Woman in Sports特別審査委員 スポーツ庁長官 鈴木大地さんインタビュー

15 January 2018

Woman in Sports特別審査委員 スポーツ庁長官 鈴木大地さんインタビュー

2020年の東京オリンピック、パラリンピック開催に向けて、2017年春に第2期スポーツ基本計画を発表、実行に移しているスポーツ庁。「スポーツで人生が変わる」「スポーツで社会を変える」「スポーツで世界とつながる」「スポーツで未来を創る」をテーマに様々な施策を行うスポーツ庁の鈴木大地長官は、Woman in Sportsの趣旨にも賛同し、特別審査委員として応援してくれることに。そこで、鈴木長官にスポーツの力、スポーツを通じた社会貢献についてお話を伺いました。

「トップアスリートも、社会に貢献していく姿勢が必要だと思う」

―――Woman in Sportsはスポーツの力で社会に貢献している女性にスポットライトを当てていくキャンペーンですが、スポーツの力、スポーツが社会に貢献する力を長官ご自身が経験された例はありますか?

「いくつもありますが、古い話だと戦後、日本が東京を中心に焼け野原になって日本人が自信をなくしているときに、古橋廣之進さん、橋爪四郎さんという水泳選手が世界新記録を出して、意気消沈していた日本人全体が〝やってやろう!〟という気持ちになったという話は先輩方からよく聞きました」

「最近だと2011年に東日本大震災があって、日本全体が沈んだときに、なでしこジャパンがその年の6月、7月のワールドカップで日本人の連帯感やチームワークをうまく機能させることで優勝し、日本人のよさを思い出させてくれたと感じました。スポーツの力は目に見えないのですが、スポーツの力を社会でもっともっとご理解いただくためにも、スポーツの力を可視化していきたいと思っています」

―――欧米ではスポーツのチャリティ文化も盛んですが、海外のスポーツチャリティについてはどう思われますか?

「特に欧米のトップアスリートたちは、チャリティも行っていますが、外国に行ったときに現地の孤児院を訪れるなど、自分たちの存在で多くの子供たちを元気づけています。日本でも、トップアスリートは国からの支援を多面的に受けているという面もありますから、強くなって世界の舞台でメダルをとって終わり、ではなく、社会に貢献していく姿勢が必要だと思います」

―――東京マラソンではチャリティランナーのように、一般市民がスポーツを通じたチャリティに参加できる仕組みもできています。

「日本では欧米に比べて寄付文化がまだ浸透していないので、スポーツを通じてチャリティや寄付の文化を根付かせていくのも大切じゃないかと思います」


スポーツは楽しい。それをもっと知ってもらいたい

スポーツは楽しい。それをもっと知ってもらいたい

――2022年までに日本のスポーツ人口を増やすために様々な施策を予定されていると思いますが、海外での取り組みで参考になるものはありますか?

「2000年以降、先進国でオリンピック・パラリンピックを開催したのは、シドニー、バンクーバー、ロンドンなどの都市で、いずれも大会前後で国民のスポーツ実施率が明確に上がった例はないんです。我々は、オリンピック・パラリンピックの開催が国民のスポーツへの関心を高め、実施率を高め、その国を健康にする、活力ある国にするということを世界で初めて示したいと思っています」

「スポーツ実施率を増やすという意味では、部分的な取組としては参考になるものがあります。英国では女性の肥満対策に16億円を投じて〝This Girl Can〟というスポーツ啓発キャンペーンを行ったと聞いています。我が国でも健康やスポーツを管轄する各省庁や関係団体ともっと連携をはかり、施策を実行していきたいと思っています」

http://www.thisgirlcan.co.uk/

「国の予算の中でも医療費の割合が年々大きくなっているので、子供のうちから健康に関する考え方を教え、スポーツやエクササイズをする人を増やすことで医療費を軽減できる可能性があることを多くの人に知ってほしいと思います」

 

―――特にスポーツ実施率が低い20代、30代女性の参加率を上げるために、具体的にはどんなことをお考えですか?

