<Woman in Sports審査委員>梶川三枝さんが考える、スポーツの活用法

05 July 2018

<Woman in Sports審査委員>梶川三枝さんが考える、スポーツの活用法

 「世界では、社会を変えるためにスポーツの力を活用している。それを日本ににも伝えられたらと思い、Sport For Smileの活動を始めました」そう語るのは、スポーツを通じた社会貢献のあり方を広く伝えていくために一般社団法人 Sport For Smileを設立、活動を続ける梶川三枝さん。今回、ウーマン・イン・スポーツの趣旨に賛同し、審査委員を務める梶川さんの活動についてお話を伺った。

 家庭内暴力の被害者を救う、スポーツメンタリング

「日本ではすでにスポーツをしている子どもたちがプロ選手を目指すなど、スポーツが夢や希望を与える側面がよく知られていますが、世界ではスポーツが社会を変えるツールとして活用され、社会にとって重要なメッセージを伝えるツールとしても使われています。アスリートの声としてメッセージを発信したり、プロのスポーツチームが試合の中にメッセージを組み込むこともあります」

例えば、7月4日現在、梶川さん率いるSport For Smileが実施しているキャンペーンが、サッカーW杯に連動した「サッカーで世界を変える」若者のアイディアを募集するというもの。「Win Off-the-Pitch 2018 スタジアムにたどり着けない人々に サッカーの力で希望と勇気を」と名付けられたこのキャンペーンは、FIFAのパートナーNGOからの助成を受け、若者が社会を変えるアクションを起こす最初の一歩を応援するもので、優秀なアイディアにはプロジェクト実現のための資金が授与される。

他にも、2014年から続けているのが「スポーツメンタリング」という活動。これは家庭内暴力の被害に逢ったお母さんの支援をしているNPOと連携して、被害者の子どもとボランティアの大学生がスポーツを通じて信頼を育んでいくというもの。

「家庭内暴力の被害にあっているお子さんはほぼ全員がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になっていて、コミュニケーションを取るのが苦手だったり、人を信じられなかったりします。最初は名前を聞かれても答えられなかった子が、スポーツメンタリングの参加が2、3回目になると自ら手をあげるようになり、半年後には友達を思いやることができるなど、学校の先生も驚くほどの変化がある子もいます」

希望者を募って1年につき4〜5ペア。子どもと組んだ大学生のメンターは子どもの送り迎えもして、ビーチボールでドッチボールをしたり、卓球をしたりと軽く身体を動かすプログラムを行う。

「スポーツメンタリングを数年続ける中で、子どもって見つめてあげることですごく変わるのだということがよくわかりました。スポーツのスキルを身につけてもらうことが目的ではなくて、小さな成功体験を積み重ねて自信をつけてもらうことが大切。自分を応援してくれる誰かがいると信じて頑張る力を身につけられることに大きな価値があると思います」


難しい社会問題にこそ取り組むのは、スポーツの力を信じているから

WH25566

梶川さん自身がスポーツを通じた社会変革に興味を持ったきっかけは、大学院でスポーツ経営学を専攻していた時に、NBA(米プロバスケットボールリーグ)のチームでインターンとして働いた経験やオリンピックの招致活動に携わった経験も影響している。

「その頃は、ちょうどロンドンオリンピックが決まった時期だったのですが、ネルソン・マンデラ氏の『スポーツには世界を変える力がある』という言葉を受けて立ち上がった団体があったり、英国を中心に社会的な影響力のある方たちがその動きを支援していました。そんな風にスポーツを社会を変えるために活用している事例を日本にも伝えたいと思いました」

2010年7月に「Sports For Smile」の活動を開始した当初は、その趣旨を理解されないことも多かったという。

「設立当初は、日本でスポーツで社会貢献活動をしていると言うと、多くの人からは障害者支援団体と誤解されました。実は当初から、難民やLGBTやホームレスの方の支援など、様々な分野の支援に取り組む団体と連携して活動していますが、最近は一般の方にもそれがより認識されてきていることを感じます」

とくに2020年の東京オリンピック開催が決定した頃から、日本でのソーシャル活動の高まりが急速に進んでいるのを感じるという梶川さん。おかげで、スポーツを通じた社会変革についてもメッセージをより伝えやすくなったという。

「問題を知らなければ、改善もできません。でも社会問題をスポーツの知名度を活用して多くの人に知ってもらうことができれば、それが問題改善のきっかけになります。それもスポーツの重要な役割のひとつかなって思います」

「私たちは、共感されにくいかもしれないが重要な分野にコミットしています。例えば、平和。大切だとはわかっているけれど、平和のために何か取り組もうという人は意外と少ない。そこにあえて挑むというのが私たちの理念です。なぜかというと、それくらいスポーツの力を信じてるから。そして、そこにスポーツの力を最大限に発揮する機会があると思ってるからです」

そう言い切る梶川さんだが、スポーツで何でも解決できると思っているわけではない。

「社会を変えることができるのは、スポーツと音楽とアートが世界3大ツールだと考えています。でも本質的には、スポーツを活用しなくても社会が変わっていければベスト。私はスポーツで世界全体を変えられるとは思っていません。でも、少なくともスポーツが影響を与えられる人は変えられると思っています。なので、そういう人たちの意識、マインドセットを変えることだけでも、できたらいいなと願っています」

スポーツで社会を変える。世界を変える。そう言うと、とても大きなアクションのように思えるけれど、梶川さんはもっと身近な行動の中にこそ、社会を変える一歩があると言う。

「グローバルなことっていうと自分と関係ないという感覚をお持ちの方が多いと思いますが、自分の身の回りから少しでいいから変えていけたらそれでいいかなと。別にどこかの国際会議に行ってスピーチしなきゃいけないとかそんなことは全然なくて、日々の生活の中でちょっと意識したり、行動を変えてみる。それだけでいいのです。みんなが少しずつ変わる、その総体によって、結果として社会が変わっていくのだと思います」

「みなさんそれぞれが、自分に無理のない範囲で、やりたいことが含まれる形で、楽しみながら社会貢献していく方法が見つかるといいですね」

梶川さんの活動に興味がある方は、ぜひ公式サイトをチェックしてみて。

http://www.sport4smile.com/

Photo : Kento Mori Hair & Make-up : Yuki Ishizawa

RECOMMENDED ウィメンズヘルスのおすすめ