おうち時間が増え、脚のむくみや顔のたるみに悩んでいる人も少なくないはず。そこで今回は、経絡リンパマッサージの第一人者で、70冊以上の書籍を上梓する渡辺佳子先生が、顔・首・デコルテ・バスト・脚のリンパマッサージを伝授! 正しい方法でケアすれば、むくみやコリもすっきり。ぜひ今日から取り入れてみて。

目次

そもそもリンパとは?

「リンパとは、老廃物を集めて体外に排出する“浄化システム”と、体内に侵入した異物から体を守る“免疫システム”の2つの働きを担うもので、リンパ液・リンパ管・リンパ節などの総称になります。

リンパ管は、静脈にほぼ沿って編み目のように全身に張り巡らされています。血液は酸素や栄養分を運んだりしますが、リンパ管を流れるリンパ液は体の中を一方通行に流れ、体のあちこちで回収した老廃物や余分な水分を、体外に排泄する役割を担っているのです。リンパ液はその途中で、リンパ節と呼ばれるろ過装置を通ります。わきの下や首・脚の付け根にあるそけい部などには、大小のリンパ節が約600〜800ヵ所もあります。このリンパ節で、汚れたリンパ液は浄化され、また身体を巡ります。

そして最後には、鎖骨にある太いリンパ管に合流し、静脈へと注がれると、最終的には不要物は腎臓でろ過されて、尿や汗となり体外へ排泄されます。また、体内に侵入したウィルスなどからも守る免疫システムとも関係しています。このように私たちの体にとってリンパ系の働きは、とても重要な役割を果たしているのです」(渡辺佳子先生・「」内以下同)

リンパが滞るとどうなるの?

「リンパの滞りとは、正確には流れが悪くなることを指します。最も代表的な症状は、全身のむくみです。病的なものでは、浮腫と言います。

また、ガンなどの手術でリンパ節の摘出を行い、脚の太さに左右差が出てきてしまう疾患をリンパ浮腫といいます。その場合は医療的なリンパドレナージュの専門的ケアが必要になります。

今回は、病気ではないけど、むくみやすい、脚が太くなりがちといった、気になる通常範囲のむくみを改善する日頃のケアをご紹介します。

リンパが滞ると全身の老廃物が排出されにくくなるため、さまざまな症状がでやすくなります。内臓の働きが悪くなったり、免疫力の低下を招いたり、血流が滞ることで、むくみ以外にも肩コリや肌のくすみ、ニキビといった肌トラブルも起こしやすくなります」

リンパマッサージを効果的にするコツは?

bare feet green grass
yasinguneysu//Getty Images

「リンパマッサージを行うのに効果的なポイントが、3つあります。実際に行う際に気をつけてみましょう」

①手を肌に密着させる

「特にさするときなどに指や手のひらが肌に密着していると、効果がアップします。指先だけで、力を入れすぎる、こするなどといった間違った方法だと効果が落ちてしまいます」

②体の仕組みを知り、症状にあわせたマッサージを

「リンパマッサージは末端から体の中央へ、リンパの流れに沿って行います。体の仕組みを知ることで、より的確なマッサージができます。マッサー ジの方向や部位は、適切に行いましょう」

③適度な圧、ちょうどいい力でマッサージを行う

「リンパマッサージの基本の力の入れ具合は“気持ちいい”程度です。強すぎると筋肉が緊張して、逆効果になってしまうこともあります。心地よい程度の力で、優しく気持ちいい圧で行いましょう」

リンパマッサージを始める前の注意点&ポイント

「リンパマッサージを行う上で、はじめる前に注意するポイントがあります。必ず読んでから、行ってください」

・手や部位を清潔にしてから行う

・食後2時間以内や飲酒後は控える

・皮膚に傷や湿疹などがある場合は、患部に触れずに行うか、マッサージを控える

・病気やケガをしている時や、過度の疲れがある場合は控える

・妊娠の可能性がある時や、妊娠初期には行わない。その他の時期は専門家に相談を

・服の上からではなく、皮膚に直接触れて行う

・オイルやボディジェルを使うと滑りがよくなり、マッサージ効果もアップする

・入浴後など体が温まっている時に行うとより効果的

・体の左右上下、必ず同じ回数を行う

・マッサージを続けても効果が感じられない時や、症状が改善されない場合はすぐに専門家に相談する


溜まったむくみをスッキリ!「脚のリンパマッサージ」

「リンパの流れが悪くなると水分の代謝が落ち、心臓から遠い脚、特にふくらはぎに余分な水分がたまり、むくみを引き起こします。特に脚の付け根(そけい部)が硬くなっていると、脚全体のリンパの流れが滞り、むくみやすくなります。

脚の付け根までしっかりマッサージし、脚全体の巡りを促すことで、むくみだけでなく、冷えも改善されます。慢性的な脚のむくみや冷えが改善されると、自然とすっきりした脚になっていきます。今回は、3つのプロセスで脚のむくみをスッキリしていくマッサージをご紹介します。

