プロのトレーニングに負けないほど過酷。
「エベレスティング」はサイクリストとランナーを熱くさせる最新のトレンド。世界一高い山から名前を取ったエベレスティングのルールは簡単。丘を見つけ、できるだけ速く登って下りてを繰り返し、登った距離を合計8,848m(エベレストの標高)にする。今回はエベレスティングについてご紹介。
エベレスティングに初めて挑んだのは、イギリスの登山家ジョージ・マロリー(彼の祖父は同姓同名で、著名な冒険家かつエベレスト登山家)。1994年、マロリーはオーストラリアのドナ・ブアン山で1,069mの距離を8往復した。これほど過酷な性質を持つエベレスティングに挑むのは、主に一流のプロアスリートたち。でも、近所の小さなスペースでしかエクササイズが許されなかった長いロックダウンを終えたいま、無数のアマチュアサイクリストもおとなしくしてはいられない。ランニング・サイクリングアプリ『Strava』のエベレスティング・チャレンジの参加者数は、2020年から600%増加して歴代最多を記録した。
エベレスティングの“管理人”は『Hells 500』という豪メルボルンのサイクリングクラブ。参加者は世界中から好きな丘を選び、登った距離が8,848mになるまで登り下りを繰り返す。結果は自分で『Hills 500』のウェブサイトに提出し、それが認定されたら殿堂入り(これだけで世界中のアスリートから認められる)。完走者には『Hills 500』オリジナルのエベレスティングキット(有料)の購入権と、チャンピオンの称号を得るチャンスが与えられる。でも、「ファステスト・ノウン・タイム」(登頂までの速さを競うチャレンジ)と同様、トップに君臨し続ける人はいない。
もともとサイクリスト向けのチャレンジだったし、いまも参加者にはサイクリストが多いけれど、ランナー向けの「エベレスティング・ラン」も同様にタフで、近年人気を集めている。エベレスティング・ランでも合計8,848mを登らなければならないけれど、往復と片道のオプションから選べる点でサイクリストの場合と異なる。往復の場合は足だけで登って下りるのに対し、片道の場合は足で登って別の方法(バイクなど)で下りてくる。
V(バーチャル)エベレスティングは、サイクリスト向けのエベレスティング・ライドに似ているけれど、バーチャルトレーニングシステムの『Zwift』または『RGT』を使って行わなければならない。また、勾配を100%(マックス)にセットして、チャレンジの当日にはライダープロフィールに正確な体重を登録する必要がある。
「エベレスティング10K」はエベレスティング・ライドよりさらにタフなチャレンジ。ノンストップで10km以上の上り坂を走る必要があり、時間制限も最低距離もないけれど、途中で寝ることは許されない。「エベレスティング・ローム」では、10km以上の上り坂を36時間以内に走る。最低距離は400kmで仮眠はOK(ただし、寝ている時間は36時間から引かれる)。
ランニングとサイクリングの結果は『Strava』に記録しなければならない。vエベレスティングの場合は『Zwift』か『RGT』に記録を残す。サイクリストは1回で最低8,848mの上り坂を走り、ランナーは1回で同距離のトラック、山、階段、橋などを駆け上がる。途中で休んでもいいけれど、これは結果に反映されるので、休憩が少ないほうが勝者になれる確率は高い。8,848mを超えて10,000mに到達した参加者には、その時点で「エベレスティング10K」の参加権が付与される。電動自転車やリカンベントバイク(あおむけに寝た姿勢で乗る自転車)は、特段の理由がない限り使用不可。片道のエベレスティング・ランでは走って上るのが条件。でも、下りは車やシャトルバスなどで下りて来られる(その間はトラッキングデバイスを止めること)。
2020年のエベレスティング・ライドの記録保持者には、ラクラン・モートン(7時間29分59秒)や英モータースポーツショー『Ground Tour』で7回優勝のアルベルト・コンタドール(7時間27分20秒)、アイルランド人サイクリストのローナン・マクラフリン(7時間4分41秒)がいる。同年のエベレスティング・ランの記録保持者は、北アイルランド出身ランナーのイアン・ベイリー(11時間17分)とカナダ人アドベンチャーレーサーのライアン・アトキンス(11時間30分)。ちなみに、プロをリーダーボードから外したいなんていう夢は、エベレスティングのウェブサイトを見れば一瞬で消えるー「エベレスティングの記録は、高度なトレーニングを受けた熟練のプロサイクリストにしか打ち立てられない。でも、国別、年齢別、テレインタイプ別の記録を更新する可能性は、アマチュアにも残されている」。つまり、上位に入ることはないけれど、友達には勝てるかもしれないということ。
入念なトレーニングを行い、万が一の備えを十分にして、エベレスティングのウェブサイトにある安全に関する大量のアドバイスを心にとどめておかないと、危険な目に遭う可能性はある。寝不足で孤立無援のルートを走るときは特に注意が必要。そのため『Hells 500』は、複数のエベレスティングに対し2時間の睡眠時間を付与するなどの安全策を追加した。サイクリング、ランニング、バーティカルライドではいまも男女の最速タイムが確認・認定されているけれど、それ以外の記録は認定対象じゃない。分別を失わず、トレーニングを怠らず、「山から無事に下りてこないと意味がない」ことを覚えておいて。
※この記事は、ランナーズワールドから翻訳されました。
Text: Mollie Mcguigan Translation: Ai Igamoto
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