今年の夏もマスク着用は必須のため、熱中症対策はいつもより徹底してほしい。コロナ禍での熱中症に関する知識や対策を把握していれば、楽しい夏を過ごせるのでは? そこで今回は、熱中症を予防するためのセルフチェックや運動時に注意すること、熱中症におすすめの食材を使ったレシピや飲み物について専門家よりご紹介。
【目次】
1.熱中症の症状
熱中症とは、熱によって起こる体の不調のこと。日射病ともいわれる。気温が高いと、体温を調節する体のメカニズムが狂い、体温を下げられなくなる。
熱中症の症状は気づきにくいが、脱力や倦怠感といった熱疲労の症状が30分以上続くとされる。
また非常に暑い環境に長くいると、体が熱に対処できなくなり、以下のような症状を引き起こす。
・過度な喉の渇き
・吐き気
・筋肉が痛み始める
・軽い頭痛
・心拍数の増加
・息切れ
メディカルケアサービスを提供する「Coyne Medical」の総合診療医、ルーシー・フーパー医師は、「体温が40度以上を超えると、細胞膜、あるいは外側の細胞層が損傷し、細胞の破壊を引き起こす恐れがあります。このような状態が組み合わさると、意識不明やこんすい状態、多臓器不全に陥りやすく、最悪な場合は死に至る可能性さえあります」と警告している。
参考記事: 夏を楽しむ前に。知っておくべき熱中症の症状・予防法・治療法
2.真夏に運動をするときの注意点
外に出るのを諦めて、エアコンの効いたジムで運動する必要はない。しかし熱中症になる確率は、男性よりも女性のほうが高いとか。予防をしっかり行えば、悪化を防ぐことは可能。フーパー医師の3つのアドバイスを参考にして、新鮮な空気を吸いながら体をシャープに鍛えよう。
①水分補給を徹底する
「運動前に、水分補給をすることが重要です。またマラソンなど長時間のイベントに参加する際は、水分を十分に補いましょう。でも、飲み過ぎないように注意してください。運動前は涼しい服装をして、冷水につかり、冷たい水を飲んで体を冷やしておくと、さらに熱中症予防に効果的です」
②運動しすぎないこと
「体調が優れないときや、病気から回復したばかりのときは、暑い中無理に運動するべきではありません」
服装は、汗を吸収して熱を放散しやすい素材を選ぼう。持病や服用中の薬に関して心配であれば、激しい運動を始める前に医師に相談すること。
③徐々に体を慣れさせていく
「高温環境での運動やイベントに参加する人は、あらかじめその環境条件に体を慣らしておくべきです」
暑い気候での運動に体が慣れるまで、少なくとも1〜2週間はかかるとのこと。最初は30分から始め、運動する時間を徐々に延ばしていくようにすると、体は熱を冷ます方法を自ら習得する。暑さに慣れる訓練は毎日するのが理想的だが、1日置きでも効果は得られるそう。
参考記事: 夏を楽しむ前に。知っておくべき熱中症の症状・予防法・治療法
3.熱中症の治療方法
「症状がこれほど深刻になると、すぐに冷却処置をとらなくてはなりません」とフーパー医師。
熱中症の疑いがあるとき、体に異変を感じたときには、国民保険サービス(NHS)が推奨する以下のステップに従おう。
1.涼しい場所に移動する。
2.横になり、足の高さを少し上げる。
3.水をたくさん飲む。
4.スプレーや、冷たい水をスポンジにぬらして体の熱を冷ます。あるいは、扇風機の風に当たる。冷湿布を脇の下や首元に当てるのも効果的。
30分ほどしたら、体の熱が冷めてくるという。それでも改善しない場合は、すぐに病院で診察を受けて。
参考記事: 夏を楽しむ前に。知っておくべき熱中症の症状・予防法・治療法
4.熱中症はどのくらいで回復する?
