「素直なわたしになる」をコンセプトに、ハーバルドリンクを通して健康を考える機会をつくり、ふっと力を抜いた生き方を提案している「Verseau(ヴェルソー)」。ミヤシタパークにある「EQUALAND」でのワークショップや、大手ブランドの展示会にてケータリングを行うなど、さまざまな場所でハーブの魅力を伝えている。「ヴェルソーはすべて自分の体験から生まれたもの」と話す、主宰でハーバルスタイリストの村田美沙さん。自身の考えや価値観を表現するものとしてブランドを持ち、共感する仲間とプロジェクトを実行する彼女のこれまで、そしてこれからとは。

「わたしは弱い」を克服するために

今でこそセルフケアのメソッドとして定着しつつあるハーブティーだが、高貴だとかケーキと一緒に飲むものといったイメージが強く、日常的に取り入れている人はそう多くない。「ヴェルソー」が提案するのは、日本人がほっと一息つくときお茶を飲むように、ハーブティーを暮らしの中に選択肢のひとつとして持つこと。とはいえ、村田さん自身はじめからハーブが身近にあったわけではなかったという。

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赤ちゃんの時にアトピー性皮膚炎を発症、食べ物のアレルギーも多かった。学校のクラスでも1人だけお弁当を持参していったり、かゆみを我慢したりという日々が続き、いつからか「わたしは弱い」とコンプレックスを抱くように。社会人になりアレルギーや皮膚炎も少しずつ落ち着き始めていたころ、今度は精神面からくる湿疹に悩まされた。

かゆいから落ち込むというより、子どものころに感じていたコンプレックスが自分のなかでまた湧き出てきて。“やっぱりわたしは弱いんだ”と他の人のようにいかない自分に嫌気がさしていました。ただ、子どもの頃と社会人になった時とでは、自分で調べて選択できるという自由度が圧倒的に違うことに気づいたんです」

以前は症状が出ると、家族に連れられて病院へ行き、処方された薬を飲んだり塗ったりするのが当たり前。でも自分でお金を出せるようになると、自分の健康を維持するための方法をとことん調べて実行した。ヨガや加圧トレーニング、フルマラソンに挑戦したり、漢方の専門店に足を運び煎じ薬を処方してもらったり。思いつく限りのことを試してみたけれど、効果を実感するものと、20代の経済力で継続できることが伴うものはなかなか見つけられなかった。

 

それでもリサーチしつづけていた時に出会ったのが植物療法。「もしかしたら……」という思いで参加した植物療法のクラスでは、ハーブティーを飲んだり、アロマオイルで外用薬を作った。すると、それまで抱いていたハーブへのイメージが覆されていったとか。

「貴族の嗜好品という印象を持っていましたが、ハーブティーは案外おいしいし、香りがいいからテンションも上がっていくのを実感しました。何より、植物の力を借りてホリスティックに心も体も向上していくという、植物療法の概念が好き。わたしが病院で処方されていた薬は、一つの症状を素早くキュアするものの、その代わりに肌の色が変わる、副作用が出るなど、本当にわたしは良くなっていっているの? と疑問に思うものも。ゆっくりでもいいから、全体的にいい状態を目指していくならハーブかも、と植物療法を勉強し始めました」

素直になったとき、うまくいく

会社員を続けながらハーブを勉強し始めた時、その後のキャリアについても考え始めていた。当時はアパレル会社に勤めており、国内外の生産工場で監査や指導をしていた村田さん。人間関係にも恵まれ楽しんでいたものの、現場で目の当たりにした大量生産大量消費の現実にもどかしさを感じていた。

「これからの人生どうしよう、と考えた時に自分のお金や時間を投資するならハーブがいいと思ったんです。何か計画があったわけではないけれど、思い切って会社を辞めて、当時勉強していたフランス式の植物療法を学ぶためにヨーロッパへ行きました」

 

約5カ月半の海外生活では農家をしている家族のもとで住み込みで働いたり、植物療法の先生に会いに行ったり。日本では起こらないようなアクシデントにも何度も遭遇した。そんななか、一番驚いたのは、鼻炎や生理痛など日本で服用していた薬を詰め込んでいた袋をそっくりそのまま持ち帰ってきたこと。医療費が高く、なかなか病院に頼れない生活の中、自然とセルフケアへの意識が高まっていったそう。

