トップアスリートが大舞台でもへっちゃらそうに見えるのは、たいてい現実の世界または頭の中で、そのシーンを経験したことがあるから。『The Sport Psych Handbook』の著者でスポーツ心理学者のシェーン・マーフィー博士は、「あるタスクについて “考える” 時に使われる脳の部位と、そのタスクを “行う” 時に使われる脳の部位は同じです」と説明している。
つまり、理想的なパフォーマンスをイメージすれば、過去に良い結果を出したときと同じ自信が湧くということ。仕事でプレゼンテーションをしたり、友達の結婚式で乾杯の音頭をとったりする予定があるなら、次のエクササイズを当日まで続けてみよう。
話すべきことを全て話し、(予想通りの)笑いをとって、最後には観衆から盛大な拍手が送られる自分の姿を目を閉じてイメージする。そうすれば、本番でリラックスできるはず。「前にもやったことがある」とすら感じるかもしれないけれど、それはある意味そうだから。
最適なタイミングで緊張を解き放つ
トレーニング中は、自分の動作のひとつひとつを敏感に捉えるアスリート。でも、試合本番のプレッシャーの下では、自分の動き(テニスのスイングやフィギュアスケートのジャンプなど)を過度に分析してしまい、ためらいや緊張が生まれた結果、手痛いミスをしてしまうことがある。米シカゴ大学の心理学者で、『Choke: What the Secrets of the Brain Reveal About Getting It Right When You Have To』を執筆したサイアン・ベイロック博士によると、活発すぎる思考を鎮める方法のひとつが陽動作戦。
例えば、バスケットボール選手の中には、ボールに入ったロゴに集中することで、フリースロー前の緊張を紛らわす人もいる。また、ベイロック博士は、絶対外せないショットを打つ数秒前に、25から3つ飛ばしで数字を逆に数える(25、22、19…)ようゴルフ選手に指示しているそう。このテクニックは、パフォーマンスに対する不安の波に襲われたときにも使える。
キーワードを見つける
アスリートに対してスポーツ心理学者は、聞いただけでパフォーマンスに集中できるような言葉やフレーズを見つけるよう指示を出す。「キーワードのおかげで、自分の求める感覚と自分自身のつながりが強くなります」と話すのは、2010年のバンクーバー・オリンピックで、数日前に母親が急逝したばかりのカナダのフィギュアスケート選手、ジョアニー・ロシェットを銅メダルに導いた加モントリオール大学のウェイン・ハリウェル博士。
氷上の彼女が常に頭の片隅に置いていた “威風堂々” というフレーズは、“自分のフォームとムードに気を付ける” というリマインダーにもなったそう。自分は何を成し遂げたいのか、自分の心に聞いてみよう。広い心でブラインドデートに挑みたいなら “オープンに”、5kmマラソンを走るなら “安定感” をキーワードにするといいかもしれない。
怖がらせる人は無視する
アスリートは常に対戦相手を動揺させようとするものなので、冷酷な誹謗(ひぼう)中傷で、あなたを怖がらせる人もいるかもしれない。米ユタ大学で教鞭(きょうべん)をとるニコール・デトリング=ミラー博士は、「ライバルが悪口による心理戦を仕掛けてきたら、それも褒め言葉だと思いなさい」とアスリートに伝えているそう。
「相手があなたを標的にするのは、たぶん嫉妬からでしょう。おじおじせずに、『狙われるということは、私に力があるからに違いない!』と自分に言い聞かせてください」
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。