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グランドスラムの一つである全米オープンを見事制覇した、テニスプレーヤーの大坂なおみ選手。凱旋帰国に沸き立つ日本で行われたのが、トップランカーの選手がひしめく国内最大の女子テニス国際大会である「東レ・パンパシフィック・オープン」。世界の名だたる選手がそろう、この豪華な大会の女子シングルスにエントリーしたのが、スペインのガルビネ・ムグルサ選手。試合間近の彼女を会場でキャッチし、ウィメンズヘルスだけのインタビューに成功。戦国時代とも評される、現在の女子テニス界に身をおく彼女の“今”と“夢”とは? 撮影したてのスペイン版ウィメンズヘルスのビジュアルと共に、ムグルサ選手の魅力に迫る!

その日、ウィンブルドンのセンターコートは異様な熱気に包まれていた。2017年7月15日。新女王、誕生の瞬間だった。何しろ第14シード、23歳(当時)の新鋭、ムグルサ選手が、6回目の優勝を狙う、37歳のヴィーナス・ウィリアムズ選手をストレートで下したのだ。

確かに、ムグルサ選手は波にのっていた。前年2016年のフレンチ・オープンでヴィーナスの妹、セリーナ・ウィリアムズ選手に勝ち、初のグランドスラム(国際テニス連盟が定めた全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン選手権、全米オープンの4つの試合のこと。または4大会全てを制覇することも指す)制覇を達成。しかし相手はベテランにして、テニスクイーンの一人、ヴィーナス選手。

試合は壮絶なハードヒットの応酬となった。スコアだけ見れば、ムグルサ選手の快勝にも思えるが、そのポイントの一つ一つがお互いのパワーとスキル、心理戦……総力を挙げた結果によるものは、誰の目にも明らかだった。

しかし。
その2カ月後9月、ムグルサ選手は東レ・パンパシフィック・オープンの準決勝で、第3シードのキャロライン・ウォズニアッキ選手の前に、膝を折ることになる。わずか59分。意外な試合のなりゆきに、観客は息をのんだ。ウォズニアッキ選手は元世界ランキング1位にして前年度の優勝者。新旧女王対決だったのだ。このときムグルサ選手は「体があまり万全なコンディションではなかった」と、マスコミに対してコメントしている。

そして、それから一年。現在、WTAランキング(女子テニス協会の世界ランキング)14位(取材時)のムグルサ選手。「美しすぎるテニスプレーヤー」とも言われる彼女は、まぶしい笑顔と快活な挨拶とともにインタビュールームに姿を現した。世界1位という“特別な景色”を見て、ツアーで世界中を転戦するトッププレーヤーは、柔和でヘルシーなオーラを漂わせた、チャーミングな24歳(取材時)の一人の女性だった。

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テニスは私たちが思った以上に過酷な競技だ。選手のどの試合にエントリーするかによっても変わるが、国際試合は12月まであり、早い試合は新年1月からスタートする。ほぼ一年中、選手たちは世界を駆け巡っているのだ。冬には寒風吹きすさぶ試合会場から、飛行機で猛暑と厳しい紫外線が降り注ぐ南半球へ。くるくると変わる気候と立ちはだかる強敵たち。その中でベストコンディションをキープし、高いモチベーションを維持し続けるのは、本当に超人的な努力と才能が必要だ。

テニスは不思議な競技でもある。WTAランキングのトップ100に入るだけでも稀有な才能が必要。さらに上位30位、10位以内ともなれば、天才たちがしのぎを削る世界。トッププレーヤーに抗うことなく下位の選手が負けることもあれば、下位の選手が女王を番狂わせの敗戦に追い込むこともある。

ムグルサ選手は爽やかな笑みを浮かべながら、けれど真剣に言う。「テニスは本当に難しいスポーツなんです。他のスポーツであれば、例えば体操などは大きな大会が年に数回。けれどテニスは一年間にたくさんの試合が開催され、毎週違う大会が行われるので、ゲーム後すぐに別の試合地に向かわなければなりません。ですから、時には『これはキツいな、疲れてしまったな』と思うときもあります」

「だけど、もともと私は“競い合う”ということが好きでしたし、年を重ねることで精神的に安定してきた気がします。若いときにはメンタルが好調のときもあれば、低調なときもありましたし。経験を通じて、メンタルコントロールがしっかりできるようになったと感じています」

ファンも多数! 本人が語る、ムグルサ選手の「きれいの秘密」

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穏やかに笑って語るが、国際大会のツアーは苛烈。そんな中でもおしゃれを楽しみ、その女性らしい着こなしや美しさにファンが多いムグルサ選手。話は美の秘訣や生まれにも及び……。