「日本に戻ってから、どうして調子が良かったのかと振り返りました。日頃のケアで未病を防ぐことの大切さに気づくとともに、なにかを乗り越えた時はいつも自分が素直になっていたんだと自覚しました。体調を崩したら、体が感じている通りに休ませてあげる。困ったことがあったら、誰かに頼ってみる。自然にまかせて素直でいると、かつて感じていた“わたしは弱い”という思いはどこかへ行って、“なんとかなる、わたしは大丈夫!”って気持ちが高まる。そう気づくきっかけをくれたのはハーブです」

 

帰国後、自身の価値の変化や気づきを人に伝えたいと「ヴェルソー」を立ち上げた。村田さんは、「ヴェルソーを通して、弱さを強さに変えることが全てじゃないというメッセージを届けたいです。弱さを受け入れ、そのうえで自分なりの健康法やセルフケア方法を見つける提案をしたい」と話す。メンタルや体調が揺らいだ時、ハーブティーを飲んでみよう、オイルを塗布してみよう、と暮らしの中に素直になる時間を作ってくれるのが「ヴェルソー」なのだ。

持続可能であるために。国産ハーブへのこだわり

 

「ヴェルソー」のハーバルドリンクはパッケージのデザイン性や味はもちろん、こだわりの国産ハーブを使っている安心性も魅力だ。ハーブの本場であるヨーロッパ産でなく、なぜ日本のものにこだわるのだろうか。

「ハーブの味や香りは、生息している環境に大きく影響を受けます。わたしがヨーロッパ滞在中に触れたハーブは、水が少なくハードな環境で育っていたので味も香りも強かった。でも同じ産地の輸入されたハーブを日本で飲むと、それらが失われてしまっている気がしました。島国で水が豊かな土壌で育っている日本のハーブは、味も香りもまた違うものだけど、そこで育っているわたしたちの体に合うものは国産ハーブかもと思うようになりました」

 

村田さんは自身がつくるハーバルドリンクに使うハーブを実際に目で見るため、全国のハーブ農家のもとへ足を運ぶようにしている。それはハーブの生育環境を知ること以外にも、生産者と繋がることも目的にあるという。

「ハーブの需要はいま増えてきて、選択できる価格帯や種類が増えた印象があります。ですが、これを一過性のものにしたくない。ヨーロッパに比べ、国内のハーブ生産者は少ないけれど、一緒にヴェルソーを作っていくためには、彼らが抱えている課題や思いもきちんと知っておく必要があると思っています。プロダクトに落とし込む時やイベント等でお客様と話す時は、ブランドも生産者も長く持続していける形であることを心がけています

社会課題にも取り組むヴェルソーのこれから

 

今年、村田さんは東京から愛知・常滑市へ拠点を移した。ハーブを広める活動の他に、同じ価値観を持つ仲間と地域活性化や環境保護にも力を入れていく。

食や健康、地球環境やジェンダーなど、今ある社会課題は全て繋がっています。自分のブランドがうまくいけばいいではなくて、密接に関わるあらゆることを全体的に向上していけるような活動を続けていきたい。植物療法に学んだ価値観は、今やわたしの行動指針でもありますね

起き抜けの一杯や一日の終わりなど、日常に取り入れやすい飲み心地にこだわったハーバルドリンク「Akeru」と「Kureru」。その第二弾となる、新フレーバーがリリースされた。新しい生産者のハーブを加え、さらに飲みやすく、親しみやすい味わいに。詳細はオンラインショップから。

「Verseau(ヴェルソー)」
Webサイト/verseau-herb.com
Instagram/@verseau_herb

村田美沙
Instagram/@verseau_misa

Headshot of Sawako Motegi
Sawako Motegi
コントリビューティング・エディター

スポーツファッション・サステナブルの記事を担当。山梨県の富士河口湖町へ移住し、オンラインを駆使して取材活動を行う。フェミニズムや環境問題などの時事ネタやニュース、人を掘るのが得意。  2020年までウィメンズヘルス編集部に在籍。