植物ベースの食生活&メリットとは?
これだけは知っておこう。
植物ベースの食生活は人気急上昇中。慈善団体『The Vegan Society』が2018年に収集したデータによると、肉や乳製品をはじめとする動物性食品の摂取を避けている人はイギリスだけで60万人。2006年の約15万人から大幅に増えているのは明らか。
科学情報誌『Science』に掲載された米オックスフォード大学の論文(2018年)によると、食生活から肉と乳製品を排除すれば、カーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)が73%も削減できるという。健康面だけでなく環境問題にも良い影響を与えるようだ。今回は、植物性食品をとるメリットについて、イギリス版ウィメンズヘルスよりご紹介。
植物ベースの食生活とは?
植物ベースの食生活は、フルーツ、野菜、ナッツ、シード、豆類、全粒穀物といった植物由来の食品を中心に食べること。
最近では“プラントベース・ホールフード”という言葉も頻繁に聞くけれど、これは最低限に加工された植物性食品を中心に食べ、ヴィーガンでもアンヘルシーな食品(ヴィーガンのビスケットやケーキ、代替肉を使ったベジソーセージなど)を避けることを意味する。
ヴィーガンと植物ベースの違いは?
ヴィーガンと植物ベースは混同されがち。でも、この2つの言葉には大きな違いがある。植物ベースの食生活では動物性食品が使われることもあるのに対して、ヴィーガンの食生活では動物性食品が絶対に使われない。ヴィーガンの人々は、動物由来のアイテムに断固NOと言う倫理的選択をしている。
また、植物ベースで対象となるのは食べ物だけ。でもヴィーガンになれば、美容アイテム(動物実験を行うメーカーからは買わない)や衣類(革製品は避ける)の選び方も変わってくる。
植物ベースの食品とは?
フルーツ、野菜、全粒穀物(キヌア、玄米、大麦など)、ナッツとシード、植物油(オリーブオイルやアボカドオイル)
栄養士のアンジェリーク・パナゴスによると、慎重に計画すれば、植物ベースの食生活でも必要な栄養素は全てとれるそう。「カラフルな野菜を幅広く取り入れた虹色の食事を心がけ、お皿の半分を非デンプン質の野菜、4分の1強をタンパク質、残りの複合糖質で埋めましょう」
タンパク質と聞けば肉と魚を想像するけれど、この栄養素はレンズ豆などの豆類、キヌア、セイタン、テンペ、豆腐からも摂取可能。前述の通り、植物ベースだからといって動物由来の食品が全面的にNGというわけではない。
植物ベースの8つのメリットとは?
1.寿命が延びる
肉や動物性食品の摂取量を減らすと寿命が延びることを示すエビデンスがあるそう。アメリカの中年成人2,168名を29年以上にわたって追跡した研究では、植物ベースの食生活により早死にのリスクが最大25%低下することが分かった。
2.環境にやさしい
動物性食品に植物性食品を添えて食べるよりも、食生活の大部分を植物性食品にした方が環境に良いという。世界で排出される二酸化炭素の4分の1は食品から来ており、そのうちの半分以上は動物性食品から来ている。「肉を食べるなと言っているのではありません。それ以外の選択肢がない人もいますから」と話すのは、スコットランドのアバディーン大学に在籍する環境科学者のピート・スミス教授。「でも、欧米諸国の私たちが肉を食べすぎているのは明らかです」
3.心疾患のリスクが減る
肉の過剰摂取が心疾患につながることを考えれば、植物の摂取量を増やすことで心疾患のリスクが16%減るというのも当然と言える。
4.2型糖尿病のリスクが減る
植物ベースの食生活は、インスリン産生と体重をコントロールしやすくするので、2型糖尿病の予防と治療に役立つそう。
2006年の研究では、高品質の植物ベースの食生活によって2型糖尿病の発症率が34%低下したそう。
5.お金の節約になる
自然食品を大量に購入しても、肉を買うより安いはず。冷凍の野菜(栄養価は生の野菜と変わらない)を買えば、さらに予算が削減できる。
6.血圧が下がる
植物ベースの食生活は、血圧にプラスの影響を与えることが分かっている。実際に高血圧の発症リスクが34%低下したという研究結果もあれば、少量の肉と乳製品を摂取していても(植物性食品が中心であれば)脳卒中や心臓発作のリスクや死亡率が低下することを示した論文もある。
7.活力が増す
植物ベースの食生活は活力を増進させるというエビデンスがあるようだ。
8.パフォーマンスが向上する
アスリートが植物ベースの食生活に転向するとパフォーマンスが向上するという。過去の論文によると、食生活から肉を排除してもパフォーマンスに悪影響は出ないそう。植物性栄養素の摂取を増やして加工食品の摂取を控えれば、酸化ストレスが減り、持久力が高くなることを示す研究結果も存在する。
植物ベースの食生活の3つのデメリットとは?
