• 最近、世界心臓連合(WHF)は「心臓の健康に良い飲酒量はない」とするポリシーブリーフを発表。
  • 以前の研究では、適度な飲酒は心臓の健康に役立つと指摘されていたが、新たな研究では、アルコール摂取はメリットよりもデメリットの方が大きくなる可能性があることが明らかに。
  • この問題は専門家の間でも物議を醸しており、正式な結論を得るためにはさらなる研究が必要。

夕食と一緒に赤ワインを嗜む程度の“適度な飲酒”は、ダイエットにおいて認められているだけでなく、心臓の健康にも役立つ可能性があると耳にしたことがあるかもしれない。実は今、この考えに異論が唱えられている。世界心臓連合(WHF)が、最近発表したポリシーブリーフの中で「心臓に良い飲酒量はない」と明言したのだ。

ブリーフによると、飲酒は心血管疾患、冠状動脈疾患、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、心筋症、心房細動、動脈瘤など多くの病気に関連しているとのこと。これによって2019年には240万人以上がアルコールで亡くなっており、この数字は全世界の死亡者の4.3%を占めるという。

待って、赤ワインと心臓の健康を結びつけていた研究は?

では、グラスワインには心臓の健康に役立つ可能性があるとしていたすべての研究はどうなのだろうか。WHFは、健康と適度な飲酒の間の関連性示す研究はあるものの、それらの多くは、基礎疾患や病歴など研究参加者の他のライフスタイル要因を説明できていないという。

「アルコールが活気に満ちた社会生活に必要なものとして描かれてきたこと、また、1日1杯の赤ワインのような適度な飲酒が心血管疾患に良いという主張が広く伝えられてきたことで、アルコール摂取の害から注意が外れていました」と述べたのは、WHFアドボカシー委員会のメンバーであり、プレスリリースで説明されたブリーフの共著者であるモニカ・アローラ医師。「これらの主張は、製品の危険性について公衆を欺くための、アルコール業界による誤った情報に基づいた最悪の試みです」

More than 2.4 million people died of alcohol in 2019.

そして、多くの医療専門家はWHFのブリーフィングに同意。米国心臓病学会で心疾患予防のための栄養とライフスタイルワークグループで共同議長を務めるアンドリュー・フリーマン医師は、少量のアルコールが心臓の健康にメリットをもたらす可能性があるという幾つかの研究があるとしても、飲酒は勧められないという。これは、過度の飲酒など他のリスクを伴うため。また、データ分析能力の変化に伴い、これまでのデータの信頼度も変化するため、古くから推奨されていたことが事実ではない可能性があることも珍しいことではないと続けている。

心臓の健康に対するアルコールの悪影響

米国農務省(USDA)は、合法的な飲酒年齢の人は飲酒を控えるか、適度に飲むべきだと述べている。適度な飲酒とは、男性の場合は1日2杯以下、女性の場合は1日1杯以下と定義されている。USDAガイドラインでは、「飲酒量を減らすことは、飲酒量を増やすことよりも健康に良い」とも示されており、新たなエビデンスによって、アルコール摂取量が多いほど、摂取量が少ない場合に比べて死亡リスクが高くなることがわかったという。

カリフォルニア州にあるメモリアルケア・ハート・アンド・バスキュラー・インスティテュートの心臓専門医であるジェニファー・ウォン医師もWHFの方針に同意。一部の研究ではアルコールが有益な可能性があると伝えられているものの、他の研究ではアルコールの摂取がガンや心臓の問題に関連していることがわかっていると述べた。

「概ね、私は(ポリシーに)同意できると思います」とウォン医師。「アルコール摂取による心臓とそれ以外の健康にリスクがあることは、長年わかっていたことです」

米国心臓協会(AHA)は、アルコール量が多すぎるとトリグリセリドと呼ばれる血中の脂肪が増加し、心臓発作や脳卒中のリスクが高まる可能性があると警告している。先頃、AHAは新たな研究を反映するために食事ガイドラインを変更し、アルコール摂取を減らすことを提案。加えて、米国臨床腫瘍学会によると、アルコール摂取は複数の種類のガンの危険因子になる可能性あることが研究で分かったという。

“We’ve long known there are hazards both cardiac and non-cardiac with alcohol consumption.”

ある研究では、適度な飲酒でも脳卒中や末梢動脈疾患のリスクが高くなることが判明。最近の別の研究では、適度な飲酒には健康上のメリットがあっても、女性が乳がんや結腸ポリープ、結腸ガンの発症、骨折を経験するリスクも高まることがわかったという。

アルコールによる心臓の健康のメリットはある?

米国疾病管理予防センター(CDC)は、過去の研究で適度な飲酒は心臓病のリスクを減らすなど、健康上のメリットをもたらす可能性があることを指摘している。ある研究によると、心臓病を患う人にとって適度な飲酒は保護効果があるかもしれないと示されているという。研究によれば、軽〜中程度の飲酒はすでに心臓病を患う人の心臓発作、脳卒中、死亡のリスクを減らすことができるとのこと。

さらに、米国心臓病学会は適度なアルコール摂取は、飲酒しない人や過度に飲酒する人と比較して、心血管疾患による死亡リスクが低いことを示す研究を発表。これは、適度なアルコールが脳から伝えられるストレス信号を減らすことに役立ち、心臓病のリスクを下げる可能性があるため。

加えて、飲酒が長寿に関連する証拠として、ブルーゾーン(長生きする人々が多い地域)について指摘する人も多くいる。これらの地域では、人々は主に植物由来の食事をとり、定期的に運動し、人とのつながりを保ち、そして適度に飲酒している、とフリーマン医師は述べている。しかし、アルコールの健康上の利点に関する多くの研究のように、次のような疑問は残っている。それは、健康に役立つ特定の種類のアルコールはあるのかということ、そして適度と過度の境目となる閾値はどの程度か、ということ。

赤ワインを例に考えてみる。ワインには心臓病のリスクを減らす可能性のあるフラボノイドと抗酸化物質が含まれるが、ウォン医師によれば、それらはブドウやブドウジュース、ブルーベリー、ピーナッツにも含まれているものだという。さらに、幾つかの研究ではアルコールがHDLコレステロールの増加に役立つことがわかっているが、ウォン医師は定期的な運動が同様の結果をもたらす可能性があることを示唆。つまり、適度な飲酒と健康の関連性についてはより多くの研究が必要のようだ。

結論

簡潔に述べると、幾つかの研究ではアルコールは健康に利益をもたらす可能性があると示されているが、全体的に見ればリスクの方が大きいということ。フリーマン医師は、研究には賛否両論あり、どちらの場合も明確な答えを出すにはあまりにも多くの疑問が残されていると述べた。

ウォン医師は、アルコールに頼らずに心臓の健康を向上させる方法として、1日あたり7〜8時間の睡眠をとり、マインドフルネスとリラクゼーション療法を実践し、毎週150分の中〜強度の運動を行うことを推奨している。

※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

Translation: Ai Ono  From Prevention

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Arielle Weg

Arielle Weg is the associate editor at Prevention and loves to share her favorite wellness and nutrition obsessions. She previously managed content at The Vitamin Shoppe, and her work has also appeared in Women’s Health, Men’s Health, Cooking Light, MyRecipes, and more. You can usually find her taking an online workout class or making a mess in the kitchen, creating something delicious she found in her cookbook collection or saved on Instagram.