リモートワークで子どもがいなければ、睡眠に充てられる時間が増えるはず。では、なぜ慢性的な疲労や無気力感、活力不足を訴える人が増えているのか? 寝つけないほど不安であれば、睡眠の質が下がって当然。でも、この問題にはリモートワークの環境も関係している。

「私生活と仕事の場所が一緒だと、寝る前にリラックスするのが難しくなります。私たちの脳は、特定の環境と特定の活動を結びつけるのが得意で、通常は会社を生産性、家をリラクゼーションと結びつけています」と説明するのは、寝具メーカー『Emma』専属の睡眠エキスパートで神経生物学者のヴェレーナ・セン博士。

「なにもかも同じ場所でしていると、その境界が曖昧になってしまうため、仕事が終わってもなかなかリラックスできなくなります」

じゃあ、どうすればリモートワーク中も必要なだけ寝られるの? 今回は、睡眠の質を高める7つのポイントをイギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。

1.境界線を引く

「自分のために明確な境界線/ルールを作り、それを可能な限り厳守することが大切です」とセン博士。

「朝は会社へ行くときと同じように着替え、寝室以外の場所で仕事をしましょう。なによりも重要なのは、ベッドではなく、デスクかテーブルで仕事をすること。自然光に近い場所なら体内時計が調節されて、夜の睡眠の質と量が改善します」

「大きな窓がないときや外に出る暇がないときは、人工の太陽光ライトを使ってみましょう。気分もよくなりますよ。また、ワークスペースを別に作れば、仕事モードに入りやすくなるだけでなく、夜、寝室に入ったときもリラックスしやすくなります」

2.夜更かしをしない

cheerful relaxed woman in her apartment having coffee
Martin Novak//Getty Images

リモートワークなら、起きてから10分でログインできる。でも、それは極力避けること。睡眠科学者のソフィー・ボストック博士いわく睡眠のサイクルは90分。「第1ステージでは眠りが浅く、簡単に起きられます。第2ステージでは睡眠が深くなり、心拍数と体温が低下して、呼吸のペースが遅くなります」

「入眠から約45分で訪れる第3ステージでは、ダメージを受けた細胞が修復されて体が回復します。そして、最終ステージのレム睡眠では夢を見て、第1ステージに戻ります」

睡眠は、夜の前半で深くなる(それゆえ目が覚めにくい)。だから深夜2時まで起きていると、後半の深い眠りを思う存分味わう前にアラームが鳴ってしまう。

1つのステージがほのステージより“ベター”というわけじゃない。どのステージにも重要な役割があるので、レム睡眠だけでなく、すべてのステージをカバーするのが理想的。

3.電子機器を手放す

大切な人と直接会って話す機会が減ると、LINEのグループチャットがライフラインのように思えてくる。でも、チャットに返信する時間帯は決めておいたほうがいい。

「寝不足であれば、電子機器を使った直後でも寝られるでしょう」とボストック博士。「でも、電子機器の使用を1時間やめてから寝たときに比べて、睡眠の質は間違いなく低くなります」

すぐに寝られたからといって、ぐっすり寝られたわけじゃない。就寝の1時間前には電子機器をスイッチオフしよう。

4.お酒を飲まない

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Tracey Kusiewicz/Foodie Photography//Getty Images

この状況では、お酒の力を借りたくなっても仕方ない。でも、お酒を飲むと睡眠の構造がメチャクチャになり、体を回復させるような深い眠りに入れなくなる。少しもの足りないかもしれないけれど、お酒の代わりにハーブティーやノンアルコール飲料を。

5.To-Doリストで頭をスッキリさせる

やるべきことがありすぎて真夜中に目が覚めるなら、寝る直前に翌日のTo-Doリストを作ってみよう。パンデミックに関する不安も書きとめておくといい。明日また見ればいいと思うだけで心が落ち着く。

6.運動してみる

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The Good Brigade//Getty Images

「少し前まで夜9時以降の運動は、体が温まるという理由から推奨されていませんでした。でも、これは人それぞれです」とボストック博士。「夜はヨガまでにしておいたほうがいい人もいれば、走ったって問題ない人もいます。自分の限度を知るために、いろいろ試してみるといいですよ」

7.スヌーズボタンを押さない

睡眠の質を高めたいなら、これは絶対だそう。ボストック博士によると、スヌーズボタンを押して寝たり起きたりを繰り返しても、どっちつかずでよいことがない。「“睡眠慣性”で頭がぼんやりすることもありますよ」。ちなみに睡眠慣性は1日中続くこともある。

心配しすぎは逆効果

「ひと晩眠れなかったからといって、世界が終わるわけではありません」とボストック博士。眠れないのが心配で、余計眠れなくなるのだけは絶対避けたい。

それに、もともと夜型で、朝よりも夜のほうが頭が冴える人もいる。ボストック博士によると、20代で概日リズムが落ち着いても、4人に1人は夜型のまま。

でも、リモートワーカーの大半は朝から仕事。どうすれば、朝ちゃんと起きられる?

「光を使ってください。生体リズムをなによりも強く動かすのは光ですから」。光目覚まし時計を買って、日中はできるだけ自然の光を浴びること。早めの朝食で体を起こすのも◎。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Claudia Canavan Translation: Ai Igamoto