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スヌーズボタンを押してしまうのも、ワークアウトをサボってしまうのも、3日でダイエットを諦めてしまうのも「怠け心」 が原因。そんなネガティブな心の声にも負けずエクササイズに励む方法をご紹介。

『The Brave Athlete: Calm The F*ck Down And Rise To The Occasion』の著者でスポーツ心理学者のサイモン・マーシャルは、「人間の脳は何百万年にもわたって進化している。その中で、新しい考え方が古い考え方の邪魔をすることがある」 と説明する。

「脳も最初のうちは、“戦うか逃げるか反応” などの単純な仕組みで人間を生かしておくだけでよかった。その仕事をするのが大脳辺縁系。合理的または論理的に考えることができない部位なので、“チンパンジー” とも呼ばれている。その後、人間が二足歩行を始め、食料を探し回り、住処を確保するようになると、脳では抽象的な言葉で考える能力が発達したそう。それをつかさどるのが、見事なまでに理性的かつ論理的であるため “教授” と呼ばれる前頭皮質。精神的な苦痛が生じるのは、この大脳辺縁系と前頭皮質が戦っているから」

脳の一部はあなたにとって何がいいかを知っているのに、別の部位がそれを阻もうとするなんて、一体どうしてだろう。マーシャルによると、「脳は、身体的危害と精神的危害の両方からあなたを守るように作られている。精神的危害には屈辱、恥、能力不足の3つがあり、どれか一つでも迫りくる危険を感じると、脳はあなたを止めようとする。そのストレス反応の一部として、大脳辺縁系がコルチゾール、グルココルチコイド、カテコールアミンなどのホルモンと神経伝達物質を分泌する。

これは、あなたを生かし、あなたのエゴを守ろうとする体の自然な反応。例えば、“身の危険を感じる” 状況を想像するとコルチゾールが血中に分泌される。これで目の前の困難を乗り切る心構えができると同時に、恐怖、疑念、不安といった感情が増幅する」

レースで最下位になったり、スピンクラスの終盤で息が続かなかったり、トレッドミルから落ちたりしたことがあれば、脳はそれを覚えている。でも、行動を少し変えれば、自らの思考に打ち勝つことは可能。マインドゲームに歯止めをかけて、本来なら絶対到達できるはずの健康目標から遠ざからないようにしよう。

フィットネスイベントから逃げたい時

友達と一緒に10キロマラソンを走ると誓い、それに向けて練習していたのに、レースが近づくにつれ集団イベントが面倒になり、言い訳をして辞退する。

「マラソン大会に出るという考えが浮かんだ時点では、称賛を浴びるなんていいじゃない、と感情になる。一方のポジティブな心の声は、たった3千円で参加できるし、トレーニングする時間もあるし、フィットなグループの一員になるのは楽しいだろうと論理的に判断する」 とマーシャルは分析する。

「でも、本番が迫ってくると、ネガティブな心の声が屈辱を味わうのを心配し始め、レースをやめてエゴを守りたいから、なんとか合理的な理由を見つけてくれと “教授” にせがむ。すると突然、あなたの仕事が忙しくなったり、喉が痛くなったり、睡眠不足に感じたりする。どれも一見もっともらしい理由」

マーシャルいわく、ここで大切なのは、恐怖心が生まれた段階 (タフなトレーニングを終えた後など) でそれを認識し、論理的に対処すること。

限界を超えて自分の体に挑む覚悟が本当にあるのか? 最下位になったり、けがをしたりする確率は実際どのくらいあるのか? そう考えると、たいてい自分の悩みが不合理なものであることに気が付く。こんな時は、自分がコントロールできること、つまり努力と態度の改善に集中してみよう。

「スタート地点でピストルが鳴ったら最後、どんなに身体能力が高くて準備万端な人でも流れに身を任せるしかない。天候、コース状態、レース結果にも自分のコントロールは及ばない」 とマーシャルは語る。「でも、“全力を尽くした” と感じながらレースを終えられたなら、それは立派な成功」

ジムに行きたくない時

今週は月曜日からクラスを予約して、ジムバッグも用意した。せっかく順調だったのに、午後も半ばに差し掛かると 「行かなくていいよ」 と自分に言い聞かせている。

朝起きた瞬間に、前帯状皮質と呼ばれる自制心をつかさどる脳の部位が働き出す。ネガティブな心の声がスヌーズボタンを何度も押したり、トーストにチョコレートクリームを塗りたくったりするのを阻み、朝から大活躍するのだが、夕方には力が尽きる。

マーシャルの話では、「前帯状皮質の力は徐々に低下するので、時間の経過とともに誘惑に抵抗できなくなってくる。だから朝10時の時点では楽しそうに思えたことが、夕方5時になると全然やりたくなくなる」

朝起きたら、脳が 「やらなくていい」 と説き伏せてくる前にエクササイズを済ませること。でも、マーシャルの話では、頑張って習慣にするのも大事。

「きっかけ、ルーチン行動、報酬の3つが脳内でつながると習慣が生まれる。まず、きっかけがないとスタートが切れないので、目覚まし時計を遠くに置いて、ベッドから出ないとスヌーズボタンが押せない状況を作るなどしてみよう。ルーチン行動は出来るだけスムーズに行えるように、15分のサーキットトレーニングをすると決めてからジムに向かったり、自宅のリビングでやるワークアウトの内容を事前に準備したりするといい。最後は自分に報酬を与える。僕の場合はエスプレッソ。ワークアウトをしなければ飲めないと分かっているのでサボれない」。でも、報酬は常識の範囲内で。ドーナツ12個入りの箱を買うのは、NG。

