イギリス版ウィメンズヘルスのエディター、ロイシン・ダーウィッシュ・オカーンはウィメンズヘルスの編集者という立場でありながら、ヘルシーな食生活を送れている自信はなかった。そんな彼女の元に舞い込んできた“1カ月テイクアウト生活を送る”という企画。今回は実施した結果をリポートしてくれた。

パンデミックが心と体に与えた影響は大きなものだった。それでも、仕事ができないほど疲れていたわけではない。メールに返信し、記事のアイデアを売り込み、それを書き上げることもできている。

愛する人にはポストカードを送り、飲み会にも参加し、雰囲気を壊したり途中で寝落ちすることなくパークセッションにも参加していた。

私は、まあまあうまくやれている。どこかで癒やしを見つけながらなんとかやってこれたが、私の人生に入った亀裂はどんどん深まっていた。

ウィメンズヘルスの編集者をしていながら(ポジティブな習慣を構築し、それを継続して実践することで、人々が健康上の目標を達成できるように支援するポッドキャストを配信している)、最近の私のヘルシーな習慣はイマイチといったところ。

最小限の運動しかしていないし、メンタルヘルスを支える活動もときどき日常の中でといった感じ。でも、一番怠っていたのは食生活だった。

私は主に、トースト、オートミール粥、ピーナッツバター、リンゴ、スライスしたチーズを食べて生活していた。

みんなが家に来るときは、タイ料理をテイクアウトしたり、近くのレストランまで歩かせてパスタを食べに行ったりしていた。

こうして、冷蔵庫と冷凍庫を備えたキッチンを長い間放置して過ごしてきた。私はまだ、ちゃんとした良質な食事で自分を養う意志を持てずにいた。

すると、ある日一通のメールが届き、テイクアウトだけでヘルシーかつ品数の多い食事ができるかどうかを実験するために、イギリスのフードデリバリーサービス『Deliveroo』のテイクアウトだけで1カ月食事をしないかというオファーをもらった。私は興奮を抑えきれず、熱意を持ってこの企画に飛びついた。

内容はシンプル。毎日3食の食事に加え、軽食と飲み物を購入するのに十分な金額が毎週口座に振り込まれた。Deliverooで注文したテイクアウト以外は何も食べないという決まり。

私の仕事は馬鹿げている? この企画は少しやり過ぎなのでは? 断るつもりだった? 1人暮らしをしている身として、断るはずがない。

テイクアウトに頼りっぱなしでも、健康の目標は達成できる?

ウィメンズヘルスの編集者としてもっとも楽しい挑戦に挑む前に、肥満や摂食障害に問題を抱えている人を専門とする栄養士のキム・ピアソンに相談をしてみた。

まずは、私の目標について話した。私の健康を支えるには、停滞気味のエネルギーを高めて、食事に多様性を加えること(品数を増やすこと)。キムは、私と食べ物の関係性ついても尋ねた。

私は、18歳から25歳の間、摂食障害を患っていた。食べるものに強い執着心があり、特定の食べ物が自分の見た目に影響するだけでなく、食べ物自体にも影響を与えていた。食べ物に制限をかけ、ドカ食いし、嘔吐する。この繰り返しだった。

そのせいで、歯のエナメル質はすり減り、目の周りの血管も切れている。でもそれ以来、制限で失われた私の時間を取り戻すかのように、ポテトチップスやグミなど好きなものをいっぱい食べながら、癒やしと回復を得られ、食べるものへの過度な執着心はほぼなくなった。

夢中になれるものや自分の時間を充実させる新たな方法を見つけられた。食べ物は、体に燃料を与えるもの。食べるものを選んだり用意したりするのに苦悩や奮闘なんていらない。そして、快楽の源(苦痛を紛らわすためのもの)ではないことにも気づいた。

キムと電話を切ったあと、私は自分の住んでいる地域で一番ヘルシーなテイクアウトを食べることで、自分のためにおいしくて健康的な食事を作ることへの愛が再燃するのではないかと期待が膨らんだ。これで料理や作り置きを始める十分なきっかけになるかもしれない。

ではさっそく、私が食べたものや学んだこと、ヘルシーに食べるコツなどをシェアしよう。

1.テイクアウトにもヘルシーな選択肢が増えている

『Deliveroo』には現在、健康的なレストランが14,000件以上も存在し、2021年の8,200件に比べてかなり増加した。

Deliverooの広報担当者によると、「消費者の多くがお金の使い方に向き合わされている現状にいるなか、Deliverooでの注文は上昇傾向にあり、今年の上半期の注文は10%増加した」という。

