梶川さん自身がスポーツを通じた社会変革に興味を持ったきっかけは、大学院でスポーツ経営学を専攻していた時に、NBA(米プロバスケットボールリーグ)のチームでインターンとして働いた経験やオリンピックの招致活動に携わった経験も影響している。
「その頃は、ちょうどロンドンオリンピックが決まった時期だったのですが、ネルソン・マンデラ氏の『スポーツには世界を変える力がある』という言葉を受けて立ち上がった団体があったり、英国を中心に社会的な影響力のある方たちがその動きを支援していました。そんな風にスポーツを社会を変えるために活用している事例を日本にも伝えたいと思いました」
2010年7月に「Sports For Smile」の活動を開始した当初は、その趣旨を理解されないことも多かったという。
「設立当初は、日本でスポーツで社会貢献活動をしていると言うと、多くの人からは障害者支援団体と誤解されました。実は当初から、難民やLGBTやホームレスの方の支援など、様々な分野の支援に取り組む団体と連携して活動していますが、最近は一般の方にもそれがより認識されてきていることを感じます」
とくに2020年の東京オリンピック開催が決定した頃から、日本でのソーシャル活動の高まりが急速に進んでいるのを感じるという梶川さん。おかげで、スポーツを通じた社会変革についてもメッセージをより伝えやすくなったという。
「問題を知らなければ、改善もできません。でも社会問題をスポーツの知名度を活用して多くの人に知ってもらうことができれば、それが問題改善のきっかけになります。それもスポーツの重要な役割のひとつかなって思います」
「私たちは、共感されにくいかもしれないが重要な分野にコミットしています。例えば、平和。大切だとはわかっているけれど、平和のために何か取り組もうという人は意外と少ない。そこにあえて挑むというのが私たちの理念です。なぜかというと、それくらいスポーツの力を信じてるから。そして、そこにスポーツの力を最大限に発揮する機会があると思ってるからです」
そう言い切る梶川さんだが、スポーツで何でも解決できると思っているわけではない。
「社会を変えることができるのは、スポーツと音楽とアートが世界3大ツールだと考えています。でも本質的には、スポーツを活用しなくても社会が変わっていければベスト。私はスポーツで世界全体を変えられるとは思っていません。でも、少なくともスポーツが影響を与えられる人は変えられると思っています。なので、そういう人たちの意識、マインドセットを変えることだけでも、できたらいいなと願っています」
スポーツで社会を変える。世界を変える。そう言うと、とても大きなアクションのように思えるけれど、梶川さんはもっと身近な行動の中にこそ、社会を変える一歩があると言う。
「グローバルなことっていうと自分と関係ないという感覚をお持ちの方が多いと思いますが、自分の身の回りから少しでいいから変えていけたらそれでいいかなと。別にどこかの国際会議に行ってスピーチしなきゃいけないとかそんなことは全然なくて、日々の生活の中でちょっと意識したり、行動を変えてみる。それだけでいいのです。みんなが少しずつ変わる、その総体によって、結果として社会が変わっていくのだと思います」
「みなさんそれぞれが、自分に無理のない範囲で、やりたいことが含まれる形で、楽しみながら社会貢献していく方法が見つかるといいですね」
梶川さんの活動に興味がある方は、ぜひ公式サイトをチェックしてみて。
http://www.sport4smile.com/