熱疲労の場合は、症状が最大30〜60分程度続くのに対し、熱中症はどんなに治療を早めたとしても、回復するまでおよそ2日はかかるという。もし臓器が損傷を受けていた場合は、回復までさらに時間がかかる。専門家によると、内臓が修復するまで1〜2カ月はかかるのだとか。
5.熱中症のセルフチェック
管理栄養士の足立香代子先生に、熱中症を予防するための2つのセルフチェックを教えてもらった。
1.毎日の排尿でチェック
「1日平均で6~7回程度排尿します。しかし、たくさん汗をかいていると排尿の頻度が減ってしまうので、1日6~7回より少なければ、水分が不足していると言えます」
2.尿の色をチェック
「人は普通尿の色が『濃い黄色』になっているときは、体が水分不足で体液が濃くなっている状態です。朝一番の尿が濃い黄色なのは、夜中に血液が濃くなった証拠です。日中の尿はやや薄めの黄色なら大丈夫ですが、濃すぎるのは水分不足かも知れません」
参考記事: 夏のマスクで熱中症のリスク増⁈ 症状・対策・おすすめ食品
6.熱中症対策におすすめの水分の摂り方
熱中症予防対策として水分補給は欠かせないけれど、その補給方法を間違えると、熱中症のリスクを高めてしまうのだとか。日常生活で気をつけるポイントについて、管理栄養士の渥美まゆ先生が教えてくれた。
①対策に最も重要な、正しい水分補給
水の飲み過ぎに注意し、水分補給は基本的に食事からしよう。
「水の飲み過ぎに注意が必要です。熱中症予防には水分補給が大切ですが、水ばかり飲んでいると、汗で失われたミネラルがさらに薄まって熱中症のリスクとなってしまいます。通常、1回の食事で500~700ml程度の水分がとれますので、水をたくさん飲むよりも食事から水分を摂ることが理想的。スポーツや屋外での作業を行う場合には、適宜、果物や経口補水液などをプラスして補給していきましょう」
人は睡眠中に 500~600ml の汗をかいているため、汗で出ている水分や栄養素を夜寝る前に補給しておくのがおすすめ。
参考記事: 夏のマスクで熱中症のリスク増⁈ 症状・対策・おすすめ食品
②トレーニング後はスポーツドリンク
スポーツ後の栄養補給はすごく大事。運動後の栄養補給水について、アスリートフードマイスターである村山彩さんが教えてくれた。
「スポーツドリンクは、研究されているだけに、バランスの良い栄養素が手軽に摂れるので、もちろん大きなメリットがあります」という。
飲料水にこだわらず、運動後30分以内のゴールデンタイム(体の修復・吸収が最も高まり、補給すべきタイミングで効率的にリカバリーできる時間)に摂れるなら、食品でもいいという。自分の体調にあわせて、栄養補給をしよう。
参考記事: 運動後のゴールデンタイムに飲むスポーツドリンクは本当に意味がある?
