不安を感じているなら、それが不定期でも定期的でも、サプリメントである程度の症状を緩和できるという話は非常に魅力的。噂によると、マグネシウムには不安を和らげる効果があるらしい。これは調べてみる価値あり!

『Self-Care for People with ADHD』の著者で精神科医のサーシャ・ハムダニ医学博士によると、マグネシウムとは体内に自然に存在するミネラルで、食べものや栄養補助食品、一部の医薬品に含まれている。タンパク質合成(細胞がホルモンや筋肉を作るのを手助けするタンパク質が生成されるプロセス)を助けたり、筋肉や神経機能、血糖コントロール、血圧調節にも大きく関わっているという。

また、マグネシウムは体のストレス反応システムを支え、脳内のストレスホルモンを減らす働きがあるため、「PsychPlus」のチーフ・メディカル・オフィサーで精神科医のカサンドラ・ボダック博士が言うには、不安の症状を最小限に抑える効果があると考えられているそう。

ただし、突発性の強い不安や重度の不安は、マグネシウムで解決できるものではない。「日常生活や幸福感、全体的な機能に支障をきたすほどの持続的、または重度な不安症状がある場合は、不安について医師に相談することを検討すべきです」とハムダニ医学博士。「医師は正確に診断したうえで、適切な治療法を提案してくれるでしょう。これには、セラピー、薬物療法、ライフスタイルの改善、もしくはこれらを組み合わせたものが含まれ、不安を効果的に対処するための指導を提供することもあります」

とはいえ、マグネシウムが不安を和らげてくれるのは本当? もしそうなら、どんな種類のマグネシウムを摂るといいの? マグネシウムの一般的な健康上のメリットや副作用、マグネシウムと不安の関係性について、頭に入れておくべきすべての内容は以下のとおり。

マグネシウムの健康上のメリット

ボダック博士いわく、とくに神経や筋肉の機能、血圧の調整、コレステロールの生成、骨の健康、心臓リズムを正常に維持するのに体はマグネシウムを頼っている。

さらに、心疾患、脳卒中、高血圧、2型糖尿病、骨粗鬆症のリスクを減らすうえでカギとなる栄養素でもあるそう。

マグネシウムは不安にどう作用するの?

females couple with relationship difficulties
Maria Korneeva//Getty Images

2017年に実施された18件の異なる研究レビューでは、マグネシウムのサプリメントは一般的な不安やストレスを軽減することがわかっている。でも、不安が軽減したという事実は研究参加者が報告したものであり、あくまでも主観的な事実に基づく根拠であることと、マグネシウムの不安を和らげる効果を確証するにはさらに研究を重ねる必要があることをボダック博士は補足している。

だが、体内に自然に存在するマグネシウムも、食事やサプリメントから摂取するマグネシウムもすべて、神経伝達(ニューロン間の情報伝達や脳細胞同士のコミュニケーションツール)を調整するのに機能しており、これによってストレスや不安が和らぎ、筋肉の緊張がほぐれるのは本当。ハムダニ博士いわく、これが体に鎮静作用をもたらし、結果として不安な気持ちを落ち着かせるのに役立っているという。

マグネシウムは、睡眠に関わる神経伝達物質「GABA」を増加させる働きもあるため、睡眠の質を高めてくれる可能性がある。ハムダニ博士いわく、これは不安やストレス、恐れといった感情をコントロールするのに効果的。さらにマグネシウムは、筋肉の緊張を和らげて神経系を整えてくれるため、睡眠の改善にもつながるとのこと。

ボダック博士によると、マグネシウムは脳内のストレスホルモンを減らす作用もあり、不安やうつ病、不眠症の症状を和らげる可能性がある。「マグネシウムは、ストレスホルモンのコルチゾールの分泌を抑制して、その多くが脳に行き届いてしまうのを阻止してくれるのです」とボダック博士。

不安にマグネシウムを試してみるといいケース

ハムダニ博士いわく、マグネシウムのサプリメントは、中等度の一般的な不安にもっとも効果がある。「ですが、不安のピークをある程度緩和するものの、パニック状態を治せるほど速攻で効果を発揮するものではありません」とハムダニ博士。

重度、または突発性の不安を感じている場合、マグネシウムは最良の選択肢でもなければ、最初に試すべき手段でもない。ボダック博士いわく、医療従事者に相談するべきであり、適切な診断を受け、あなたにとっての最善な不安管理法を指導してもらう必要がある。

不安に最適な種類のマグネシウムとは?

