「年をとるほど賢くなる」と言うけれど、エイジング&メンタルヘルス専門誌『Aging & Mental Health』掲載の新たな論文によると、これは私たちが「年をとるほどマインドフルになる」からだそう。詳しく見ていこう。

18~86歳の623名が参加した豪フリンダース大学の研究では、被験者が目標、総体的な健康状態、マインドフルな性質(“いま、この瞬間”に注意を払い、偏った判断をせずに受け入れるなど)、内受容感覚(寒い/おなかがすいたなど、体の中で起きていることに対する感覚)に関するアンケートに回答した。

その結果から研究チームは、“いま、この瞬間”に注意を払えば、加齢と共に健康全般が改善することを突き止めた。これはおそらく、年をとると、いままで以上に時間が限られていることを意識するようになるから。それが“いま、この瞬間”に感謝する気持ちを育み、結果的に総体的な健康とウェルビーイングを向上させるという仕組み。

「その結果、未来のことはあまり考えず、いまのことをもっと考えるようになります」と話すのは、この論文の共著者でフリンダース大学心理学部のリーアン・マフロ博士。「年を取ると、“いま、この瞬間”の出来事を心から楽しもうとする気持ちが生まれて、ありきたりな毎日に大きな意味や満足感が見い出せるようになります」

マフロ博士を含む研究チームを驚かせたのは、このターニングポイントが高齢期だけでなく中年期にも訪れるということ。中年期に入ると、若かりし頃に比べて、自分の経験によしあしをつける傾向が弱くなるそう。

この論文の共著者で、フリンダース大学心理学・社会福祉学准教授のティム・ウィンザー博士によると、マインドフルネスを心がけたり、ただ“いま”を意識したりすることに大きな利点があることは、過去にも実証されている。しかも、このシフトは、意図的にというよりも年をとることで自然に起こる可能性が高いというからありがたい。

「私たちはつい、老化のネガティブな側面ばかりを見てしまいますが、社会機能や感情機能は、年と共に改善することが分かっています」とウィンザー博士。「マインドフルネスを自然と意識できるようになるのは、加齢によって強化される側面の1つと言えるでしょう」

中年期を過ぎているのにマインドフルネスが意識できない、いまのうちからマインドフルに生きるスキルを身に付けたいという人は、洗い物や食事、ランニングなど日常的な活動の中で、主観的によしあしをつけることなく、自分の思考と周囲の環境に注意を払うことから始めてみよう。

「マインドフルネスはストレスを軽減し、前向きな気持ちを養うツールになります」とウィンザー博士。「習得すれば、パンデミックなど困難な状況にも、柔軟かつ楽観的に対応できるようになりますよ」 

※この記事は当初、アメリカ版『Bicycling』に掲載されました。

※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。

Text: Elizabeth Millard Translation: Ai Igamoto