③汗をかいたら塩分
管理栄養士の足立香代子先生は、「汗をかくと水分と同時に塩分も排出され、塩分不足に陥ります。このようなときは、水分と同時に、塩分も補給すると良いでしょう。コップ1杯の水に食塩を2本の指で一つまみ入れたものを飲んだ時に、塩加減がちょうどいいと感じたら、塩分がたくさん失われている証拠です。塩分が濃いと感じるときは、実は塩分はそれほど失われていないかもしれません」とアドバイスしてくれた。
参考記事: 夏のマスクで熱中症のリスク増⁈ 症状・対策・おすすめ食品
7.熱中症対策におすすめの食事
①野菜と果物から”水分補給”
「食事から水分を補給するのに最も適した食材は、果物です。水分が多く、生で食べられるのでビタミンやミネラルの損失が少なくてすみます。また、スムージーやサラダなど応用範囲も広く使いやすいという利点もあります。塩と砂糖と水で作る手作り補水液が知られていますが、成分をピックアップして摂るよりも、複数のミネラルが入った自然の果物が、体にやさしく熱中症対策にはおすすめです」と足立先生。
②特におすすめなのが「キウイ」
熱中症対策としておすすめしたい果物は、キウイなのだとか。
「キウイは栄養が豊富で、カリウム、マグネシウム、カルシウムと熱中症予防に必要なミネラルがバランスよく含まれています。ただ、ナトリウムはごく微量なため、塩を少々ふってください。果物には基本的にナトリウムが含まれていないため、塩分はプラスして欲しいのですが、量は健康状態によって加減してください。キウイはビタミン、ミネラルがバランスよく含まれるだけでなく、食物繊維も含まれているため、美容と健康に欠かせない果物です」と渥美先生。
参考記事: 夏のマスクで熱中症のリスク増⁈ 症状・対策・おすすめ食品
8.おすすめ熱中症レシピ
①スポーツ栄養士おすすめ「グリーンスムージー」
スポーツ栄養学専門家であるマリサ・マイケルおすすめ、家で作れる簡単グリーンスムージーレシピをご紹介。
【作り方】
ケール(茎を除いたもの)30g、冷凍したバナナ1本、プレーンのギリシャヨーグルト 280g、牛乳120mlをミキサー入れて、ピューレのようになめらかになったら出来上がり。
※以下のフルーツや野菜で、カスタマイズして作るのもおすすめ!
・冷凍フルーツ:ベリー、ピーチ、ナシ、りんご、パイナップル、アボカド
・葉野菜:ケール、ホウレンソウ
・タンパク質:ギリシャヨーグルト、牛乳、プロテインパウダー、ひよこ豆、絹ごし豆腐
・その他:ナッツバター、シード類(チアシード、ヘンプシード、フラックスシードなど)、マッシュしたジャガイモやサツマイモ(クリーム状の仕上がりに)、デーツ、ココア、シナモン
参考記事: スポーツ栄養士が解説! グリーンスムージーの魅力と上手な飲み方
②材料は2つだけ! 春菊とキウイのサラダ
カロテンやビタミンB群、ビタミンC、鉄も豊富な春菊に、カリウム、マグネシウム、カルシウムが豊富なキウイを組み合わせた、栄養満点レシピ。
【材料】
キウイ1個、春菊50g、オリーブオイル 小さじ1/2、塩 適量
【作り方】
キウイは皮をむき、お好みの大きさに切る。春菊は葉をちぎり、茎は食べやすい大きさに切る。オリーブオイルと塩をかければ完成。
参考記事: 【藤田承紀の野菜たっぷり簡単ベジごはん】 栄養満点! 春菊とキウイのサラダ
9.コロナ禍での熱中症対策
・マスク着用について
マスクを着用すると、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかるという。そのため高温多湿でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるのだとか。屋外で人と2m以上離れている場合は、マスクをはずそう。
・喚起をする
室内の熱中症対策は、エアコンの使用が有効的。また、エアコンをつけている時も窓を開けたり換気扇を回したりして、ウイルス感染予防も忘れずに。
・涼しい場所に移動する
体調に異変を感じたら、無理をせず涼しい場所に避難して。もし人数制限などですぐ室内に入れなかった場合は、速やかに日陰や風通しの良い場所へ移動しよう。
参考記事: 厚生労働省
10.まとめ
しっかり対策をすれば、熱中症を予防し軽度で済ますことができる。室内にいる時は、喚起をしつつエアコンをつけよう。また猛暑での運動は、スポーツドリンクもしくは栄養補給をしっかり摂り、体調に異変を感じたら涼しい場所へ移動し休憩して。しっかり対策し、今年の猛暑を元気に乗り切ろう。
主にSNS周りを担当。オーガニック・ヘルシーフード・K-POPなどのリサーチ力が持ち味。オーガニックワイン、ヴィーガンフードなどのキーワードから、土壌を始めとする環境問題などにも興味を持ち、記事へとつなげている。 2022年までウィメンズヘルス編集部に在籍。