「デリバリーサービスにおけるヘルシーな料理の注文に関しては、レストランでの注文に限らず、食料品カテゴリー全体でこのような上昇傾向が見られています」

私は個人経営店でテイクアウトを注文するのが好きで、どれを選んでも贅沢な気分を味わえた。サーモン寿司弁当(味噌汁付き)や、ジャパニーズマッシュルームの味噌ラーメン、レインボー豆腐サラダなんかは特に素晴らしかった。

あまりヘルシーとは言えないが、インド版のデニッシュパン“パロッタ”に茄子のインドカレー“バガール・エ・バインガン”をつけて食べるのもおいしかった(80/20ルールを忘れないでいる)。

でも、友人の家でブランチを注文したときは、残念ながら状況が違った。

人気で有名なカフェはほとんどのメニューが売り切れていたので、ヘルシーでも何でもない近所のレストランからなるべくヘルシーなメニューを注文した。レタスとトマトとキュウリがサンドされたチーズトーストに、付け合わせはサラダをチョイス。

2.野菜たっぷりのジュースやスムージーを注文する

かなり気合いを入れて探す必要があるけれど......。コールドプレスジュースや搾りたてのジュースは、朝食やランチを注文できるカフェでよく利用できたが、異様に甘すぎた。これに対し栄養士のキムは、血糖値スパイクが起きるため、仕事への集中力や生産性が低下し、仕事後にヨガのクラスに参加する気力すら失くす恐れがあると注意を促してくれた。

ショウガいっぱいの野菜と柑橘類をベースにした 『Dr Green』のジュース は、カフェインを含まない完全なエネルギー増強剤だった(ストローで飲むのことを忘れずに。レモンは歯のエナメル質にダメージを与えてしまう可能性もあるから)。アボカド、ほうれん草、ケール、ライム、ミント、抹茶のスムージーはとっても素晴らしかった。水分補給ができるうえ、おなかが空いていない日の朝食に最適な選択肢だった。

3.朝食にテイクアウトはもう利用しない

これには、いくつか理由がある。まず、はっきり言って究極の朝食メニューである卵はテイクアウトに向いていない。食べられるけれど、ポーチドエッグは冷えてベチャベチャになっていた。これは、キッチンからテーブルに運ぶ短い移動の間にも起こり得ることなのに、1キロほどの距離を車で走らせ、私の玄関まで届けられる頃の朝食の状態は、もう言うまでもない。

キムが勧めてくれた、ネギ、スライスしたラディッシュ、ゴマを乗せてライムを絞ったアボカドトーストも注文してみた。フォトジェニックでおいしかったけれど、テイクアウトにトースト? ちょっと馬鹿げている気がした。あまり料理ができない私でも、トーストくらいなら作れる。

牛由来とココナッツ由来のヨーグルトポリッジもいくつか注文してみた。でも、思った以上に甘かった。ポリッジの成分表をキムに送ったところ、次のように指摘された。ヘルシーだと思われているアガベシロップにはブドウ糖果糖液糖の含有量が多いため、おそらく朝食で最も避けるべきもの。

卵も砂糖も不使用で、ペイストリーでもなく、「自分で作れたのに」とすら思わせない唯一の朝食は、チア・ポットだった。バニラ、カカオ、ヘーゼルナッツのフレーバーと、ココナッツと抹茶のフレーバーはおいしかった。でも、フローズンブルーベリーと植物由来のプロテインパウダーを混ぜて60秒で作れるオーバーオーツを食べたときのような満足感を与えてくれるものではなかった。

4.ゴミが増え、使い捨て容器を減らす努力をするのが難しい

テイクアウトをしている1カ月間のリサイクル用のゴミ箱はすぐに満杯になっていた。残念ながら、ゴミ箱も同じだった。

段ボールやリサイクル可能なプラスチック包装で料理を提供する店もあったけれど、ほとんどの店では提供されていなかった。Deliverooは、テイクアウト店における持続可能な基準を設けることについて以下のように話している。

「Deliverooでは、コミュニティーファンドから最大250万ポンドを投資し、約1700万ユニットの持続可能なパッケージの調達を補助することで、持続可能なパッケージの使用を奨励しています」

