骨盤底障害は、出産や閉経を経験するまで知らずに過ごす女性が多い。でも、女性だけでなく、女性を相手にするトレーナーやコーチも知っておくべき大事な問題。今回は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから、トレーナーのブルック・ターナーがリポートしてくれた。

ブルックは骨盤底障害を抱える3児の母で、産前産後のエクササイズを教えている。今これを読んでいるあなたの姉妹、女友達、お母さん、おばあちゃん、おばさんも、たぶん何らかの骨盤底障害を抱えているはず。骨盤底障害は、驚くほど一般的。でも、それが普通というわけではないし、母親なら“なって当然”というわけでもない。

出産した女性の3人に1人は、尿漏れを経験する。尿漏れには、笑ったとき、咳やくしゃみをしたとき、ジャンプしたり走ったりしたときに尿が漏れてしまう腹圧性失禁と、自分で出したくても出せない尿が少しずつ漏れてしまう溢流性(いつりゅうせい)尿失禁がある。

女性の10人に1人は、尿失禁、便漏れ、腹部の膨張を経験する。

そして、出産経験のある女性の最大50%には、人生の異なるステージで、ある程度の骨盤臓器脱が生じる。

だからこそ、骨盤底障害に関する意識を高め、知識を共有して話し合うことが大切。そうすれば、ママたちが出産後も恥ずかしがらずに運動を楽しめるようになる。

骨盤底障害は尿漏れ、便漏れ、骨盤臓器脱、性機能障害、骨盤底の過緊張に発展することがある。骨盤底は、尾てい骨から恥骨にかけてハンモックのように伸びる筋肉と組織の層でできている。骨盤底筋は、膀胱、子宮、腸を支えてコントロールする一方で、性機能をアシストする。だから、骨盤底筋の機能は極力正常な状態に保ちたい。でも、骨盤底筋は妊娠、出産、生後期間、閉経によって弱くなり、深刻な問題を引き起こすことがある。

骨盤底筋が弱くなると、短・長期的な尿漏れや骨盤臓器脱のリスクが高くなり、骨盤の内容物や腰が支えられなくなってしまう。それが自信喪失やメンタルヘルス問題につながることも。そういった症状が見られる女性は、身体的および感情的な苦痛を感じ、自分の体に自信がなくなり、恥ずかしさから孤立して、どう頑張っても運動ができないように感じてしまう。

でも、失禁や骨盤臓器脱で悩む女性がトレーニングを楽しく続ける方法はあるし、それをサポートする仕組みもある。

骨盤臓器脱(POP)とは?

骨盤臓器脱は、骨盤臓器が下垂して、膣や肛門管から外に出てしまう疾患。骨盤臓器は、筋膜と腱によって骨盤の外壁にくっついている。この筋膜と腱が破れたり伸びたり、骨盤底筋が弱くなったりすると、骨盤臓器が下りてきて、膣や直腸から外に出てしまう。

骨盤臓器脱には複数の種類があって、重症度は4段階。軽度の骨盤臓器脱は、骨盤底のリハビリと適切な栄養管理・排泄習慣・エクササイズ、場合によってはペッサリー(足首サポーターの膣版)の使用によって対処可能。骨盤臓器脱の手術は、だいぶあとになってから再手術になる可能性が高いことで知られている。ブルックは患者さんの重症度よりも、生活の質と症状にフォーカスするようにしているという。

骨盤臓器脱のリスクが高いのはどんな人?

骨盤臓器脱のリスク要因は以下の通り。

・妊娠
・分娩第2期(子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間)が長時間(2時間以上)
・分娩第2期が急速
・赤ちゃんが大きい(4kg以上)
・介助分娩(鉗子や吸引)
・会陰裂傷や会陰切開術(特に第3度と第4度の裂傷)
・体重過多、肥満
・妊娠が2回以上で、いずれも普通分娩
・慢性的な便秘や排便時の頻繁ないきみ
・年齢(閉経前後)

分娩が骨盤臓器脱の原因として多いからといって誤解しないで! 帝王切開をしても、尿漏れや骨盤臓器脱の可能性はゼロにならない。帝王切開では、第3度および第4度の会陰裂傷、長時間または急速な分娩第2期、出産時外傷が防げるけれど、40週間の妊娠自体が骨盤底衰弱のリスク要因。

骨盤臓器脱のサインと症状

・空気がたまっている感じ(膣の中に風船が入っているような感覚)
・水がたまっている感じ(お風呂、プール、海から出ると、膣から水が流れ出る)
・腹圧性失禁や溢流性尿失禁
・膣や直腸が重い、膣や直腸にモノが詰まっている感じ、膣や腸を引きずっている感じ
・膣から塊が出てきている
・尿をうまく出し切れない
・性交痛
・尿路感染症に繰り返しかかる

1カ月あるいは1日のうちで、そういうことがときどきある? 症状は、月経周期のステージや運動の種類によって変わるもの。症状が出たからといって慌てる必要はない。こういった症状は、運動を完全にやめるのではなく、一旦あと戻りして、産前産後に詳しいトレーナーや理学療法士の助けを借りながら立て直しましょうというサイン。体の声に耳を傾けながら、ワークアウトをデザインしよう。

症状が出たら、どうしよう?

あなたは決して1人じゃないし、サポートは絶対得られる。骨盤臓器脱の診断と治療には検査が必要。リアルタイムの超音波検査や非侵襲的な内診で、ママとしての人生や産後の骨盤の健康管理をサポートしてくれる人を探そう。女性専門の理学療法士に相談するのは、あなたの子どもが6週間でも、6歳でも、26歳でも遅くない。

産後のエクササイズには、産前産後専門のトレーナーの助けを借りて。妊娠中のエクササイズは産後の骨盤の健康状態に大きな影響を与えるので、過小評価するのは禁物。骨盤底を中心に適切なエクササイズを行おう。

※統計はContinence Foundation of Australiaから。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Brooke Turner Translation: Ai Igamoto