なかなか改善しない場合は、慢性的な疲れが溜まっている可能性があります。全身のケアやデコルテ、首などのプロセスも一緒に行ってみましょう」


①ふくらはぎをさする (足首からひざ裏に向かってさする)

リンパマッサージ

足首の裏に両手をあて、ひざ裏に向かってふくらはぎを両手の手のひらでにぎりながらすり上げる。反対側も同様に、左右それぞれ1分間行う。

ポイント:「手を密着させて水分をひざ裏に流し込むイメージでさすりましょう」


②太ももの内側をさする(膝からそけい部まで手のひらでさする)

リンパマッサージ

片ひざを立てて座り、ひざの横を両手の手のひらでにぎり、そけい部に向かって太ももを手のひらでさすり上げる。反対側も同様に。次に両手の親指を重ねて、血海のツボを押す。さする+ツボ押しをそれぞれ1分間行う。

ポイント:「手の動きに合わせて上体を倒したり、そらせるとマッサージが行いやすくなります」

〈ツボ〉

血海(けっかい):脚の内側、ひざのふちから指3本分上のところにあるツボ

③脚の外側をさする

リンパマッサージ

足首に手をあて、お尻に向かってひざの外側をさすり上げる。反対側も同様に左右それぞれ1分間行う。

ポイント:「体を動かしながら、手のひらを密着させて行うと効果的です」

胸までケアしてキレイを格上げ!「バスト&鎖骨、デコルテのリンパマッサージ」

「年齢とともにデコルテやバストラインが気になってきますよね。バストに張りがないと感じるのは、 女性ホルモンのバランスの乱れも一因ですが、じつは筋肉などのコリが原因の可能性もあります。バスト・デコルテ・鎖骨の周りの循環を促し、胸筋を緩めるマッサージをすることで、バストケアだけでなく、気分的にも詰まった感じを改善することができます。今回は、デコルテ・鎖骨・バスト、3つのプロセスで輝く女性に変わるマッサージをご紹介します。

毎日のバストとデコルテケアで女性力を高め、キレイな鎖骨とデコルテ、張りのある美しいバストラインを目指しましょう。また、後にご紹介する首のリンパマッサージも合わせて行うことで、より効果が期待できます」

①鎖骨とデコルテをさする

リンパマッサージ

右手は左肩から右の脇下へ。左手は右肩から左脇の下へ向かって、両手を左右交互に動かしながら手のひらでさする。鎖骨部分は、親指以外の4本の指でデコルテまでさするのがコツ。また、デコルテ部分は、手のひらでワキまでさする。

さらに鎖骨の下の硬い部分を、息を吐きながら、4本の指で押していく。これを1分間行う。

②バスト周り、胸とお腹をさする

リンパマッサージ

右のバストは、左手。左のバストは右手でさする。ワキのあたりから胸の中心に向かい、バストの丸みに沿ってワキまで円を描くように手のひらで、優しくさする。片側ずつ同様に行う。それぞれ1分間行う。

ポイント:「バストは、胸の丸みに合わせて、脇の下までやさしくさすりましょう」

続けて、手のひらを胸の中心にあてる。左右の手を交互に動かし、胸からお腹全体をさすり下ろす。バストの中心は4本の指でさすり、お腹は手のひらを密着させるのがコツ。1分間行う。

ポイント:「胸の中心は4本の指で、お腹の中心を手のひらをしっかり密着させてさすりましょう」


③バストを下から上へたたく
リンパマッサージ

バストの下に両手のひらをあて、両手で交互にバスト周りを下から上へとたたく。手のひらに力は入れず、バストの周辺を手のひらで優しくたたく。反対側からも同様にそれぞ れ1分間行う。

ポイント:「下から上に引き上げるイメージで、優しい力でたたくと機能を活性化させることができます」


首や顔のむくみもほっそり!「 首と顔のリンパマッサージ 」

「顔はコリやむくみによって、太って見えてしまうことがあります。もし“顔が大きくなった”と感じていれば、首コリの可能性があります。首コリの人の場合、鎖骨のくぼみが出てないことが多くあります。鎖骨美人は、健康美人の代名詞でもあります。それだけ鎖骨・首は、顔をケアする上でも大切なポイントです。

体中をくまなく巡ったリンパは首を通って、最終的に鎖骨付近になる静脈へと流れ込みます。 この重要なポイントにコリがあると流れが滞り、体に余分な水分や老廃物がたまり、数々の不調を引き起こす原因にもなります。

首コリの自覚がなくても、顔のむくみ、体の不調や痩せにくいなど、何か悩みを抱えていたら、 まずは首周りのマッサージを行ってみてください。身体のバランスより顔が大きく見える場合は、 首コリの可能性があります。首コリが改善されると、顔の見た目もスッキリする方が多くみられます。今回は、4つのプロセスとツボ押しで、首のコリと顔のむくみを改善し、見た目もスッキリしていく経絡リンパマッサージをご紹介します。