「これは、ヨーロッパ市場(イギリスとアイルランドを含む)の小規模なパートナーを対象に、持続可能なパッケージのコストを50%割引で提供するサポートから開始します」

このインセンティブと並行して、プラットフォームを介して発生するプラスチック廃棄物を削減するための最適な目標の開発にも取り組んでいるという。

5.ヘルシーなテイクアウトは、マインドフルに飲酒する目標にも役立った

この1カ月のテイクアウト期間は、カクテルやワインボトルを開けて飲みたくなる衝動にあらがうことは、はるかに容易だった。日々の経験の斬新さが大きな役割を果たしてくれたことに間違いはない。その大部分は、おいしくてヘルシーな食べ物で自分を満たす喜びを再発見できたことにあると思う。

金曜日の前夜はいつも疲れ切っていて、お酒を飲むことが多かった。だから、普段と同じように、お酒を飲む代わりに自分を甘やかすつもりでピザやタイ料理を注文した。

でもこの挑戦は、週の半ばにヘルシーな食事をとることの楽しさを私に教えてくれた。そして驚くことに、飲酒量を減らすという現在進行中の目標を貫くのにどれほど効果的であるかを知らされた。実際に、飲酒量を減らすことができている。

サーモンの刺身や枝豆サラダ、サーモンアボカド寿司は、木曜日の夜の脳をサポートし、落ち着かせてくれた。これは、冷えたワインやカクテルにはできないこと(おかげで金曜日も全力を出せている)。

6.カロリー表示がとても役に立った

今年の春、イギリスでは飲食店のメニューにカロリー表示が義務化された。過去にカロリーや食べ物に異常な執着心を持っていた私にとっては、かなり喜ばしいニュースだった。だって、レストランで食べるにせよ、テイクアウトにせよ、カロリーが高すぎるブランチやランチやディナーを誰が必要としているの?

一方で、カロリーの数字は、イギリスの摂食障害慈善団体『BEAT』が警告しているように、現在摂食障害と診断されているイギリスの125万人の人々に危害を加えるリスクもあるという。

でも、私にとって外食やテイクアウトは、80(健康的に食べる)/20(楽しむために好きなものを食べる)ルールの20のほうだった。ただ、自分のランチを誰かに作ってもらうときは、油を多く使ってほしくなかった。

栄養情報を共有することが法律で義務付けられていない小規模店は、多くの場合、カロリーを表示していない。この場合は、ヘルシーに食べる常識的な原則を採用するように、キムは私にアドバイスをくれた。

その料理にはタンパク質、脂質、複合炭水化物がバランスよく含まれているか、植物性食材がたっぷり使われているかを自分でチェックすることのほうが、カロリーを気にするよりも、はるかに賢い選択ができる。また、カロリーや脂肪が上乗せされるソースやドレッシングが加えられる料理を注文するときは、ソース類は別の容器に入れてもらうようにお願いするといいみたい。

7.一番注文したかった料理は自分で用意できるもの

1カ月のチャレンジが終わりを迎える頃になって、季節の地中海料理を提供する『Farmer J』を発見した。無駄にしてしまった時間を埋めるように、あらゆるペスカタリアンのコンボを試してみた。

トレイは3つのセクションに分かれていて、ふっくらと炊いた玄米の上に、メイン料理(コチュジャンサーモンや豆腐とライムの葉のカレーなど)をのせて、いろんな穀物を混ぜたホウレン草サラダもたっぷりと添えられている。

ピリッとしたシーザーサラダとケールスローに、ローストしたスイートポテトは、私がテイクアウトするときの定番メニューになった。

でも、生のサーモンだったり、私が気に入ったメニューは全部自分で準備できることに気づいた。だからさっそく、サツマイモとミックスベジタブルをまとめてローストし、たった4つの材料で作る自家製フレンチドレッシングをかけて、サラダを作ってみた。ゆで卵の作り置きもしている!

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: ROISIN DERVISH-O'KANE Translation: Yukie Kawabata

Headshot of Roisin Dervish-O'Kane
Roisin Dervish-O'Kane

As Women’s Health Senior Editor Roisín reports on healthcare and the booming culture around wellness - and hosts the weekly WH podcast, Going for Goal. Named the PPA’s Writer of the Year in 2018, her journalism entertains readers - and empowers them with the tools to perform - and feel - at their best.

Headshot of 川畑 幸絵
川畑 幸絵
翻訳者

短大卒業後バンクーバー、メルボルンで2年留学した後、外資系客室乗務員として勤務。2018年に退職後、翻訳者としてフリーランスに転身。アメリカで統合栄養学を学んだ経験もあり。