1.糖分と塩分の量に要注意
動物性食品の代替品には驚くほど大量の塩分と糖分が含まれているので、気を付けないと植物ベースの食生活に切り替えた途端、この2つの摂取量が高くなるという。塩分が健康に与える影響を周知する慈善団体『Action on Salt』の調査では、イギリスで売られている植物ベースのミールセットには、5つに2つの確率で100g中3g以上の塩分が含まれていた。これは高塩濃度のカテゴリーに分類される。成分表を読み、できるだけ自然食品のみを使った商品を選んで、加工食品を最低限に抑えよう。
2.栄養をとり損ねるかも
特定の食品群を食生活から排除するときは、必要な栄養をとり損ねないようにすることが大切。例えばステーキには鉄、セレン、ビタミンB12、ナイアシン、亜鉛がいっぱい。しかも、生体内利用率が高いため、栄養が素早く体内に吸収される。ステーキと同じ量の栄養を植物性食品から摂取することも不可能ではないけれど、食事の見た目がガラッと変わる。
3.意志の強さが試される
お肉が大好きな人にとって、植物ベースの食生活に転向するのは生易しいことじゃないけれど、そうでなければ意外と簡単。スムーズに転向したいなら、週に1日お肉なしから始めてみよう。それが楽しめる人は、そのまま継続すればいい。それがつらいなら、週に数日お肉なしで過ごせばいい。
不足しないよう気を配るべき栄養素は?
植物ベースの食生活から必要な栄養素を全て摂取することは間違いなく可能。でも、正常な身体機能に不可欠なビタミンD・B12、鉄、オメガ3の摂取量には注意して。肉と乳製品をカットした途端、摂取量が激減しがち。
ビタミンD
ビタミンDは日光から摂取するもの。でも、日照時間の短い寒い地域では摂取するのが難しい。ビタミンDが強化された食品(ミルク、シリアル、マッシュルーム、サプリメント)などで補って。
ビタミンB12
水溶性のビタミンB12は、体内の細胞の1つ1つに関わっており、神経や血球の健康に欠かせない。でも、ヴィーガンと植物ベースの食生活を送る人の92%にはビタミンB12が不足しているので、日頃から十分な摂取を心がけよう。肉と乳製品だけでなく、ビタミンB12は植物性の強化ミルクやサプリメントにも含まれている。
鉄
鉄が豊富な植物性食品には、レンズ豆、豆腐、カシューナッツ、チアシードなどがある。鉄は血球新生(特にヘモグロビンの産生)に必要になるけれど、ビタミンCが不足していると体内に吸収されない。
オメガ3
心疾患や高血圧の予防と管理に欠かせないオメガ3は、クルミ、チアシード、フラックスシードなどに含まれる。植物性のサプリメントを買うのも名案。
植物ベースの食生活はダイエットの味方?
体重過多でBMIを改善したい? フルーツと野菜の摂取量を増やすと同時に、肉をカットすることで塩分の摂取量を減らせば、体重は減りやすくなるそう。太りすぎの成人65名が植物ベースの食生活を1年間続けたところ、体重が平均4.2kg減ったという研究結果も存在する。ほとんどの野菜はGI値が低い(消化に時間がかかる)ことや、フルーツと野菜に含まれる食物繊維で満腹感が持続することも、植物ベースの食生活がダイエットに良い理由。
でも、減量だけを目的として植物ベースの食生活を始めるべきではない。メリットは他にもあるし、どんなダイエットプランを選んでも、食べ方に気を付けなければ結果は出ない。
1日のサンプルメニュー
栄養士のジェナ・ホープによると、バランスの良い1日のメニューとは…
朝食
全粒またはライ麦トーストにつぶしたアボカドとチリパウダー、ローストしたヒヨコ豆を乗せて。
間食1
西洋梨にカシューバターを塗り、シナモンをふりかける。
昼食
ローストしたパプリカ、玉ねぎ、ズッキーニとキヌアのサラダにタヒニドレッシングをかけて。
夕食
焼き豆腐に茹でた葉物野菜と玄米を添える。
間食2
ニンジンとキュウリをフムスにつけて。オートケーキにフムスのスプレッドを塗ってもいい。
植物ベースのおいしい朝食
新しい食事プランを始めたときは、なぜか朝食が一番大変に思えるけれど、植物ベースの朝食は決してワンパターンじゃない。
甘い朝食を楽しみたいなら、フルーツ入りのミューズリーにヨーグルトかミルクをかけて。オートミールもおすすめ。水か植物性のミルクを沸かして、フルーツ、ナッツ、シードなどを乗せるだけ。メープルシロップをかければ甘さも出る。
塩気のある朝食が好みならアボカドトースト。シード、調理済みのマッシュルーム、ホウレン草を乗せれば栄養たっぷり。ちょっとスパイシーにしたいなら、チリパウダーをふりかけて。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Rebecca Gillam Translation: Ai Igamoto
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