高尾山は登山道の整備をされた、比較的安全な山。だけど、登山デビューのときは山の経験者と一緒に登るのがおすすめと片井先生は言う。
「初心者だと歩くスピードがハイペースになったり、逆に休憩は座り込んで長くなりがちです。登山は、特に飛ばしがちな出だしはスピードを抑えめに、歩き方は歩幅を小さめになど、普通に歩く場合と少し異なります。
例えば、山で人にすれ違うときの立ち位置や優先順位、装備、ゴミは持ち帰るなど、“山の常識やマナー”があります。経験者と一緒に、そうした登山のポイントを体感しながら歩くといいでしょう。
また、靴を買うときは必ず登山用の厚手靴下を履いてサイズを合わせたり、腰が痛くならないリュックの背負い方や、ベルトやアジャスターの合わせ方などのアドバイスなどをもらうのもよいですね。
低山であっても、事故や遭難の危険性はあるので、山へ行くときには必ず『登山計画書』(*)を提出する習慣をつけましょう。登山をするときには家族や友人や職場の人など、万が一戻って来なかった場合の異常に気づいてくれる人に『どの山に何時に登って、何時に下りてくる』などの情報を伝えておくことも必要です。登山計画書のコピーを渡しておくのがベストですね」
*公益社団法人日本登山・スポーツクライミング協会による「登山計画書」の様式例
https://www.jma-sangaku.or.jp/sangaku/?ca=4
■お話を伺ったのは……
片井みゆき(かたい・ゆみき)先生
東京女子医科大学本院 総合診療科・女性科(女性内科) 准教授。信州大学医学部、同大学院医学博士課程修了後、同大医学部附属病院内分泌科へ。その後、ハーバード大学医学部フェローなどを経て、東京女子医科大学にて性差医療の現場で治診療を行う。内分泌代謝専門医、甲状腺専門医、女性ヘルスケア専門医として女性特有の疾患などに詳しい。また、北アルプスが近くにあった大学時代から登山を始め、山岳診療や救助に携わる山岳医の資格も持っている。