「そう言ってもらえるのは、ラッキーなことにアスリートなので体が強く、身体的や体力的なポテンシャルがあるからかも。また、私はベネズエラ生まれなのですが、女性が美にとてもこだわる国民性なんですね。その影響があるのかもしれません。

ですが、ほんの数年前までニキビもたくさんあったんですよ(笑)。しかもテニス選手なので紫外線をたくさん浴びます。そのケアもしていかなければ、とも感じています。

しかも毎週、違った国で違った食べ物を食べなければなりません。試合のたびに緊張もしますし、ホルモンのバランスが崩れることも多々。健康に気遣うシーンがツアーの中でたくさんありました」。言葉の端々に、ツアーや世界のトップランカーとして奮戦していることの大変さがのぞく。

ムグルサ選手、日本に来るたびに思うことがあると言う。それは、女性の美について。

「女性が肌のお手入れを熱心にされていることを、毎回しみじみ感じます。とても勉強になりますし、私もケアを好きになろうと思っています(笑)」

テニス選手としてのゴール。そして次のキャリアの「描き方」

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世界ランキング1位という“頂点”も経験。しかも、ごくひと握りの選手しか勝ち取れないグランドスラムのタイトルを二つも得た今、ムグルサ選手の目はどこに向うのだろうか。

「いろんな夢をかなえてきました。けれど勝てば、もっともっと勝ちたいと思うのが、テニス選手というもの。だからこの先も、さらにその先の夢や目標を成し遂げていきたいと思っています。

ただ、自分でも理解していますが、テニスというのは若いときに集中して取り組む競技。キャリアはそれほど長くはありません。だから、いろいろなことに興味を持ってテニス人生を続けていきたいと願っています」

最近、話題になるアスリートのセカンドキャリア。ネクストステージについてツアー真っ最中のムグルサ選手に聞くのもはばかれたが、彼女は朗らかに、しかも真摯に答えてくれた。

「この先のビジョンについては、特別に“コレ”と決めたものはないんです、今までずっとテニスをやってきたので。そうですね、でもテニス以外のキャリアや好きなことではファッションやテレビ関係、料理などに興味があります。

いずれは私も引退するわけですが、そのときにはさまざまなことにチャレンジしていきたいと思うし、セカンドキャリアがスタートするときまでに、しっかりと準備しておきたいですね。いいリスタートが切れたら。

たくさんのアスリートたちがキャリアの終わりに、『どうしたらいいんだろう』『何をしたらいいだろう』と迷ってしまったり、空っぽになってしまうことも多々あると思うんです。

私はそうなりたくないし、しっかりと充実したセカンドキャリアを築きたいんです。これから、その準備に向けての段階に入っていくのかな、と考えています」

ムグルサ選手にとってのテニスとは……「幸運をもらしたもの」!

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これまでずっとテニスに邁進してきたムグルサ選手。少々、哲学的な質問だけど「ムグルサ選手にとってのテニスとは?」という問いに宙を見つめ、そして口を開いた。

「テニスは私に、“幸運をもたらしてくれたもの”と言わざるをえませんね。アスリートになり、プロになった今ではテニスが人生そのもの。いろんな国へ遠征し、体を自分でケアして常に良い体調をキープして、人の前で一番好きなこと=テニスを披露する。これは私にとって最高の日々! しかも、それをたくさんの方が見に来てくださる。これは本当に最高に幸せなこと。まさに、幸運を運んできてくれたんです、テニスは」

常に優勝を考え続けている。どんな場所、どんな試合、どんな相手であろうとも

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取材当日は、東レ・パンパシフィック・オープンの女子シングルスの本選が始まる直前。そのときにムグルサ選手が語った言葉は、私たち取材陣に強い印象を残す。

「この大会だからといって、私の目標が変わるわけではありません。どの大会でもチャンピオンになる、ということをいつでも希望に掲げています。そのための努力をしてきたし、才能もある、と思ってここまでやってきました。

毎試合勝てるというわけではないのですが、毎回意気込みは変わりません。“勝てる気持ち”で臨んでいます」

残念ながら、2回戦で苦杯を舐めたムグルサ選手。しかし、彼女の胸と瞳に灯した希望の炎は消えないだろう。再びの栄光の景色を見るために。眼前には誰もいない、女王だけが許される、その場所へ。彼女の飽くなき挑戦と努力は、今日も続いていく。

Photo:EDU GRACÍA