タンパク質、脂質、炭水化物(糖質+食物繊維)は人間に不可欠な3大栄養素。そのうちの2つ(脂質と炭水化物)は悪者のように扱われているけれど、本来そんな扱いを受けるべきものじゃない。その証拠が欲しいなら、この記事で糖質にまつわる噂の真偽を確かめて。

噂その1:減量には低糖質ダイエットが一番

一見そう思えるかもしれないけれど実は違う。医学専門誌『JAMA』に掲載された論文によると、低糖質の食生活を送った人と低脂質の食生活を送った人の間では、1年間で減った体重に差がなかった。低糖質ダイエットを始めると、(グリコーゲンを保持しておくための)体内の水分が不要になるぶん体重が早く減る。でも、公認管理栄養士のケリー・ジョーンズによると、こうやって減らした体重や体脂肪が戻ってこないとは限らない。いかんせん、低糖質ダイエットは続けるのがかなり大変。「食事制限が多すぎると、リバウンドをする可能性が高いです」。それに、減量は人生で一番大事なことじゃない。「それよりも幅広い食材を取り入れたバランスの良い食生活、定期的な運動、健康的な睡眠習慣、ストレスの管理、メンタルヘルスのケアを通して、(心疾患や糖尿病、一部のがんに関連する)血圧、空腹時の血糖値、胴囲、コレステロール値といった代謝関係の数値を改善することのほうが大切です」と説明するのは、公認管理栄養士のハンナ・マギー。「そうすれば、体重の増減にかかわらず代謝に良い影響が表れます」

噂その2:炭水化物を食べると糖尿病になる

食物繊維は炭水化物の一種で、血糖値の調節を助ける。でも、世の中には、食物繊維が不足している人や好ましくない種類の糖(特に、甘い炭酸飲料、キャンディ、グラノーラバー、シリアル、加工食品に含まれる添加糖)を摂りすぎている人が多い。この手の糖はすぐに消化されるため、血糖値が急上昇して、糖尿病のリスクファクターである食べすぎや体重の増加を招く。よって、食べるなら消化されにくい物、具体的には食物繊維が豊富な食品(全粒穀物、フルーツ、野菜)や良質な脂質(サーモン、ナッツ、オリーブオイル)、タンパク質を中心に食べたいところ。「このバランスで食べる習慣がつけば、血糖値の調節に関わるホルモンが安定し、糖尿病のリスクが下がります」とジョーンズ。

噂その3:低糖質のほうがヘルシー

お肉ばかりで野菜やフルーツ、全粒穀物が少ない場合はヘルシーじゃない。ジョーンズによると、現代には飽和脂肪たっぷりの動物性タンパク質を摂りすぎている人が多い。それが問題にならないケースもあるけれど、飽和脂肪が多くて食物繊維が少ない食生活は心臓の問題を引き起こすことがある。公認管理栄養士のレスリー・ボンチによると、糖質は体の主要なエネルギー源なので、ヘルシーなタイプの糖質を制限すると骨や腸だけでなく、活力レベルにも悪影響が出るかもしれない。事実、低糖質で動物性食品が多い食生活は全死因死亡率を高めるというエビデンスも存在する。ジョーンズによると、特定の食品を排除するより、食物繊維(フルーツや野菜)、ヘルシーな脂質(アボカドやオリーブオイル)、タンパク質(サーモンやナッツバター)を含む満足度と栄養価が高い食品を摂取することのほうが大切。このような食品を積極的に摂取すれば、加工食品や甘い糖質の摂取量が自然と減るもの。

噂その4:糖質に手が出るのは意志が弱いから

実際は、あなたの体が脳内化学物質セロトニンの不足を知らせてくれているのかも。ダイエットありきの現代社会には、糖質を欲しがる自分を非難する人が多い。でも、糖質を摂取すると脳に取り込まれるトリプトファンの量が増え、それが気分、睡眠、体温、空腹感の調節に役立つセロトニンの分泌を促進させる。米クリーブランドクリニックによると、セロトニン不足は不安やうつ、睡眠や消化器系の問題に関連している。糖質を摂取すれば一発でセロトニン値が上がるわけじゃない(セロトニン値を上げるためには日光浴や運動も取り入れてほしい)けれど、糖質を禁じる必要はない。ジョーンズによると、おなかと気分の両方を満たしてくれるタイプの糖質を選び、タンパク質や脂質と組み合わせれば、満腹感と活力が持続する。

噂その5:炭水化物は腹持ちが悪い

全部が全部そうではない。食物繊維が少なくて消化されやすい炭水化物は、食物繊維が多い炭水化物ほどの満腹感をくれないので、クラッカーや白米を食べたあとはすぐに小腹が空くかもしれない。でも、全粒穀物や非加工の炭水化物を選べば、おなかはちゃんと満たされる。コペンハーゲン大学の論文によると、豆のように糖質と食物繊維が豊富な植物性タンパク質は、豚肉や子牛の肉より腹持ちがよい。また、ボンチによれば、食物繊維が豊富な炭水化物、脂質、タンパク質を同時に摂取すると、食後の満足度が3倍になる。ボンチが好んで食べている炭水化物、脂質、タンパク質のコンボメニューは、卵とアボカドを乗せた全粒トースト、ベリーを添えたギリシャヨーグルト、食物繊維が強化されたシリアルとナッツ、ビネグレットソースをかけたツナ、ヒヨコ豆、ミニトマトのパスタサラダ。

※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。

Text: Kate Rockwood Translation: Ai Igamoto

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Kate Rockwood

Kate Rockwood is a freelance writer based in New York. 

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伊賀本 藍
翻訳者

ウィメンズヘルス立ち上げ直後から翻訳者として活動。スキューバダイビングインストラクターの資格を持ち、「旅は人生」をモットーに今日も世界を飛び回る。最近は折りたたみ式ヨガマットが手放せない。現在アラビア語を勉強中。