「20代、30代女性のスポーツをしない方のアンケートでは、家事や育児、仕事が忙しいからという意見が目立ちます。まずはそれらを両立しようとしている女性たちに向けて、FUN+WALK PROJECTのように、生活の中にスポーツを取り入れようという機運を醸成していきたいと思っています」

http://funpluswalk.go.jp/

「女性のおしゃれも考慮しつつ歩きやすい靴もありますし、意識次第でファッションと機能性を両立できると思います。これからは、そこにチャンスがあると思います。ファッションメーカーさんもそういう視点で商品開発をしていってほしいですね。スポーツ単体だと限界があるけれど、様々なものと融合しながら、スポーツや運動、エクササイズに興味をもって入ってくる人を増やすことが重要だと思います」

 

――スポーツに対して、苦手意識をもっている人は多いと思います。そういう方にはどんな風に声をかけたいですか?

「私自身もスポーツが全部できるかというとそんなことはないです。私はあえて陸上競技やマラソン大会に出たりしますが、遅いです。遅くても出ていいんです。下手でもやっていい。そういう空気を発信して、楽しむためにスポーツをしているということをアピールしていきたいですね。スポーツの語源は気晴らしとか娯楽とか楽しみというところにあるので、原点に帰ってそういうところでアピールするべきだと思います」

「学校の体育の授業で運動が嫌いになったという人もいるので、学校の保健体育の指導要領も変更して、もっと楽しめる体育の授業になるように改革を進めているところです。赤ちゃんや子供って無意識に走り回りますよね。人間には本能的に身体を動かすという欲求があると思うので、それを大事にして、身体を動かすことが楽しいものなんだということをしっかり伝えたいと思います」

「運動神経は、小学校を卒業するまでにほぼ完成してしまうといわれています。これからは幼稚園児から運動神経を身に着けられるようなことをして、〝スポーツができる子〟を増やしていきたいとも考えています」

「また、幼稚園児のお母さんたちも、朝9時に送って行って13時か14時には迎えに行かなきゃいけないとなると、その間にお母さんが何かするのも難しいですよね。幼稚園が終わってからそのまま引き取ってもらって習い事をしてくれたりすれば、17時頃までお母さんは時間ができるし、お子さんにとってもいいんじゃないかと思います。幼稚園業界とスポーツ業界、習い事業界が協力することで働き方改革にも貢献できると思います」

 

―――長官ご自身の生活の中でスポーツの力を実感することはありますか?

「人生そのものをスポーツと共に歩んでいますが、今は、なかなかスポーツをする時間がありません。そんな中、たまにジムに行ったり、たまに泳いだり走ったりすると、心が前向きになりますね。私が以前研究していたのですが、『スポーツをしている集団』と『何もしていない集団』とで比較すると、スポーツをする集団は自分の身体に興味をもち、油っぽいものや塩分が濃すぎるものに躊躇するなど、食にも興味をもち始めますね。女性ならおしゃれが楽しめるというのもあるかと思います。何より自分に自信をもてるというのが一番大きい」

「私自身は気晴らしやリフレッシュの意味合いのほか、無心で走り続けていると、逆にいろんなことが頭に湧いてきて、仕事上のアイディアが浮かんできたりもします。他にも癒しとか脳を休めるとか、いい効果がありますね」

 

――ウィメンズヘルスの読者のフィットネスが大好きな女性たちへメッセージをお願いします。

「みなさんはすでに、スポーツやエクササイズ、運動の効力は実感されていると思います。自分が得たことを他の人にも教示することが、より自分の幸せや美しさにつながっていくんじゃないかと思います。ぜひ皆さんが感じている喜びや幸せを他の人にも伝えて、みんなできれいに明るく前向きにな世界を作っていってほしいと思います」

「女性がスポーツをすると、いずれパートナーがやったり、お母さんになればお子さんもスポーツをしやすい状態になります。女性の力は絶大です。スポーツを通じた女性の活躍促進もスポーツ庁で取り組んでいます。みなさんと一緒になってこの機運を加速していきたいですね」

 ありがとうございました!

Photo : Kanako Okada

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