妊娠してから体調が優れない? 検査薬の陽性反応に喜んでいたのも束の間、妊娠ホルモンの働きで気分のムラや肌トラブル、消化不良が生じると、ちょっとビックリしてしまう。

妊娠すると、体内ではなにが起こるのかをロンドンのプランディナ・ピサル産婦人科医が教えてくれた。今回は、6種類の妊娠ホルモンがもたらす感情的・生理学的な変化をイギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。

1.ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)

HCGは妊娠後、もっとも早く(排卵の8日後に)分泌されるホルモンの1種。排卵の5~6日後、遅くとも10日後には間違いなく測定可能な量になる。妊娠初期で48時間ごとに倍増し、妊娠8~10週目でピークに達する。

HCGは、受胎と妊娠の継続に不可欠な黄体をサポートするホルモン。HCGの量が増えると体が妊娠の準備を始め、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が調節される。

副作用として、頭痛、イライラ、落ち着きのなさ、疲労、不眠、吐き気、嘔吐(つわり)、頻尿が起こる。

2.エストロゲン

妊娠前から妊娠10~12週目までは卵胞(のちの黄体)で産生される。その後、出産予定日までは、胎盤と副腎胎児性帯で産生される。妊娠後期でピークに達することが多い。

エストロゲンは、胚の着床に向けて子宮内膜の状態を整え、胎盤の成長と機能を支える。流産を防ぎ、赤ちゃんの成長と発育に必要な化学変化を起こすうえでも大事なホルモン。エストロゲンには、血流を改善し、ほかの主要なホルモンの産生を調節し、授乳に向けて胸を大きくする役割もある。

エストロゲンの量が増えると、ほかのホルモン量の増加も相まって、気分のムラや吐き気が生じる。また、粘膜に送られる血流の増加によって、頭痛、後鼻漏(鼻からのどの奥に流れている鼻水)やプロゲステロンの影響もあり鼻づまりが生じることも。皮膚の一部に色素沈着が現れて、乳首の色が濃くなったり、おなかに正中線が現れたりすることもある。

3.プロゲステロン

妊娠前から妊娠10~12週目までは卵胞で産生されて、それ以降、出産予定日までは胎盤で産生される。通常は妊娠後期の終盤でピークに達する。

プロゲステロンはエストロゲンと密接に連携して働き、子宮に送られる血流を増やして妊娠の準備をする。胚の着床に向けて子宮内膜を厚くするだけでなく、胎盤が出来るまで胚に栄養を送り続ける。

プロゲステロンには、母体が胚を拒否して流産や早産になってしまうのを防ぐため、胎児性抗原に対する母体の反応を抑制する一方で、胎児の発育を促進し、出産に向けて骨盤の筋肉を強くする役割もある。

副作用として、胃腸の不快感(消化不良、胸やけ、便秘、膨満感など)、股関節、腰・恥骨・背中の痛み、歯茎からの出血、発汗量の増加が見られる。

4.リラキシン

リラキシンは、妊娠早期から後期にかけて、黄体と胎盤で産生される。妊娠14週目と出産の直前でピークに達する。

リラキシンは胚の着床に向けて子宮内膜を整え、赤ちゃんの成長に合わせて子宮を大きくする。リラキシンには、早産を防ぎ、子宮頸部の熟化を促す働きもある。骨盤の靭帯をリラックスさせ、インスリン抵抗性を改善するので、スムーズな分娩に欠かせない。成長する赤ちゃんのニーズに合わせて血管を拡張し、母体の血流を促すのもリラキシン。

ラキシンの働きで靭帯が弛緩すると、関節や靭帯が痛くなったり、頭痛が生じたりする。このホルモンは胃の平滑筋と括約筋も弛緩させるので、酸が食道を逆流し、胸やけがすることも。

5.オキシトシン

視床下部で産生されて、母体の脳の下垂体から分泌される。妊娠初期から後期にかけて増加し、産後に減少する。

オキシトシンは、分娩時に広がる子宮頸部の熟化を促す。ほかのホルモンと相まって、同様に子宮頸部の熟化を促すプロスタグランジンも分泌させる。

オキシトシンは、分娩中に子宮を収縮させるだけでなく、分娩後も出血を防ぎ、胎盤を剥がすために子宮を収縮させ続ける大事なホルモン。“愛情ホルモン”とも呼ばれるオキシトシンには、赤ちゃんと母親の絆を深め、母乳を分泌させる働きもある。

副作用は、イライラとブラクストン・ヒックス収縮(無痛の子宮収縮で前駆陣痛とも呼ばれる)。

6.プロラクチン

プロラクチンの分泌は、妊娠の早い段階で始まる。

妊娠中は増加を続け、産後も減らない。プロラクチンの仕事は乳腺の拡張と母乳の産生。母乳は、妊娠の終盤でプロゲステロンの量が減り、赤ちゃんが乳首を吸うと出る仕組みになっている。

プロラクチンの影響で、生理が不順になったり止まったりすることもある。

※この記事は当初、『Netdoctor』に掲載されました。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Medically Reviewed By Dr Juliet Mcgrattan (Mbchb) And Words By Pradnya Pisal Translation: Ai Igamoto