一生に一度は聞く“太もものスキマ”という言葉。2012年にSNSで大流行してからは、すっかり常用語句の1つになった。グーグルで検索すれば、関連するウェブページが4千万件も表示される。YouTubeで、効果が実証されていない“内もも痩せエクササイズ”のブラックホールに吸い込まれたことがある人もいるかもしれない。

“ヒップディップス”(お尻のくぼみ)をはじめとして、世間は辞書になくていいような言葉を生み出すのが大の得意。今回は、“太もものスキマ”について知っておいてほしいこと、そして、そのスキマを必死で作ろうとすることが非現実的かつ危険な理由をイギリス版ウィメンズヘルスから見ていこう。

太もものスキマとは?

太もものスキマは、足を揃えて立ったときに左右の太ももの間にできるスペースのこと。ここ数年、SNSやセレブたちは太もものスキマを健康や魅力の指標として騒ぎ立てているけれど、実際は、そのどちらでもない。太もものスキマは、その人の遺伝的素因(体が脂肪を溜める部位)、現在の体組成、体脂肪率、骨格が組み合わさってできるもの。

ここで1つハッキリさせておきたいのは、太もものスキマがあるかないかで、あなたの健康や体の強さ、人間としての価値が決まるわけではないということ。私たちの体と人生は1つひとつ違うので、人にあって自分にないものを望んでも仕方ない。目を向けるべきなのは自分の体の見た目ではなく、その能力。

太もものスキマの有無はなにで決まる?

「内転筋(太ももの内側の筋肉群)の位置と骨盤の形状によっては、比較的スリムな人でも太もものスキマがないかもしれません」と話すのは、総合診療医でスキンクリニックCosmedicsメディカルディレクターのロス・ペリー医師。

「これは、太もものスキマの有無が体脂肪の量だけでなく、大腿骨頭(太ももの上端にある骨)の長さに対する股関節の幅にも関係しているからです。太もものスキマの有無のほとんどは、その人の遺伝、骨格、体脂肪によって決まります」

「特定のエクササイズでスキマができる」というデタラメも信じないで。そんなエクササイズは存在しない。太もものスキマは無数のランジやクラムシェル、内ももや太もものエクササイズではなく、ペリー医師が説明してくれた理由によってできるもの。

※英国看護協会は2015年、20~40歳の女性の健康的な体脂肪率を15~31%とした。

太もものスキマは誰にでもつくれる?

ひとことで言えばノー。だって私たちの体は1つひとつ違うから。

「骨格と遺伝によって自然と太もものスキマができる人もいます」と説明するのは、美容クリニックHealth & Aestheticsメディカルディレクターのレーカ・テイラー医師。

「でも、ほとんどの人は骨盤から股関節にかけての幅が狭すぎて、左右の太ももの間にスキマができません。しかも、女性は運動をして健康的な食生活を送っていても、太ももに脂肪が付きやすいです」

むしろ、太もものスキマができるほど体脂肪を減らすのは非常に危険。遺伝や骨格の関係で自然とスキマが生じるタイプじゃない人の場合はとくに危ない。

女性専用リフティングジムGirls Who Liftの創業者でパーソナルトレーナーのアビ・ハーディーは「そういう人が太もものスキマをつくるためには、自分を自分で飢えさせて、危険なほど不健康なレベルまで体脂肪を落とさなければならないでしょう」と話す。「少数の人は、骨格や生まれつき体脂肪が少ない関係で、健康を犠牲にすることなく太もものスキマを維持できます」

太もものスキマをつくる代わりにするべき4つのこと

ここまでで、太もものスキマを健康の定義にするべきじゃないことは分かったはず。もっと追いかける価値のある目標は他にある。体の強化や新しいスキルの習得など、心と体の両方を元気にする目標を見つけるのは、とても大事。

1.新しいことを学ぶ

「測定可能で目に見える目標を立てましょう。ハンドスタンドをマスターする、といった新しいスキルの習得を目指してください」と話すハーディーによると、あなたがいま得意なことに磨きをかけるのも立派なスキルの習得になる。

宅トレ用の器具がある人は、レジスタンストレーニングやダンベルを使ったエクササイズにトライしてみて。

2.体を強くする

目標を立てて、それを達成するのは本当に気分がよい。女性専用ジムStrongHer共同創業者のティグ・ホドソンによると、大事なのは目に見える指標(筋トレやリフティングで増えた筋量など)によって進捗をはかること。

