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「ヨガとピラティスは、体を “ムキムキ” にすることはないけどランナーのための筋トレに入るの?」 そんな質問に米国ファーマン大学ランニング・科学的トレーニング研究所 (FIRST) のトレーニングパフォーマンスディレクター、スコット・ムルが答えてくれた。

筋肉に試練を与え、負担をかけるエクササイズはすべて筋肉を強くするのに役立つ (筋肉を “大きくする” とは言っていないのがポイント)。筋トレは誰にとっても大事だし、自分はフィットなランナーというよりはむしろランニングをするフィットな人でありたい。

筋肉を強化するためにできることは無限にある。フリーウエイト、マシン、自重を使った耐久トレーニング、メディシンボールなどはすべて、筋肉に試練とストレスを与え、負荷をかけるための手段。

筋力を高める一番のコツは、筋肉に負荷をかけることだと思っている。例えば、4週間にわたって毎日1日10回プッシュアップをしたら、4週間後の自分にはプッシュアップが何回できる? 答えは10回。

人間の体には驚くべき順応力がある。同じ困難を経験し続ければ体はいずれ順応するので、進歩し続けるためには、難易度を上げたり内容を変えたりすることが大切。

ヨガもピラティス、体幹トレーニングも有益で、バランスの取れたフィットな人間になるためには重要なアプローチだと思う。ヨガとピラティスでは体の柔軟性、バランス、体幹の強さが試されるけれど、このどれもがランナーにだって役立つこと。

なぜランナーにとって筋トレが大切なのかって? 疲れてくると、フォームが乱れる (走りに無駄が出る)。これは脚が疲れているからだけでなく、腕、背中、腹部がそれぞれに疲れているから。胴体が強ければ、ワークアウトやレースの後半でもフォームがしっかり維持できる。

筋トレは、数々のメリットをランナーに与えてくれる。例えば:

●加齢とともに、徐々に自然と体力や骨塩量が減るのを防ぐ。

●対立筋における筋肉の不均衡を取り除く。

●走りの無駄を減らす (ランニングパフォーマンスを決める主要因子の一つ)。

走りの無駄が減ると酸素消費量も減り、同じ距離をより速く走ることができる。

走りの無駄が減ると、極度の疲労を感じるまでの時間が長くなる。

●ワークアウトやレースの間中、高い筋機能を維持するのに欠かせない神経筋が適応するため、ランニングパフォーマンスが向上する。10週間の筋トレ後、10kmのタイムが平均1分強縮んだことを示す研究結果もある。

●足が地面に付いた時に素早く力が出るようになるので、地面との接触時間が減り、結果として走る速度が上がる。

ランナーにとって、筋トレの目的は必ずしも筋肉量を増やすことではなく、以下のような理由も考えられる。

1. 筋力を高めるため

2. 局部的な筋持久力を高めるため

3. 現在の筋肉量を維持するため

4. ケガを防ぐための “プリハブ (先制的治療)” として

5. ケガをした後のリハビリとして

本当に知るべきなのは、ヨガやピラティスがこれらの目的を達成するのに役立つかどうか。そして、その答えは “場合によりけり”。つまり、あなたが現在行っているヨガやピラティスが進行的なものであるかどうかによって変わってくる。それが徐々に、そして次第に筋力への負荷を増やすものなら、そのまま続ければいい。でも、現在の内容が進行性に欠けているなら、アプローチを変えてもいい。

例えば、ヨガまたはピラティスはいつも通りこなして、より典型的な筋トレプログラムを別の日に行ってみる。この組み合わせとワークアウトの幅だけで、筋肉が変わってくるかもしれない。

※この記事の筆者であるスコット・ムルは『Runner's World: RUN LESS, RUN FASTER』の共著者で、米国ファーマン大学ランニング・科学的トレーニング研究所 (FIRST) のトレーニングパフォーマンスディレクター。同大学の健康・運動科学部の一員でもあるスコットは、アイアンマン・トライアスロンレースを11回完走している。

※この記事は当初、アメリカ版ウィメンズヘルスに掲載されました。

※この記事は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text: Scott Murr Translation: Ai Igamoto Photo:Getty Images