食生活が乱れた時

食生活を改めようと決意して、冷蔵庫がいっぱいになるまで自然食品を買い込む。でも、自炊は大変だから、結局テイクアウト。

マーシャルに言わせれば、これは 「習慣が確立していない典型的な例。ゴールはあっても、ルーチン行動と報酬が決まっていない」。つまり、自分の自炊力や決意を疑い始めた時に抵抗できないということ。

解決する上で大事なのは習慣化。まず、現実的に達成可能なゴールを設定すること。もうサラダしか食べないと友達に誓うのではなく、週2日はヘルシーな自家製ランチを作り、少しずつ進歩を重ねる。次に、具体的な計画を立てること。日曜日に一週間分のメニューをじっくり考え、必要な材料だけを買いに行く。

「この場合のきっかけは、日曜日を一週間分の食事の準備に使うこと。ルーチン行動は、グリルチキンのサラダをたっぷり作り置きすること。報酬は、すべてを実行に移して予定通り美味しい料理を食べること」。これが節約につながるのは嬉しい。

ジムのクラスになかなか参加できない時

みんながベタ褒めしている新しいクラスに参加してみたい。でも、汗だくのセルフィー、クロップトップ、集団意識丸出しのハイファイブを見ると、自分に合っているとは思えない。

マーシャルによると、「脳はあなたの社会的地位を見極めようとするものなので、ネガティブな心の声が脅威を特定しようと目の前の状況をスキャンする。これは確証バイアスと呼ばれるもので、クラスの前に立っている腹筋が硬そうな3人の女性は目に入るのに、その後ろで息を切らしている5人は目に入らない。これは、脳が後ろの5人を脅威と感じていないから」

まず、誰にでも怖気づくことはあるし、自分よりフィットで強い人は必ずいることを理解しておこう。大事なのは、このような感情を邪魔者扱いするのではなく、モチベーションを高めるために利用すること。

マーシャルいわく、「成功した女性によくあるインポスター症候群 (詐欺師症候群) は、モチベーションが非常に高く、何事にも真剣に取り組むのに、自分は評価に値する人間だと思うことができず、褒められると罪悪感を覚える心理状態。でも、この謙虚さを生かして、どんどんスキルを身に付ければいい」。

例えば、無知だと思われるのを恐れてマシンを避けるのではなく、むしろ誰かに使い方を聞いてみる。「ネガティブな心の声は、質問なんてしようものならバカにされると考えるかもしれない。でも、聞かれたほうにしてみれば、自分の知識を披露するチャンス。周りの人は、あなたの評価なんてしていない。自分に満足するのに忙しいから」。人生と同じように、エクササイズでも奇跡が起きるのはコンフォートゾーンから抜け出したとき。

嫌われたくないから周りに合わせてしまう時

あなたの新しい習慣をみんなが理解してくれるとは限らない。彼氏は朝6時に目覚ましが鳴るのを嫌がるし、ディナーにチーズたっぷりのナチョスを食べる友達の隣でサーモンを食べれば、つまらない人だと言われる。“私にも色んな側面があるけれど、つまらない人ではない” ことを証明するべく、これでもかと言わんばかりにチーズをかけ、みんなと一緒に夜更かししてジムを逃す。

マーシャルによると、「人には、拒絶されて批判されるより、受け入れられて褒められたいという基本的なニーズがあるため、仲間からの圧力に弱い人がほとんど」

でも、社会環境にも原因がある。「何年にもわたる社会心理学の研究で、一般的に人間は調和に向けて努力する生き物であることが分かった。人と違うことをすると、おかしいと批判されたり、間違っていると判断されたり、関わりたくないと拒絶されたりすることがあるので、人と同じことをする」。でも、仲間からの圧力に抵抗できるかどうかは、あなたの性格とムード、その時の状況にも左右される。

毛嫌いされても落ち込まないで。あなたを悪く言いそうな人とは、せめて意欲が削がれそうな時だけでも付き合うのをやめること。意志が最も強いのは朝なので、友達と合うのはディナーではなくブランチがおすすめ。

そして、時間の経過とともに決意が揺らいできたら、あなたと似たようなゴールを持つ人に会う時間をつくる。もう一度言うけれど、あなたの弱い心は人と同じことがしたいだけ。それでチップスを食べることになるのか、スクワットをあと10回することになるのかは気にしない。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。



Text: Laura PotterTranslation: Ai Igamoto Photo: Getty Images

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Nana Fukasawa
ウィメンズヘルス・エディター

2018年に「ウィメンズへルス」編集部にジョイン。アシスタントを経て、エディターとして美容、フード、ダイエットなどの記事を担当。流行りそうなヘルシーキーワードをいち早くキャッチすることを心がけている。CBDや筋膜リリース、アーユルヴェーダ、植物療法を学ぶ、自他共に認める“セルフケア マニア”。2023年初めてのハーフマラソンに挑戦。