何か気づいた時にケアを始めてください。放置せず、毎日のケアで見た目の印象も首コリも改善し、いつも笑顔で過ごしましょう」

①鎖骨の上・デコルテ周辺をさする

リンパマッサージ

右手は左肩から右のワキの下へ、左手は右肩から左の脇の下に向かって、両手を左右交互に動かす。鎖骨部分は、親指以外の4本の指で、デコルテからワキは手のひらでさする。これを1 分間行う。

ポイント:「肩コリがある場合は、なるべく背中スタートで。肩から鎖骨に向けてを手の重みを使いましょう」

②鎖骨の上下をさする

リンパマッサージ

右手を左の鎖骨の端にあて、鎖骨の中央へ向かって親指以外の4本の指で鎖骨の上下をさする。反対側も同様に、それぞれ1分間行う。

ポイント:「鎖骨美人を目指して、くぼみを出すイメージで行いましょう」

③フェイスラインと首の側面をさすり下ろす

リンパマッサージ

あごに親指以外の4本の指をあて、耳の下まで4本の指でさする。次に耳の下から鎖骨に向かって首をさする。さらに耳の下あたりにあるツボ(翳風)を2本の指で押す。各部分のケア、ツボ押しを1分間行う。反対側も同様に1分間行う。

〈ツボ〉

翳風(えいふう):耳たぶと、その後ろにある骨の間のくぼみにあるツボ

ポイント:「あごを少し上げて行うと、フェイスラインがさすりやすくなります」

次は、翳風に人差し指と中指の2本の指をあて、顎をゆっくりと前後に振りながらツボを押す。こちらも1分間行う。

ポイント:「硬い部分があれば、念入りに行いましょう」


④耳の下肩先、鎖骨へ首をさする

リンパマッサージ

耳の下に親指以外の4本の指をあて、一方の手は耳の下から肩先へ、もう一方の手は耳の下から鎖骨へ向かって首の側面をさする。反対側も同様に、それぞれ1分間行う。

ポイント:「さすっている側の反対側に首を傾けると、マッサージしやすくなります」


まとめ

「毎日のセルフケアを続けることは、自分自身と向き合うこと。 日々のストレス、心と体の小さな変化を見逃さずにいることができるようになります。何か一つでも心身の変調を見つけたら、すぐにケアをはじめてください。それが、ずっと元気で、美しく、幸せにいるための秘訣です。

毎日少しずつ、1分でもマッサージを続けることは、ちょっとした不調のケアや、病気の予防になるだけでなく、健康的な心と体を育み、美しく幸せな日々へと導いてくれます。

心と体を美しく保つためには、自分が幸せでいることがとても大切なことです。セルフケアをする上で習慣化することと、同じくらい大切なのが、自分の心身を慈しむ気持ち。毎日、頑張っている自分の身体に感謝の気持ちを込めて、“手当て”の原点であるマッサージで癒してあげましょう。

“病気は病んだ気”から、はじまります。毎日のリセット時間を大切にしてください。流れの良い心と身体、毎日の笑顔は免疫力も高めます。経絡リンパマッサージで、スッキリとした毎日を過ごしましょう!」

渡辺佳子先生監修の脚すっきりスパッツ

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渡辺先生監修のスパッツ。マッサージの後にもぴったり。

〈監修〉

渡辺 佳子/銀座ナチュラルタイム総院長

リンパマッサージ

経絡リンパマッサージ協会代表理事 。経絡リンパマッサージの第一人者。鍼・灸・按摩マッサー ジ指圧師の国家資格とそのプロを養成する教員資格を持ち、教員養成科のマッサージ臨床学講師も務める。現在、TVやラジオ、雑誌など多くのメディアでの監修を手がけるほか、業界発展の為、講習会やスクールなどにも力を入れている。また自らの臨 床経験から、健康や医療、予防医学の大切さ美容やダイエットなどといった身近なテーマを通じて、一般の女性、ママやベビー、または専門家まで幅広く多くの人に伝えることをライフワークにしている。

公式サイト

〈監修協力〉

廣澤幸恵/銀座ナチュラルタイムテラピーセンター副院長

長年のエステティシャン経験と鍼灸マッサージ師の国家資格、教員資格を持つ。渡辺佳子先生に師事し鍼灸マッサージの講師として活躍し、さらにパワーストーンを使ったストーンセラピー「カラダ風水」で心に寄り添う親身な治療が評判。

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Photo:NTHD YUYA model:NTHD AIMI text:NAOMI TANAKA

衣装協力/シーオーメディカル

Headshot of Kanna Konishi
Kanna Konishi
ウィメンズヘルス・副編集長

編集者として多くのメディアに携わったのち現職。健康オタク歴20年、趣味は"毒出し"で、体と心と部屋を効率よく整え、環境にもいい健康法を探るのがライフワーク。チアリーダー経験あり、勝手に人を応援しがち。仕事では「心から推せるものしか紹介したくない!」と目を血走らせ、常に情熱大陸に上陸中。 

Instagram: @editor_kanna_purico