医師の許可が出た場合、マグネシウムのサプリメントは有益に作用するかもしれない。でもハムダニ博士が言うには、ケールやほうれん草、黒豆、枝豆、アーモンド、カシューナッツ、キヌア、玄米などのマグネシウムが豊富な食材を食べるようにするのも賢明な策。

ボダック博士によれば、最近のマグネシウムのサプリメントはどれも同じではなく、マグネシウムの種類によって、それぞれ違った特定の効果が得られるという。2019年のマウス実験(ヒトを対象に行われていないため、参考程度に)の結果によると、体内に迅速に吸収され、不安症状を軽減してくれるのはタウリン酸マグネシウム。一方でグリシン酸マグネシウムは、ストレスを和らげ、睡眠を改善する鎮静作用があるとしてよく知られているそう。

また、マグネシウムと不安に関するほとんどの研究では、乳酸マグネシウムと酸化マグネシウムのサプリメントが使用されており、2017年の研究レビューによれば、これらのマグネシウムも不安症状を最小限に抑えてくれることが示されている。

不安を和らげるためのマグネシウムの摂り方

young woman ready taking pill omega 3 capsule in smiling close up
Mensent Photography//Getty Images

マグネシウムサプリメントを服用する量や時間帯については、必ず医師に相談すること。たが、一般的にマグネシウムは眠気を起こしやすいため、ハムダニ博士いわく、夜に服用するのがいいそう。さらにボダック博士が言うには、サプリメントに記載された指示通りの量を、毎日同じ時間に服用するように心がけるべき。

成人女性に推奨されるマグネシウムの1日の摂取量(RDA)は310〜320mgだけれど、実際の具体的な量に関しては、年齢や性別、妊娠の有無、健康状態によって異なる。ボダック博士によると、現時点でマグネシウムが不安に有効であるかどうかを断定できないため、不安に効く正式な量というものは存在していない。また、マグネシウムサプリメントの不安が和らぐ効果を感じられるまでに、数日から数週間かかる場合があるとハムダニ博士は補足している。

マグネシウムのサプリメントは、体内で特定の薬や抗生物質の吸収に影響を及ぼす可能性もあるため、既存の疾患や健康状態のために他の薬を服用中の場合は、サプリメントを試す前に必ず医師に相談するように。

マグネシウムサプリメントの副作用

一般的に副作用は軽微なものにすぎないが、ハムダニ博士によると、マグネシウムのサプリメントで下痢や吐き気、腹部痙攣などの消化器症状を引き起こす可能性がある。また、過剰に摂取すると低血圧になったり倦怠感を感じることもあるそう。

こうした望ましくない副作用を避けるために、国立医学アカデミーは、医師の指示がない限り、マグネシウムの摂取量を1日350mg未満に留めておくように推奨している。サプリメントは食事と一緒に摂るようにすると、胃腸の不快感を最小限に抑えることができるとか。
 
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: ANDI BREITOWICH Translation : Yukie Kawabata



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Andi Breitowich

Andi Breitowich is a Chicago-based writer and graduate student at Northwestern Medill. She’s a mass consumer of social media and cares about women’s rights, holistic wellness, and non-stigmatizing reproductive care. As a former collegiate pole vaulter, she has a love for all things fitness and is currently obsessed with Peloton Tread workouts and hot yoga.  

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川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。