノ酸よりも骨格筋で多く消費されます。つまりトレーニング中は他のアミノ酸よりも消費が多くなるので、サプリメントで補うことはエネルギーの持続や疲労回復、筋肉痛軽減にも有効です」

筋肉への影響ばかりが注目されるアミノ酸だが、実は脳にも良い影響を与えることが知られている。特に運動中に集中力が切れてしまう人や、やる気が起きない人はBCAAを運動前からこまめに摂るのが林さんのおすすめ。

「BCAAは、神経性の疲労を引き起こすアミノ酸が脳内へ取り込まれる働きを阻害し、メンタル面の疲れなどを軽減してくれます。ダイエット中にトレーニングをもうひと頑張りしたいけれど、集中力や体力が持続しないという人は、前述のマルトデキストリンと一緒に摂ると良いでしょう」

④トレーニング後までこまめにクエン酸

疲労回復効果の高い栄養としても有名なクエン酸。

それ以外にも様々な疾病予防に効果があるとされており、梅干しやレモンなど酸味の強い食品に多く含まれる。

「細胞内のミトコンドリアでエネルギーを作り出すための回路はクエン酸回路と呼ばれ、その中心的な役割を担っているのがクエン酸です。ダイエットで代謝の良い状態と言われるのが、クエン酸回路が活発な状態とも言えます」

ダイエット中にハードなトレーニングが続くと、体のpHが酸性に傾き、疲れやだるさを感じることが多くなる。しかし、クエン酸は名前とは裏腹に、体のpHをアルカリ性にしてくれる働きがあるので、代謝アップだけでなく疲労の回復にも効果的。

クエン酸はミネラル吸収も促進してくれるので、生理中のダイエットにも大切なサプリメント。単体では吸収されにくい栄養素の手助けをしてくれるので、様々な不調改善の糸口になるかもしれない。

⑤運動後はグルタミン
pills shaping muscle arm
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体内で作ることができる非必須アミノ酸に分類され、体に最も多く含まれるグルタミン。

非必須アミノ酸のうち、半分以上をグルタミンが占めるほどで、疲労回復や免疫力アップ、胃腸の働きをサポートするなど、その効果は多岐にわたる。

「グルタミンは高ストレス下では必要量が増加する、条件下必須アミノ酸とも言われます。ダイエットで普段よりもハードにトレーニングをする人は、免疫力を落とさないためにも運動後すぐに摂るようにしましょう」

グルタミンは加熱により変性してしまうので、食事で非加熱の生鮮品の摂取量が少ない人はサプリメントの活用は重要。また、水にも弱いため、溶かしたらすぐに飲むように心掛けてほしいと林さん。

「トレーニング後にプロテインだけを飲む人は多いですが、栄養補給のタイミングをトレーニング前から意識している人は少ないのではないでしょうか。目的や効果などを考慮して、最適なサプリメンテーションが規則正しい食事の土台に重なれば、無理のないダイエットが継続できる体を作ることができるでしょう」

Headshot of 林健太
林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/