ジムに行くとすぐマシンに座ってトレーニング。限られた時間を有効活用するためにも、ウォーミングアップは最小限にしてトレーニングを始めるという人も多い。

軽い重量で簡単な動きをチェックするだけで、なかなかウォーミングアップに時間を割く人は少ないと語るのはパーソナルトレーナーの林健太さん。

「もちろんトレーニングは大切ですが、ウォーミングアップでその質は大きく変わります。行う種目や休憩時間などをうまく調整して、10〜15分程度でも行うようにしてみてください。競技やトレーニング内容にもよりますが、特にボディメイクなどを目標に高重量を扱ってトレーニングを行う人には必須です」

とは言うものの、ウォーミングアップに関する研究は多く存在しており、どこまでの効果が見込めるかはまだ明確になっていないのも事実。

ただ最も大切なことは、自身のパフォーマンスやトレーニング結果にどう結びついていくかを考えて取り入れること。

「長時間の静的ストレッチは筋力の低下につながるなどの懸念もありますが、正しいウォーミングアップは体温や直腸温を上げ、神経伝達速度を上げてくれます。特に寒い日はウォーミングアップを欠かさないようにしましょう」

①血流アップによる筋肉痛予防

sportswoman doing stretching exercise against sky during sunset
Maskot//Getty Images

トレーニング後の筋肉痛を早く治す方法をよく聞かれるという林さん。

頑張った証として心地よい反面、早く治してまたトレーニングを再開したいと焦る気持ちが湧いてくる。

筋肉痛があるから体を動かさないという人も多いですが廃物を流す上では軽く体を動かす方が理想的です。筋肉痛になってからの対処ではなく、筋肉痛になる前の予防法としてウォーミングアップは大切です」

運動前のストレッチは、運動後に比べると痛みの軽減効果は少ないものの、全身の血流を上げることで老廃物が滞留しにくく、怪我予防やパフォーマンス向上など二次的な効果も十分に期待できる。

次のトレーニングまでのサイクルを整え、運動を習慣化するという意味でもウォーミングアップにかける時間もトレーニングの一環として十分に確保するようにしよう。

②呼吸改善による集中力アップとストレス緩和

young mutli ethnic woman practices deep belly breathing, meditation in park
Meeko Media//Getty Images

「ウォーミングアップをしっかりと行うことで呼吸が変わります。胸部や腹部のストレッチは多くの人が見逃しがちなので運動前に十分に行なっておくことでパフォーマンスの向上が期待できるでしょう」

肋間筋や腹斜筋の働きが良くなることで呼吸が大きく深くなることはもちろん、筋の血管が拡張し血流量が増加することで、ヘモグロビンに結合している酸素は離れやすくなり、各組織での酸素消費量も増加する(ボーア効果)。

「運動を長く続けるためには、酸素供給率が鍵となることは言うまでもありません。外気温が低い時こそウォーミングアップに時間をかけて体温を上げるように心がけましょう」

体を大きく動かす動的ストレッチは交感神経を優位にし、ゆっくりと伸ばすような静的ストレッチは副交感神経を優位にする。

ウォーミングアップには前者が向いていると言われるが、両者を組み合わせることで自律神経を整えてトレーニングに集中しやすい状態にできる。

③可動域改善による運動効率UP

back view of a woman doing an exercise on back muscles and posture while sitting on a mat indoors in a yoga studio healthy back concept
Alexandr Dubynin//Getty Images

関節の中には動きをスムーズにする関節液が分泌されている。ウォーミングアップにより関節液を関節全体に行き渡らせることはもちろん体温が上がることで粘度が下がりスムーズな関節の動きを生み出す

「関節可動域が上がることで、トレーニングにおける一回あたりの仕事量(力×距離)が増加します。同じトレーニングで同じ回数でも、重量が異なれば効果が異なるように、可動域が異なることでも効果は変わります」

さらに可動域を改善することで、習慣化していくトレーニングを効率的なだけでなく安全に行い続けることにもつながると林さん。

「関節は筋肉と異なり鍛えることはできません。それどころかトレーニングと共に磨耗していく組織なので、少しでも長く運動を続けるためにも関節への負担を軽減させるウォーミングアップにはしっかりと時間を割くようにしましょう」

④姿勢改善による基礎代謝増大

woman practicing yoga in beach dune
Westend61//Getty Images

前項の呼吸改善や関節可動域の向上は姿勢改善にもつながります。正しい姿勢はトレーニングを正しいフォームで行うために重要なことはもちろん、基礎代謝を向上させることにもつながるので、ダイエット目的でトレーニングを行う人こそウォーミングアップは入念に行いましょう」

ウォーミングアップと言っても方法やタイミングも様々。運動前に行うだけでなく、普段から行うストレッチも広い目で見ればウォーミングアップの一つ。

風呂上がりの体温が高いタイミングで行うストレッチは、関節液の流れもスムーズで、普段からの姿勢改善につながる。

ジムに滞在している時間だけがトレーニングではないと考えておくだけで、基礎代謝を上げて痩せやすい体を作ることができる。

「日常からトレーニングのしやすい体を作る小さな心がけが、ひいては運動前のウォーミングアップの質を向上させてくれるので、結果としてトレーニングの質を向上させることにもつながります。思い通りのトレーニング効果を得ることができれば、美しく基礎代謝の高い痩せやすい体を手に入れることができます」

最低限行っておきたいウォーミングアップ10選

【ウォーミングアップ①】アームスイング

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【ウォーミングアップ⓶】チャイルドポーズ

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【ウォーミングアップ③】フロアスライド

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【ウォーミングアップ④】キャットカウ

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【ウォーミングアップ⑤】インチワーム

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【ウォーミングアップ⑥】ランジサイドリーチ

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【ウォーミングアップ⑦】ランジローテーション

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【ウォーミングアップ⑧】スクワットローテーション

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【ウォーミングアップ⑨】ピジョンストレッチ

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【ウォーミングアップ⑩】クアドラストレッチ

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jm

Headshot of 林健太
林健太
NESTA公認トレーナー SIXPADオフィシャルトレーナー

 幼少期よりプロレスラーに憧れ、中学生の頃からジムに通い始め、高校・大学はアマチュアレスリング部に所属。
 卒業後、一度は就職するもプロレスラーの夢を諦めきれず2011年プロレスリング・ノアに入門。練習中の怪我により
 選手としてデビューすることはできなかったが、トレーニングを続けることで心身のモチベーションを維持し続けたことがきっかけでトレーナーとしての活動を始める。
インスタグラム: www.instagram.com/kenta_0327_/