見た目より「トレーニングで身に付いた自分の体の能力を考えたほうが、メンタル的にはよっぽどいいですからね。一例として、1週目はバーベルスクワットで25kgしか上げられなかったのに、数週間後には35kgも上げられるようになったというのは、筋力が増えていて、あなたがフィジカル的にもメンタル的にも強くなっているということです」

ホドソンと共にStrongHerを立ち上げたサム・プリンも、見た目ではなく「自分が“どれだけ”できるかを考えるようにしてください」と強調する。

3.自己記録を更新する

達成感を味わったことのある人は、新しい目標が大きなモチベーションになるかもしれない。ランニング愛好者なら、5kmの自己記録更新を目標にしてみよう。筋トレが好きな人は、デッドリフトの重量を増やしたり、プルアップの練習をしたりしてみて。大丈夫、やろうと思えばなんでもできる。

4.まずは基本をマスターする

ペリー医師によると、どんなことでも、まずは基本をマスターするところから入るといい。「私は総合診療医として、健康的な生活を送るようアドバイスしています。水をたっぷり飲んで、バランスのいい食事をとり、毎日なんらかの運動をしてください」

こういった基本をマスターするというのはステキな目標。とくに、モチベーションのアップダウンに乗じて“やるなら全部やらないと意味がない”というメンタリティに陥ってしまう人は、この点を意識してみて。

危険な“内もも痩せエクササイズ”の代わりにしてほしい下半身のエクササイズ6選

グーグルで“内もも痩せエクササイズ”を検索するのは、もう終わり。その代わりに下半身の基礎的なエクササイズで筋肉を付け、骨と神経系の健康を維持しよう。

1.フォワードランジ

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  1. 背筋を伸ばして、体幹をキュッと締める。腰に手を当ててバランスを取る。
  2. 右足を大きく前に一歩出し、ヒザを曲げて太ももを床と平行にする。左のかかとは床から浮いてもいいけれど、左ヒザは床に付けないで。
  3. 右足を元に戻して、今度は左足を大きく一歩前に出す。左右交互に同じ数だけリピート。

2.スクワット

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  1. 足を腰幅に開いて立ち、ヒザを曲げてスクワットポジションをとる。このときヒザがかかとより前に出ていないことを確かめて。
  2. かかとで地面を押すようにして体を押し上げ、まっすぐ立ったら臀筋をキュッと締める。これをリピート。

3.相撲スクワット

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  1. つま先を少し外に向けて立ち、ヒザを曲げて太ももを床と平行にする。
  2. かかとで地面を押すようにして体を押し上げ、ヒザを伸ばしてスタートポジションに戻る。

4.ダンベルステップアップ

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  1. 片足をステップに乗せ、かかとを浮かせずピッタリ付ける。このときヒザは少し外に向いているべき。
  2. 背筋を伸ばして、反対の足をステップに乗せる。
  3. 体幹を締めてヒザを伸ばし、ステップの上に立つ。
  4. 肩を丸めず頭を上げて、片足ずつ、ゆっくりと地面に下ろす。

5.ルーマニアンデッドリフト

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  1. 足を腰幅に開いて立ち、ヒザを軽く曲げる。それぞれの手にダンベルを持ち、手のひらを太ももに向けて股関節の前に添える。
  2. 背中をニュートラルな状態にして左右の肩甲骨を寄せ、お尻を後ろに押し出していく。
  3. ダンベルを体から離しすぎずにスネの前まで下ろていく。ダンベルがヒザを過ぎたら、それ以上お尻を下げないで。
  4. 背中をニュートラルな状態に保ちながら、かかとで地面を押すようにして立ち上がり、一番上で臀筋をキュッと締める。

6.デッドリフト

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  1. ダンベルをオーバーハンド(順手)で持ち、体の横に添える。足を腰幅に開いて立ち、ヒザを軽く曲げる。
  2. ヒザを曲げると同時に上体を股関節から前に倒し、床とほぼ平行にする。ことのきダンベルはヒザとスネの前にあるはず。背中は丸めず、ニュートラルな状態をキープして。
  3. お尻を前に押し出して臀筋をキュッと締め、かかとで地面を押すようにして立ち上がる。これで1回。
     
    ※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

    Text: Morgan Fargo Translation: Ai Igamoto
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Morgan Fargo

Morgan Fargo is a freelance beauty and wellness editor. Her CV includes Women's Health Magazine UK (and sister publication Women's Health Australia), Stylist Magazine and more.


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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。